仲野太賀 出征前のデートシーンは「撮影後二、三日は、悲しすぎて台本が読めませんでした」 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

2024年5月24日 / 08:15

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。5月24日放送の第40回では、戦時下を生きるヒロイン・佐田(猪爪)寅子(伊藤沙莉)たちにもその影が忍び寄り、ついに夫の優三が出征することになった。優三を演じる仲野太賀が、出征前の寅子とのデートシーンを振り返りつつ、撮影の様子を語ってくれた。

(C)NHK

-出征前の優三と寅子が河原でデートするシーンは心打たれました。

 僕にとっても、すごく印象深いシーンでした。今思い出してもつらい気持ちになります。撮影後二、三日は、悲しすぎて台本が読めませんでしたし…。ただ、そういう感覚になることは今まであまりなかったので、それくらい素晴らしい脚本に巡り合えてよかったなと。本当に大事なシーンでした。

-あの場面を演じる上で心掛けたことは?

 「私のせいで、つらい思いをさせてごめん」と土下座する寅ちゃん(=寅子)に、優三が「寅ちゃんができることは、謝ることじゃない」と言って、自分の思いを打ち明けるんですよね。今まで寅ちゃんは、自分の判断基準を“社会的な正しさ”に置いてきました。でもそれが、彼女自身を苦しめることになった。社会的地位のために優三と結婚することが正しかったのか、自分が弁護した被告を本当に弁護すべきだったのか…。そうやって自分を厳しく責め立てる寅ちゃんに、優三は「これからは、自分の“心の正しさ”を大事にしてほしい。誰かのために頑張れる人だからこそ、自分の人生を大切にしてほしい」と伝える。そんなふうに言える優三は、本当に優しい人だなと。その優しさが伝われば、と思いながら演じていました。

-優三の出征に至るまで、劇中では徐々に戦争の影が忍び寄ってきましたが…。

 戦争に行く場面が近づくにつれ、台本を読み進めるのが、苦しくなっていきました。家族のいなかった優三が寅ちゃんと結ばれ、一緒に暮らしてきた猪爪家のみんなと本当の家族になることができ、愛する娘も生まれた。法律の道には進めなかったけど、優三が心の底から欲しかったものは、家族だったんじゃないか…。そんなふうに思っているとき、戦況はどんどん悪化していくわけですから。

-やり切れませんね。

 もちろん、優三にも「なぜ戦争に自分の幸せを奪われなければいけないのか」という怒りはあったと思うんです。でも、彼の中の主語は、あくまで寅ちゃんなんですよね。常に、寅ちゃんが悲しまないように、寅ちゃんがつらい思いをしないように、と考えている。だから優三は、戦争に行くことが避けられない以上、せめて寅ちゃんを悲しませないようにしたかったんじゃないかなと。そういうところが優三らしいですよね。

(C)NHK

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】時空を超えた愛の行方は『楓』『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』『星と月は天の穴』

映画2025年12月20日

『楓』(12月19日公開)  須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・ … 続きを読む

北香那「ラーメンを7杯くらい食べたことも」天野はな「香那ちゃんのバレエシーンは見どころ」 「ラーメン」と「クラシック・バレエ」が題材のコメディーで共演 NHK夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」完成会見

ドラマ2025年12月19日

 12月19日、東京都内のNHKで、1月5日からスタートする夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」の完成会見が行われ、主人公・千本佳里奈(ちもと かりな) 役の北香那、佳里奈の親友・二木優美(ふたぎ ゆみ) 役の天野はながドラマの見どころを語ってくれ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(9)浅間神社で語る「厄よけの桃」

舞台・ミュージカル2025年12月18日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  前回は、玉田家再興にあたり「三つ … 続きを読む

石井杏奈「人肌恋しい冬の季節にすごく見たくなる映画になっています」『楓』【インタビュー】

映画2025年12月17日

 須永恵(福士蒼汰)と恋人の木下亜子(福原遥)は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在、亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・涼だ … 続きを読む

染谷将太 天才絵師・歌麿役は「今までにない感情が湧きあがってきた」 1年間を振り返る【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語も、残すは12月14日放送の最終回「蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」の … 続きを読む

Willfriends

page top