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小泉 俳優さんが難しいのは笑顔ですかね。彼はそれが自然で素晴らしい。それを毎日見られるのは楽しみでした。美しい笑顔は芝居ではなかなか作れない。これは天性のものです。でも芝居は芝居。きちんとその役をつかんで、その人物を実在感をもって立ち上げることが俳優さんの力量です。それは歴史に対する想像力にもつながります。その時代に生きた人をきちんと捉え、現在に生かすことが大事ですから。
松坂 今回初めて経験したんですけど、寄りの演技であればあるほどカメラが遠くなっていきました。そうすることによって役者はカメラの存在が気にならなくなり、より自然なお芝居に近づけるというお話を聞いた時に、なるほどと思いました。自分が今まで経験した現場だと、寄りの演技であればあるほどカメラは人物に寄るのですが、小泉組は逆なんです。すごく新鮮でした。
小泉 僕なんかそれほどでもない。黒澤(明)さんだったらセットをブチ抜き、ステージの隅までカメラを持っていきますから。
小泉 それを意識はしていませんでしたが、僕が映画界に入ったきっかけは『赤ひげ』でしたから、どこかに身についてしまっているというか、頭で考えなくても体の中に染みついているものがあるから、脚本を書く中で自然に出てきたのかもしれません。
小泉 自分の中では時代劇、現代劇という区別はありません。時代劇、要するに歴史といっても人間の営みは現代と全く同じです。その時代に生きている人たちが今の自分たちにつながる。司馬遼太郎さんは「ビビッと電流が通う」みたいな言い方をしていました。それがなければ、過去の時代の歴史は生きてこないわけです。歴史とは自己のことだと考えれば、時代劇も自分の発想で自由にやれるところがあります。それと、この笠原良策もそうですが、時代劇はなかなか現代では出会えないようないろいろな人物と出会える。そういう点では非常に魅力的です。それを今の人に伝えて、感じてもらうことが大切ですし、歴史が現在生きるわれわれの想像力を刺激するという楽しさもある。また、時代劇の中では、日本人の持っている美しさというか、姿の美しさを表現することもできますしね。
松坂 台本を読んだ時に、現代にも通じるものがあるから共感できたし、演じながら疫病のような未知のものに対しての恐怖や不安は今も昔も変わらないと思いました。だから時代劇ということで距離を置いてしまうと、歴史の1ページを見るぐらいの感覚になってしまうけれど、現代劇と何ら変わらないものとして捉えてもらえると、時代劇をとても身近に感じることができるので、早く皆さんにこの作品を届けたいという思いがあります。
小泉 『雨あがる』(00)の時、黒澤さんは「見終わって、晴々とした気持ちになるような作品にすること」と言いました。今回も、爽やかな気持ちになって劇場を後にしてもらえたらうれしいです。小津(安二郎)さんは「映画は後味が勝負だ」と言っていました。作り手としては、それを目指したい。映画は映像と言葉の調和の美しさ。要するに全部が見どころなんです。映画全体から感じ取ってもらうことが大事なのだと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)
(C)2025映画「雪の花」製作委員会
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