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佑くんが道長で本当によかったです。内に秘めた“三郎”としての弱さと、周囲が恐れる権力者としての強さを装った“道長”を巧みに演じ分け、人間の生々しさを表現するお芝居を1年半も間近で目にすることができたのは、すごくぜいたくな体験でした。佑くんとは、話し合いながらお芝居を作っていきましたが、特に印象に残っているのが、初めて2人が廃邸で密会するシーン(第五回「告白」)です。まひろの母を殺した犯人が、道長の兄・道兼(玉置玲央)だと打ち明けるのですが、長回しの上、細かな感情の揺れ動きもあったので、せりふごとに動きを話し合いながらお芝居を作っていったことをよく覚えています。
佑くんが剃髪するシーンの撮影は、自分の撮影が終わった後、セットに残って見届けました。2年間伸ばしてきた髪をそり落とすということで、気持ちも入っていたはずなので、その瞬間を見届けなければと思って。終わった後、佑くんは「言葉にならない感情が込み上げてきた」と言っていましたが、自分も共に戦ってきたような感覚になりました。
倫子は、まひろにとって初めての女友だちで、身分差を気にせず自分を屋敷に招いてくれた恩人でもあります。倫子がいなければ、まひろは内裏で働くことはできなかったでしょうし。そう考えると、すべては倫子の存在があればこそなんですよね。そういう人と同じ男性を好きになってしまったことに対して、まひろの中には苦しさや後ろめたさもあったと思います。同時に、倫子から嫌われることを恐れてもいたのかなと。

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まひろも「気付かないわけがない」と思いながらも、打ち明ける機会もないままここまで来てしまった、というところだったのではないでしょうか。とはいえ、直球で質問されたときは、さすがに「ギクッ!え、今ですか!?」と驚いたでしょうね(笑)。その上で、まひろがどう答えたのか…。それはぜひ、最終回を楽しみにしていてください。
まるで、紫式部本人の実体験を書いたのでは…と思うくらいで、「源氏物語」に出てくる場所に自ら旅したという描写が、皆さんの想像を膨らませることにつながるのでは、と思いました。「源氏物語」の最後の「宇治十帖」と呼ばれるパートも、本当に紫式部が書いたのか明らかでない中、この作品ではまひろが書いたことにするあたりにも、大石さんの思い切りのよさを感じて。そういう意味では、大石さんの脚本には毎回圧倒されましたし、物語を旅するように、ワクワクしながら読んでいました。同時に、史実と創作のバランスを取りながら、一つずつ階段を上っていくような大石さんの生みの苦しみも感じ、そのイメージに自分がどれだけ近づけられるのか、毎回、考えながら読んでいました。
撮影が終わり、書の練習やセリフを覚えなければいけないという“宿題”から解放され、ほっとした気持ちはありながらも、向き合うものがない寂しさも感じています。翌週の撮影に向けて週末に準備する日々が1年半も続いていましたから。ただ、まだ放送が続いているので気を抜かず、無事に最終回の放送まで走り抜けられることを願っています。
(取材・文/井上健一)

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