「生への回帰というのがこの映画の目指したところです」荒木伸二監督、若葉竜也『ペナルティループ』【インタビュー】

2024年3月21日 / 08:00

-監督、この映画はストーリーや説明を極力省略し、せりふも少ないです。そうする意図はどこにあったのでしょうか。

 最初は、せりふはもっと少なくて、せりふなしでできないものかと思いました。でも、やっぱりループやSFを扱うと、少しはせりふが欲しくなるんです。それでも、今映画館やテレビでかかっているものを10としたら、0.2ぐらいだと思います。せりふを削れるだけ削ってみようという話を若葉さんにしたら、手足をもがれたみたいで超うれしいみたいなことを言ったので、これはいいぞと。せりふをどれだけ削れるかと無理ゲーに若葉さんは乗るのかと知ってから、ちょっと前に進みやすくなりました。

-上映時間も非常にコンパクトになっていますね。

 目標は90分だったんですけど、やっぱり撮っていると愛情が生まれてしまい、99分になってしまいましたが、何とか2桁で収めました。2桁で収めると、乗り物みたいな感じがして、びゅんと乗れるなというのがあって、気に入っています。

-監督がこの作品に込めた意図や思いはどこにあるのでしょうか。

 意図ということでいうと、生への回帰、です。実は。何だか窮屈な時代だと思います。社会なのか時代なのか精神的になのか分かりませんが、とにかくとても窮屈で、スマホの中やネットの海に、吸い込まれてつぶされてしまいそうです。薄っぺらくて、うそくさくいなあ、何だかと、日々思います。そんな今、外に出て風を浴びてみるのはどうかと。生きていることを実感しませんかと。転んだらけがをするし、血を流すし、痛いけど、そういう全て、生きていることに戻りませんか、というのが意図です。言ってしまえば。

-若葉さんは「この映画をカルト映画と認定する」と言っていますね。

 まあ、あえてカテゴライズするならですよ。「何を見たんだ、何を見せられたんだ」みたいな読後感が、例えば『鉄男』(89)とか『ピンク・フラミンゴ』(72)を見た後の気持ちと同じになったということで、「俺がカルト映画を見た時と同じだな」と思ったので。

-最後に映画の見どころも含めて、観客に向けて一言お願いします。

若葉 この映画は嫌いな人は大嫌いだと思います(笑)。僕は今までの日本映画が大好きな人たちには受け入れられないだろうなと思っています。ただ、それに対するアンチテーゼでもあったので、すごく興味があるのが、飽和状態の日本映画界にこういうものが投下された時に、群衆の中でどれぐらいの反応があるのかというのはすごく興味があるので、その声を早く聞きたいです。

荒木 99分の新しい乗り物を作りました。客席のアームレストにしっかりつかまって、お気を確かに、振り落とされないようにご覧ください。気に入ったら、何度も見てください。繰り返し、見れば見るほど楽しめる作品にできたと思っています。

(取材・文・写真/田中雄二)

 

『ペナルティループ』

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

毎熊克哉「桐島が最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました」『「桐島です」』【インタビュー】 

映画2025年7月3日

-実際に演じてみて感じたことや、演じる上で心掛けたことや気を付けたことはありましたか。  自分が桐島を演じる上で一番重要だと思ったのは、(偽名の)「ウチダヒロシ」として、1人の部屋で朝を迎えて、窓を開けてコーヒーを飲んでというシーンでした。 … 続きを読む

磯村勇斗&堀田真由、ともにデビュー10年を迎え「挑戦の年になる」 ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」【インタビュー】

ドラマ2025年7月2日

 磯村勇斗主演、堀田真由、稲垣吾郎が出演するカンテレ・フジテレビ系“月10ドラマ”「僕達はまだその星の校則を知らない」が7月14日から放送スタートする。本作は、独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な主人公・白鳥健治(磯村勇斗)が、少 … 続きを読む

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

-それが変わってきたということでしょうか。  物事は、ある程度加速がつき、歯車がスムーズに回り始めれば、少ないエネルギーで進んでいくようになりますが、スタートするときは膨大なエネルギーが必要です。この作品もそういう過程を経て、ようやく彼が笑 … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

-30年間やってきて、栗田さんなりのルパンに対する思いや魅力について。また栗田さんにとってルパンとはどういう存在でしょうか。  やっぱりルパン三世の声は、パート2や『ルパン三世 カリオストロの城』(79)の頃の、山田さんが一番元気だった頃の … 続きを読む

Willfriends

page top