仲野太賀 出征前のデートシーンは「撮影後二、三日は、悲しすぎて台本が読めませんでした」 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

2024年5月24日 / 08:15

-そんな優三を演じる上で心がけていることは?

 柔和で温かな優三の空気感を大事にするのと同時に、猪突猛進で物事に真っすぐ向き合う寅ちゃんとの対照性も意識し、頼りなさそうに見えつつも、内には太い芯があることを表現できたら、と思っています。

-伊藤さんとの共演の印象は?

 伊藤さんとは、あうんの呼吸という感じで、打ち合わせなしで、僕がどんな表現をしても全て受け入れてくれるので、とてもやりやすいです。思わず台本からはみ出してしまうような瞬間も、作品の世界観を損なわないように、寅ちゃんとして対応してくれますし。夫婦役も「拾われた男」(22)に続いて二度目なので、安心して思いきり飛び込むことができます。そんなふうに、伊藤さんには絶大な信頼を置いています。

-現場での伊藤さんの座長ぶりはいかがですか。

 現場でのたたずまいは素晴らしく、「尊敬」の一言です。伊藤さんがいると、現場がとても明るくなるんです。いろんな人とコミュニケーションを取りながらも、決して気を遣っているように感じさせず、本人も気負わずにいる感じで。そういう人が真ん中にいると、他の人たちも自然とそういう気持ちになり、リラックスして現場にいられるんですよね。おかげで、現場の風通しもすごくよくて。それはやっぱり、座長が作り出す空気なんだろうなと。本当に頼れる主役で、言うことなしです。スタッフも全員、伊藤さんのことが大好きなんじゃないでしょうか。

-朝ドラらしさをどんなところに感じていますか。

 朝ドラへの出演は「あまちゃん」(13)以来11年ぶりになります。ただ、前回はほんの少ししか出演していないので、今回初めて現場をしっかり体感させてもらっていますが、1週間の撮影量の多さは、朝ドラならではだなと。それでも現場の空気はすごくよくて、1週間の撮影の最後には、みんなで「お疲れ」と拍手して締めるなど、他の現場にはない温かさがあるんです。伊藤さんを中心に、このチームで朝を盛り上げていくんだという意思も感じますし、とてもいい空気が流れています。

-演じる役が年齢を重ねて成長していくことも、朝ドラの特徴ですね。

 ひとつの役を、時間や時代の変化を感じながら長期間演じられるのも、朝ドラの魅力です。作品によっては、年代ごとに同じ役を別の俳優が演じることもあるので、こんなふうに自分で最後までやり遂げられる喜びも大きくて。一つの役にじっくり向き合うことができ、自分の中で役が育っていく感覚もあるので、貴重な経験をさせていただいています。ただ、時系列通りに撮影するわけではないので、「今は何歳だっけ?」と戸惑うこともありますが、衣装部やヘアメイク部の皆さんが、場面ごとの年齢を完璧に表現してくださるので助かっています。それほど気負わずにできるのは、そんなふうにいろんな部分でスタッフの皆さんが支えてくださっているおかげです。

-それでは最後に、仲野さんの考える「虎に翼」の見どころを。

 脚本を読み、女性が社会に出て活躍することが、こんなにも難しい時代だったのかと、痛感しました。ただその分、当時の女性たちのそういう言葉にならないため息のようなものを脚本に落とし込んでいるので、痛快さがあるんですよね。「司法の世界を目指す女性の物語」と聞くと堅い感じがするかもしれませんが、寅ちゃんも猪爪家のみんなも、本当に個性豊かで、ユーモアにあふれた物語ですし。いろんな思いを背負った寅ちゃんの一生懸命な生きざまは、視聴者の皆さんの胸にも響くと思うので、頑張っているその姿をぜひ見守ってください。

(取材・文/井上健一)

 

 

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

山下智久「ブルーモーメント」最終回は「僕も上海や香港からテクノロジーを駆使して見ます!」【インタビュー】

ドラマ2024年6月26日

-本作では、山下さんがプライベートでも親交が深い伊藤英明さんと田中圭さんが“友情出演”されました。撮影現場ではどんなお話をされましたか。  英明さんとは、以前一緒に共演させてもらっていたことを懐かしむ瞬間があったり、今英明さんがやっている作 … 続きを読む

「大きなスクリーンでこの大自然を楽しんでもらえたら」「いい時代の邦画の匂いを感じていただけたら」杉田雷麟、寛一郎『プロミスト・ランド』【インタビュー】

映画2024年6月26日

-今、熊が街に出て来て話題になっていますが、その熊を獲物にするマタギを演じてみてどう感じましたか。 杉田 僕は、マタギについては今回現地で少し触れたぐらいなんですけど、熊の皮をお尻に敷くものにしたり、内臓を薬にしたり、肉はちゃんと食べて…。 … 続きを読む

西野七瀬、30歳を迎え「素直にうれしい」 2度目となる劇団☆新感線で戦女役に挑む「記憶に残る作品に」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年6月26日

-ところで、5月25日には30歳の誕生日を迎えられました。ある意味では節目の年なのかなと思います。  節目だということはあまり意識はしていませんが、20代から30代になるのはやっぱり大きな変化だなと思います。そういう意味で、30歳を迎えられ … 続きを読む

「光る君へ」第二十四回「忘れえぬ人」“忘れえぬ人”への思いに突き動かされる人々のドラマ【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年6月23日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。6月16日に放送された第二十四回「忘れえぬ人」では、思いがけない藤原宣孝(佐々木蔵之介)からの求婚と宋人の周明(松下洸平)への思いの間で揺れる主人公まひろ(吉高由里子)を中心に、さまざまな人間模 … 続きを読む

【週末映画コラム】70年代にこだわった『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』/とにかく草笛光子が素晴らしい『九十歳。何がめでたい』

映画2024年6月21日

『九十歳。何がめでたい』(6月21日公開)    数々の文学賞を受賞してきた作家の佐藤愛子(草笛光子)は、90歳を過ぎた現在は断筆宣言をして人付き合いも減り、鬱々(うつうつ)とした日々を過ごしていた。  そんな彼女のもとに、中年の … 続きを読む

Willfriends

page top