内野聖陽「演技にとって大事なことを思い出させてくれた」シェイクスピアの「リア王」に挑む謎めいた主人公を熱演「連続ドラマW ゴールドサンセット」【インタビュー】

2025年2月21日 / 11:00

 2月23日(日・祝)からWOWOWで放送・配信スタートする「連続ドラマW ゴールドサンセット」(全6話)は、白尾悠氏の同名小説を原作に、つらい過去や苦悩を抱えながら市民劇団に参加するシニア世代の再生を描いたヒューマンドラマだ。主演は、徹底した役作りでジャンルを問わずあらゆる役をものにしてきた名優・内野聖陽。本作でも、市民劇団でシェイクスピアの名作「リア王」に挑む謎めいた男・阿久津勇を見事に演じ切っている。その撮影の舞台裏や作品を通じて感じた演劇への思いを聞いた。

内野聖陽【スタイリスト:中川原寛(CaNN)、ヘアメイク:佐藤裕子】(C)エンタメOVO

-主人公の阿久津は、過去に秘密を抱え、「リア王」を演じるために、そのせりふを語り続ける風変わりな人物ですが、オファーを受けた時のお気持ちをお聞かせください。

 最初に原作を読ませていただいたとき、「これは(演じるのが)難しいな」と思ったんです。でも、2度目に読んだら、「なんて素晴らしい小説だ!」と、思わず拍手してしまいました。ただ、「当時55歳の僕にこの老人ができるのか?」という葛藤があり、自分の中でいつまでもゴーサインが出せませんでした。一口に「リア王を演じる」と言っても、プロの俳優ではなく、かつて挫折した演劇青年が、人生を賭けてたった一夜の公演に全生命力をかけるわけですから。その点、非常にハードルが高いなと。

-出演の決め手は、なんだったのでしょうか。

 大森(寿美男)監督とのメールのやり取りを経て大森さんの思いが伝わってきました。最終的な決め手になったのは、「実際に老いている人ではなく、心が死にかかっている人を演じてほしい」という一言です。おかげで、自分の中で「やれるかな」という気持ちになりました。あのメールには、非常に勇気づけられました。

-阿久津の役作りはどのように?

 阿久津は過去のある出来事が原因で、「自分は生きていてはいけない人間だ」と自分を責め、自分の人生を否定し、リア王を演じることでしか現実と関われなくなった人物です。その追い込み方が一番大変でした。シニカルでペシミスティックな部分を大事にしたかったので、心の状態を常に考えていました。おかげで、普段、僕は共演者の皆さんと気軽におしゃべりをする方なのですが、今回に限っては、現場では皆さんと距離をとるようにしていました。

-阿久津が「リア王」を演じる市民劇団「トーラスシアター」には、さまざまな人生経験を持つシニアの方が所属し、人生を再チャレンジする姿が描かれていきます。シニアの再チャレンジについては、どのようにお考えでしょうか。

 そういう場があるのはすてきなことだと思います。“人生90年”と言われるこの時代、自分のやりたいことをして、実生活を充実させていくって大事なことですよね。今は趣味でコーラスをやったり、朗読をしたり、自己実現を大事にされるシニアも増えてきました。その中で、演劇というものも、もっと見直されてもいいのかなと。

(C)白尾悠/小学館 (C)2025 WOWOW INC.

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

ハリウッド・リメイク決定!インド発ノンストップ・アクション!「日本の皆さんにも楽しんでいただけるはず」ニキル・ナゲシュ・バート監督『KILL 超覚醒』【インタビュー】

映画2025年11月13日

 40人の武装強盗団が、ニューデリー行きの特急寝台列車を襲撃! 刀を手に乗客から金品を奪う強盗団のリーダー、ファニ(ラガヴ・ジュヤル)は、大富豪タークルとその娘トゥリカ(ターニャ・マニクタラ)を人質に取り、身代金奪取をもくろむ。だがその列車 … 続きを読む

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

目黒蓮が抱いた“継承への思い” 妻夫木聡、佐藤浩市から受け取った“優しさ”と俳優としての“居住い” 日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」【インタビュー】

ドラマ2025年11月9日

 日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」への出演発表時、“物語の鍵を握る重要な役どころ”という情報のみだった目黒蓮演じる謎の人物。そこから約2カ月、11月2日放送の第4話でようやくその正体の一端が解禁された。男の名は中条耕一、佐藤浩市演じる山王 … 続きを読む

堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

映画2025年11月6日

 三宅唱監督が脚本も手掛け、つげ義春の短編漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を原作に撮り上げた『旅と日々』が11月7日(金)から全国公開される。創作に行き詰まった脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先での出会いをきっかけに人生と向き … 続きを読む

Willfriends

page top