「一つの作品における主役かどうかは、スポットが当たる瞬間の頻度の違いだけ」前原滉『ありきたりな言葉じゃなくて』【インタビュー】

2024年12月19日 / 08:00

 ワイドショーの構成作家として働く32歳の藤田拓也は、ある日、先輩の有名脚本家の推薦により、念願の脚本家デビューを果たすことに。浮かれた気分でいる拓也の前に、一人の女性が現れる。報道情報番組やバラエティー番組を制作してきたテレビ朝日映像が初めて手がけた長編オリジナル映画『ありきたりな言葉じゃなくて』が、12月20日から全国公開される。本作で主人公の新人脚本家の拓也を演じた前原滉に話を聞いた。

前原滉 (C)エンタメOVO

-前原さんといえば眼鏡がトレードマークみたいなところがありますが、重要な小道具として意識していますか。

 私生活でずっと眼鏡をかけて生活をしていたので、この仕事を始めるとなった時に、初めて眼鏡で印象が変わるということを考えました。でも、何種類も眼鏡を持っているみたいなこだわりはありません。眼鏡は役によって変えることもあれば、あとは監督の指示にもよりますが、何となくの雰囲気で決まっていくことが多い気がします。ただ、やっぱり皆さんが僕には眼鏡のイメージがあるみたいで、衣装合わせの時など「でも前原くんは眼鏡だしな」とかよく言われます。

-演じた藤田拓也という役の印象はいかがでしたか。

 誰もが「特別な者になりたい」という思いをどこかで持っていると思うんです。その意味では、拓也の、特別な者になりたいけどなり切れない、どこかから持ってきた言葉を使ってしまうところは、結構自分と近いと思いました。

-自分と近いと感じた分、取り組みやすかったですか。

 取り組みやすい部分とそうではない部分がありました。家庭環境など、細かいところでの自分との違いがたくさんありましたから。ただ、演じる人物が自分と遠い時の方が、役に寄せていくことができるのでやりやすい気もします。近いとどうしても自分の方に引き寄せてしまうんです。その方が楽なので。

-拓也は割と不用意にものを言ってしまって窮地に陥るところがあります。

 そうです、不用意です。でもそれは僕にもあるんです。何か今の話言わなきゃよかったみたいなことって。そういう意味でも、その時の感覚でしゃべってしまうところが、僕と似ていると思います。

-拓也は自分本位で未熟なところがあって、調子にも乗りやすいタイプです。反発はなかったですか。

 僕の場合は、何かいい仕事が決まったからといって、自分の中で喜ぶことはあっても、拓也のように人に話すことはしません。誰かに「聞いてください」と言えないというか、何かちょっと恥ずかしくなってしまうんです。だから、拓也ほどピュアではないのかもしれません。その役を演じるとなった時に、この人のことは理解できないと思うと演じられないので、彼は真っすぐなんだとか、言い方を変えることで、受け入れる体制を自分で作るところはあります。でも、「これってこうだよな」という目線は、どこかで持てるようにしています。何か許せないことがあったとして、ではその許せないことはなぜ起きたのかとか、許せないことをした人の気持ちまで考えるよう、演じるときは意識するようにしています。

-普段は俳優として脚本を読む側ですが、今回は書く側を演じてみてどんな感じでしたか。

 俳優の仕事は、どちらかというと1という数字を何かにしていく、1から100の間の仕事だと思います。ある素材をどう調理していくというか、どういうふうに仕上げていくかで、1から100を担っているのが、俳優や、録音、照明、撮影といった仕事だと思います。それに比べて、脚本を書くのは0をどういう位置に持ってくかの作業だと思います。例えば、僕が「こういう台本があります。どう演じますか」と言われた時に、誰もが見たことがあるようなありきたりな表現になりがちです。ではどうやってそうではないものにしていくかと考えても、もうこれだけ多くの作品があってやり尽くされていたら、絶対にどこかで見たことがあるものになるだろうなという悩みを持つわけです。今回は、「では脚本家だったらどういうふうに悩むのだろう」と考えて変換して演じたところがあります。だから、脚本家と俳優は違うけど、それこそ拓也という役を通して見た時に、持っている悩みは似ているのかもしれないと思いました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

小瀧望「ファンの皆さまの声に応え続けたい」 舞台「ロックンロール」では「僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月30日

 小瀧望が主演する舞台「ロックンロール」が、11月6日から上演される。本作は、世界的な劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロバキアを舞台に、20年以上にわたる歴史のうねりを描きながら、自由の尊さをうたう物語。愛するロックンロールと母親を守 … 続きを読む

佐津川愛美「酒井監督に惚れました(笑)」念願だった酒井麻衣監督との初タッグ『時給三〇〇円の死神』【インタビュー】

映画2026年9月30日

 10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#受験競争だけではない韓国の教育問題、「鉄槌教師」が問う教師の役割

2026年9月29日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

鈴鹿央士「絶対に映画館で見て損はさせない映画になっています」『藁にもすがる獣たち』【インタビュー】

映画2026年9月29日

 出会うはずのなかった登場人物たちが、1億円をきっかけに複雑に絡み合いながら“金の獣”と化していく数奇な運命を描いた、曽根圭介の同名小説を城定秀夫監督が実写映画化した『藁にもすがる獣たち』が全国公開中。本作で、主人公のチャンネル登録者数“2 … 続きを読む

向井理、演出家・倉持裕と再びタッグ 6人で描き出す会話劇に「戻ってきたな。こういうことがやりたかった」 M&Oplaysプロデュース「ブランク」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月29日

 向井理が主演するM&Oplaysプロデュース「ブランク」が、10月3日から開幕する。本作は、2023年に本多劇場で上演した「リムジン」に続き、向井と倉持裕が再びタッグを組んで贈る新作公演。ある弁護士事務所を舞台に、そこで繰り広げら … 続きを読む

page top