上白石萌歌&森田想&加藤拓也監督「8人の個人的なお話を楽しんでもらえたら」 ドラマ「滅相も無い」【インタビュー】

2024年5月21日 / 10:00

 突如7つの巨大な“穴”が現れた日本を舞台に、穴に入るか悩む8人の男女が会合に参加し、お互いの人生を語り合うドラマ「滅相も無い」(MBS/TBSドラマイズム)が放送中だ。本作はドラマ「きれいのくに」(2021年)や映画『ほつれる』(2023年)などの作品を手掛けた加藤拓也監督が初めて連続ドラマで全話脚本・監督に挑み、中川大志、染谷将太、上白石萌歌、森田想らが出演するSF群像劇。

 このほど、“田舎暮らしの松岡” 役を演じている上白石、“帰国生の青山”役の森田、加藤監督がインタビューに応じ、撮影の裏話や作品への思いを語った。

(左から)森田想、加藤拓也監督、上白石萌歌 (C)MBS

-上白石さんと森田さんは、ご自身の役柄をどのように捉えて演じましたか。

 上白石 私が演じた“田舎暮らしの松岡”は、自分の生き方や、人は生きるうえで働くとか、社会に対して自分がどうあるかを考えていかなくてはいけない中で、自分の心地よいあり方をすごく模索しているような人物です。精神的に極限状態でグラグラしているところから始まるので、極限状態の人物が、どうやって自分としての豊かさみたいなものを求めていけるかを見つけていくような役どころです。

森田 私が演じている“帰国生の青山”は、幼少期をイギリスで過ごしたあと日本に来て、のちに穴に入ることを決意して別荘での会合に参加するようになります。青山は内面で考えることが多かった役で、自分が生活するうえで自分をどのように出していきたいか、でもそれが出せなかったり、自分の言いたいことが言えなかったり、その言い方にも悩んだり。人との関わりも、特に母親との関わりについて悩んだ部分をフィーチャーして描いていただいて、会合でもそんなにしゃべったりせず、自分の中で構築した関わり方で人と接していくような難しい役でした。

-上白石さんは加藤監督の作品に憧れていたとのことで、今回念願がかなっての出演となりましたね。

 上白石 加藤監督の作品を初めて見たのが「誰にも知られず死ぬ朝」という舞台でした。そのときの見せ方が面白くて、お客さんが舞台を取り囲むという不思議な構図で、余白はあるのですが、すごく隙がない空間で、あんなふうにお芝居を全身に浴びた経験が初めてで衝撃を受けました。私は日記を書いているのですが、その日記に感想をたくさん書いたのを覚えています。いつか自分も何らかの形で加藤さんにお目に掛かりたいなと思っていたので、 今回お会いできてすごくうれしいです。初めて脚本をもらったときのずっしり感と、これが加藤さんの言葉なのかという衝撃は忘れられません。

 -役を演じる際に苦戦したところはありましたか。

上白石 終始ずっとバクバクしていました。モノローグと実際の会話の切り替えがはっきりしている作品なので、このせりふは今誰に言っているのか、 自分に言っている言葉かもしれないし、その会合にいる相手に言っている言葉かもしれないし、モノローグとして言っているのかもしれない。そういったベクトルを自分で分かっていなければならなかったので、そこの言葉の感覚が難しかったです。

森田 私はバレエをやっている役なので、実際のバレエをしている風景を撮るシーンというよりも、それ以外のシーンでバレエをやっていた人の姿勢に見えているだろうかというのが不安で難しかったです。

-反対に、この作品だからこその面白さや醍醐味(だいごみ)を教えてください。

上白石 加藤さん節が全開なところは1ファンとしてうれしかったです。私も舞台も映像もやっていて、どちらも好きですし、楽しいので、両方のエッセンスを感じられたのは、今回の現場ならではの面白さでした。

森田 演じる側にとっては、どの瞬間も楽しかったなと思います。加藤さんが情報解禁のときのコメントで「映画的な手法と演劇的な手法の融合」というお話をされていましたが、そこの部分は自分の中で撮影時に思っていながらも、決めつけることなく、いい意味で現場のスタッフさんや監督、キャストの皆さんの空気に流されながら作ったので面白い部分でしたし、しっかり映像として映っていると思います。

-加藤監督から見たお2人の印象はいかがですか。撮影現場でのエピソードも教えてください。

 加藤氏 森田さんとは映像作品で何度か一緒にやらせてもらっていますが、言語感覚が僕とすごく近い感じがして、しゃべりやすいです。上白石さんも一緒で、自分と言語感覚が近い人と一緒にやれるといいなと思っているので、そういう意味では2人共ぴったりだったなと思います。

上白石 松岡は過労で精神的に極限状態から始まる役なので、普通に寝てはいけない気がして、ソファや床で2時間くらい浅めに寝るようにしていたら、加藤さんに「いや、寝たら?」と言われて…(笑)。

加藤氏 寝た方が健康だからね(笑)。そんなこともありました。

-最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

上白石 登場人物8人のそれぞれの苦しみやささいな悩み、いろんな形の葛藤が描かれるオムニバスドラマです。ご覧になる方は“自分はこの人だな”と重なる瞬間があると思うので、見ている方も主人公になれるようなドラマだと感じています。私は深夜にテレビを付けて、そのままドラマに見入ってしまうことがよくあるので、深い時間に、この作品を見られるのはすごくぜいたくだなと思いますし、春の長い夜のお供にしていただけたらうれしいです。

森田 30分間で1時間半くらい見たような気持ちになれる作品です。すごく濃密ですし、手放しで見ても何か引っ掛かる部分が起きるような面白いドラマなので、楽しんでいただきたいです。

加藤氏 全8話で8人のすごく個人的なお話を描いています。その個人的なお話を楽しんでもらえたらと思っています。

ドラマは毎週火曜 深夜0時59分からMBS、毎週火曜 深夜1時28分からTBSで放送中。

(取材・文/小宮山あきの)

上白石萌歌(左)と森田想 (C)MBS


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

二宮和也「子どもたちの映画館デビューに持ってこいの作品です」『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』【インタビュー】

映画2025年5月17日

 テレ東系で毎週月~金、朝7時30分から放送中の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」の映画化第2弾。番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、バカンスで訪れた「どんぐりアイランド」を舞台に繰り広げる冒険をオリジナルストーリーで描き … 続きを読む

【週末映画コラム】異色ホラーを2本 デミ・ムーアがそこまでやるか…『サブスタンス』/現代性を持った古典の映画化『ノスフェラトゥ』

映画2025年5月16日

『サブスタンス』(5月16日公開)  50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、容姿の衰えによってレギュラー番組を降ろされたことから、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、禁断の再生医療「サブスタンス= … 続きを読む

新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月16日

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かう … 続きを読む

グレッグ・ターザン・デイビス「とにかく、ただ純粋に面白い映画を撮ることだけが、自分たちに与えられたミッションでした」『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』【インタビュー】

映画2025年5月15日

 トム・クルーズ主演の大ヒットスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が、5月23日の公開に先駆けて17日から先行上映される。前作『ミッション:インポッシブル/デッ … 続きを読む

研ナオコ、認知症のおばあちゃん役で9年ぶりの映画主演「主演女優賞を狙ってます(笑)」岡﨑育之介監督「研さんの人生の奥行きがにじみ出た」『うぉっしゅ』【インタビュー】

映画2025年5月12日

 人生に迷いながらソープ嬢として働く若い女性・加那と、彼女に介護されることになった認知症の祖母・紀江の交流を明るくポップなタッチで描いたユニークな映画『うぉっしゅ』が絶賛公開中だ。  本作で、加那を演じる若手注目株の中尾有伽と共に、紀江役で … 続きを読む

Willfriends

page top