「これは江戸時代のアイヌの話ではなく、今に通じる話だということです」寛一郎、緒形直人『シサム』【インタビュー】

2024年9月12日 / 15:50

-2世俳優の先輩である緒形さんから見た寛一郎さんの印象は。

緒形 まあ彼は3代目ですけど、とても芝居に対して真摯(しんし)だし、目線がいいし、彼独特の雰囲気というか、オーラがあります。もともと生まれ持った華が備わっているので、この先楽しみだなと思います。華が備わっている人と備わっていない人がいる中で、彼は大きく備わっていると思います。

寛一郎 もちろん緒形拳さんのことは知っていますし、緒形(直人)さんとは、おやじ(佐藤浩市)のことも(祖父の)三國(連太郎)さんのことも話しましたし、ついこの間、息子さんの緒形敦さんともご一緒しました。何かもう一つの文化というか、伝統芸能ではないところでみんなが能動的に役者をやっているのは不思議な感覚になりますね。

-最後の森の中での戦いで矢が飛び交うところが印象的でしたが、あれはどうやって撮影したのでしょうか。

寛一郎 あの矢は全部CGです。矢が飛び交っているふりをしている(笑)。でもそれは撮影のリアルですから。想像してやるのが僕らの仕事でもありますから。

緒形 あそこはエンターテインメントを盛り込んだというか、監督が「あそこぐらいはちょっと派手にやりたいな」と。そこは映画としてよかったんじゃないかと思います。

-今回アイヌに触れてみて改めて感じたことを。

緒形 一番大きいのは、彼らの思想的、宗教的なところです。自然と人との共存の仕方、人の受け入れ方というのは、僕らが学ばなければいけないと思いました。彼らは争うことは極力しなかったし、多様な文化を持ち、自分たちの必要なものしか取らないし、搾取もしない。みんながそうであれば、もしかしたら幸せになれるかもしれない、そういう彼らの精神性みたいなものを僕らは知った方がいいと思いました。厳しく豊かな自然の大地の中で、彼らはそういう生き方を見つけ出して、周りにあるもの全てを神とあがめたり、自然に対する畏敬や畏怖みたいなものも彼らには備わっていて、誇らしい人たちだなと思います。彼らの生き方や、日本の先住民である北海道にいたアイヌの人たちがこういう暮らしをしていたということも、今多くの日本人が知るべきではないかと思います。

-この映画の意義は。

寛一郎 文化を未来に残していくという意義があると思います。アイヌという文化がだんだんと消えつつあり、アイヌという存在自体を知らない人たちもいる中で、この映画を入り口として、アイヌのことを知ってもらうきっかけになれればいいと思います。今もまだこういった問題は世界中で起きています。未来に対して解決の方法を模索していかなければならない。そのための何かを知るきっかけになる映画になってくれればいいと思います。

-最後に観客に向けて一言お願いします。

緒形 見ていただいてどんなことを感じていただくかというのは、こちらも楽しみにしているところです。日本にこういう先住民族がいたんだというところと、この人たちの思想や行動をどのように受け取るか。それは人それぞれです。でも、アイヌ文化がきっちりと根付いていたというところも見てほしいし、映画全体を見て、それぞれの意見で、きちんと判断してほしいと思っています。

寛一郎 こういう人たちがこの地にいたということを知るきっかけになる映画であってほしいということと、これは江戸時代のアイヌの話ではなく、今に通じる話だと思っています。

(取材・文・写真/田中雄二)

 

(C)映画「シサム」製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】角川映画50th ANNIVERSARY「角川映画祭」

映画2026年5月18日

 『麻雀放浪記』は、阿佐田哲也の原作を映画化した、イラストレーター和田誠の監督デビュー作。終戦直後、焼け跡のドヤ街でドサ健(鹿賀丈史)と出会い、賭博の世界に足を踏み入れた坊や哲(真田広之)は、オックス・クラブのママ(加賀まりこ)や出目徳(高 … 続きを読む

ユースケ・サンタマリア「クイズ番組が題材のミステリーが面白そうだなと」傑作ミステリー小説の映画化で好演『君のクイズ』【インタビュー】

映画2026年5月15日

-いつも通りというのは?  彼は普段、ひょうひょうとして冗談もよく言いますが、仕事に関してはすごくまじめな人で、普通の人なら見過ごしそうなところまで気を遣いますし、芝居は常に全力でやる。僕は舞台でも彼と共演したことがありますが、常に全力なん … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第18回「羽柴兄弟!」新登場した羽柴家臣団期待の俳優陣【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年5月14日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=羽柴小一郎長秀/仲野太賀)が、兄・秀吉(=羽柴秀吉/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。5月10日に放送された第18回 … 続きを読む

佐々木蔵之介「毎朝、亡き大森一樹監督に思いをはせながら現場に通っていました」名監督の遺志を継いで主演に挑んだ時代劇『幕末ヒポクラテスたち』【インタビュー】

映画2026年5月8日

-物語は、太吉と気の荒い青年・新左の関係を軸に進みます。序盤、入れ墨をしたヤクザのような格好で太吉の家に乗り込んできた新左は、大けがをして太吉に手術で命を救われたことをきっかけに、生き方が大きく変わっていく。新左役の藤原季節さんとの共演はい … 続きを読む

ミュージカル「メリー・ポピンズ」通算250回公演達成! 濱田めぐみ「長く長く上演していけたら」 大貫勇輔「毎公演、奇跡を起こせるように」

舞台・ミュージカル2026年5月5日

 ウォルト・ディズニーが映画化し、アカデミー賞5部門を受賞した映画を原作とした、ミュージカル「メリー・ポピンズ」。現在上演中の日本プロダクションが、5月6日に記念すべき250回公演を迎える。それに先立ち、メリー・ポピンズ役の濱田めぐみと、バ … 続きを読む

page top