玉置玲央「柄本佑くんのおかげで、幸せな気持ちで道兼の最期を迎えられました」強烈な印象を残した藤原道兼役【「光る君へ」インタビュー】

2024年5月5日 / 20:45

(C)NHK

-それによって、道兼は大きく変わりました。

 つまり道兼は、道長のおかげで少しだけ真人間になれたわけです。それと同時に、僕自身も共演者としての佑くんに対する信頼がさらに高まったと思っていて。だから今振り返ると、きちんと道長を嫌いでよかったし、きちんと好きになれてよかったなと。

-一方、日常的に接してきた道長と違い、道兼は因縁の相手であるまひろと直接の接点はほとんどありませんでした。その中で、まひろや演じる吉高さんとの距離感をどう意識していましたか。

 僕は、プライベートでの関係性をお芝居に乗せた方がいいと考えるタイプです。それによって生まれる役同士の距離感や関係性があると思うので。吉高さんとも普段から親しくしているので、今回もそれが存分に発揮されたような気がします。

-第八回で道兼がまひろの家を訪ねた場面は、2人が顔を合わせる貴重な機会でした。

 ニアミスは何度かありましたが、直接顔を合わせる機会は限られていたので、あの場面では、2人の関係性に関する情報をできる限り詰め込み、画から感じ取れる以上のものを受け取っていただけるように、と意識していました。まひろにとって道兼は憎い母のあだ。だから、それに気付かないまま「不愛想だな」などと言っている道兼の愚かさが、2人の距離感に加わった方が効果的だろうと。そこには、普段の僕と吉高さんの関係性があるからこそ、生まれたものもあるのではないかと思っています。

-まひろが道兼の前で琵琶を弾くシーンは緊張感が漲っていました。

 あそこは、ただ琵琶を弾いているだけのように見えて、まひろにとっては道兼との戦いです。視聴者からは「琵琶で道兼を殴ればいいのに」という声もあったようですが、現場の吉高さんには、そう思わせるくらいの殺気に近い緊張感が漂っていました。普段は天真らんまんな吉高さんが、ああいうお芝居を見せてくれたことで、改めて「すごい役者だな」と実感しました。

-いわゆる“ヒール”と呼ばれる悪役、あだ役としての道兼を演じたお気持ちは?

 僕は普段からヒール役を演じることが多いので、今回も(脚本家の)大石(静)先生から「ぴったりの役」とお聞きし、やる気満々でいたんです。でも、出来上がった台本を読んでみたら、想像以上で(苦笑)。「これでいいのかな?」と不安になることもありましたが、スタッフやキャスト、視聴者の皆さんに励まされ、最後まで演じ切ることができました。そういう意味では、これまでいろんなヒールを演じてきましたが、まだまだいろんなやり方があるんだなと今回、改めて気付かされました。

-役者としてやりがいを感じた部分は?

 第一回からドラマ的な見せ場も多かったので、それぞれ丁寧に演じさせていただきました。でも、実はすごく楽しかったのが、藤原一族が一堂に会する場面だったんです。特別ドラマチックな場面でもないのに、現場ではみんなが一斉に「自分はこうする」「それなら私はこうする」といった感じで、演技合戦を繰り広げていて。それがあの一族を端的に表していた気もしますし、同時に俳優としても、そういうやり取りの中から家族のシーンが出来上がっていくのが楽しくて。いろんな発見も多く、皆さんのことをさらに深く知ることができ、とても豊かな経験をさせていただきました。

(取材・文/井上健一)

(C)NHK

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「光る君へ」第三十六回「待ち望まれた日」まひろの言葉から実感した「真心の物語」【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年9月28日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。9月22日に放送された第三十六回「待ち望まれた日」では、ついに一条天皇(塩野瑛久)と心を通わせた中宮・彰子(見上愛)の懐妊・出産と、主人公のまひろ(吉高由里子)から漢詩を学ぶ彰子の姿が描かれた。 … 続きを読む

大野拓朗「普通のミュージカル以上にプレッシャーがあった」 「進撃の巨人」-the Musical-で再びエルヴィン役に挑む【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年9月28日

-本作で描かれているのは、物語の冒頭部分のお話ですが、原作は完結しており、物語は大きく展開していきます。役作りをする上で、大野さんはどの辺りまでその後のストーリーを意識されていたのですか。  全部です。この舞台では冒頭だけを描いていますが、 … 続きを読む

橋本環奈「自分の好きなことを貫く“ギャル魂”が大切」連続テレビ小説「おむすび」いよいよスタート!【インタビュー】

ドラマ2024年9月28日

-なるほど。  しかも、仲間を大事にして、絶対に裏切らないんです。高校時代の結のギャル仲間が、その後もたびたび登場しますが、いつまでも関係が変わらなくて。同窓会でも、いつも同じ話で笑い合っている様子が、青春そのものだなと。おかげで、日に日に … 続きを読む

咲妃みゆ「新鮮さを舞台でお届けすることへの大きなチャレンジ」 ミュージカル「グラウンドホッグ・デー」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年9月27日

-今作では、初共演の方も多いそうですが、咲妃さんが普段、初共演の方とどのようにして距離を縮めていますか。  舞台のお仕事に関わらずですが、初めてお目にかかる方とお話しさせていただく時、私が初めてということは、お相手の方も初めてで、状況は一緒 … 続きを読む

【週末映画コラム】奇想天外、摩訶不思議な世界が展開する『憐れみの3章』/『ビートルジュース ビートルジュース』

映画2024年9月27日

『ビートルジュース ビートルジュース』(9月27日公開)  死後の世界で「人間怖がらせ屋」を営む推定年齢600歳のビートルジュース(マイケル・キートン)は、かつて結婚を迫ったリディア(ウィノナ・ライダー)のことをいまだに忘れられずにいた。 … 続きを読む

Willfriends

page top