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コメディー作品は好きなんですけど、演じるのはコメディーが一番難しいです。自分が面白いと思っても、それを狙ってやるとよくなかったりもします。あくまでも本人たちが一生懸命やっていることが逆におかしいし、滑稽に見えると思います。今回は王道なコメディーではなく、ちょっとひねっていますが、まどかとしては、真剣に京都への愛を貫き通そうとする姿が逆に狂気的だったり、面白く見えたらといいなと思って撮影していました。
撮影に入るまではすごく苦戦しました。後半にかけて、まどかが畳みかけるような行動を起こす原動力がどこから湧いてくるのかについて、自分の中で「これだ」という答えが見つからなくて、ずっと考え続けていました。でも、撮影に入ってから、冨永監督とそれぞれの頭の中にあるまどか像をすり合わせていった結果生まれた、台本にはない行動や言動がどんどん付け足されて膨らんでいきました。それで自然と、まどかだったらここでこういうことをするかもということが出てくるようになりました。
演じた分、一番の理解者でありたいという気持ちはあるんですけど、一歩引いて見ると「何でそれ言っちゃうの」とか、「何で取材内緒にしちゃうの」とか、ハラハラするところはたくさんありました。
撮影に入る前に読み合わせで、最初は若葉くんが演じた中村先生も普通のしゃべり方をしていたんですけど、読み合わせが一通り終わった後で監督から「語尾を全部伸ばすようにしてみましょうか」というアイデアが出て、それからしゃべり方も癖があるキャラクターになっていきました。監督が、その場で、若葉くんの表情や感じを見て、こうした方がもっと面白いんじゃないかと直感で思いついたと後から聞きました。ラストシーンで、まどかが塀に付いている小さな鳥居を外して持って帰ってしまうのも台本にはありませんでした。あれも撮影していたその場で「その鳥居持って帰りましょう」ということになって。順撮りだったので、それが最後のシーンにつながりました。だから、毎日「今日はどんな演出が飛び出してくるんだろう。それに追いつきたい」と思って、自分の頭の中でいろいろと想像してから現場に行ったんですけど、自分の引き出しにはない、斜め上からの発想とかアイデアがどんどん監督から飛び出すので、それがすごく刺激的でしたし、ライブ感がありました。
終わり方もちょっとお客さまを突き放すような終わり方で、この後どうなっていくのだろうというような、ちょっと言葉にできない、もやっとした不安感が残るような結末になっています。私は個人的にはこういう分かりやすくない終わり方がすごく好きなので、見てくださった方が「あれは何だったんだろう」と思い返したり、クスッと面白がってくれたらうれしいです。偏見を描いているわけではなくて、偏見だったということに気付く映画になっているし、らしさを無意識に押し付けてしまう危うさも描いていると思うので、皆さんにとって今までにない目線で京都を楽しんでもらえる映画になったらうれしいです。
「ぶぶ漬けどうどす」という言葉は本当に京都で使われているのか、洛中洛外のわだかまりはあるのかとか、いまさら聞けない疑問を、この映画の中でまどかが突っ込んで聞いているので、それを楽しんでいただけたらうれしいですし、京都や日本のコミュニケーションの個性を、日本国内はもちろん、海外の方にももっと知っていただけるきっかけになったらいいと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会
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