「生への回帰というのがこの映画の目指したところです」荒木伸二監督、若葉竜也『ペナルティループ』【インタビュー】

2024年3月21日 / 08:00

 朝6時、いつものように目覚めた岩森淳は、恋人の砂原唯(山下リオ)を殺した溝口登(伊勢谷友介)を殺害する。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、なぜか溝口も生きている。そして今日もまた、岩森は復讐(ふくしゅう)を繰り返していく。荒木伸二監督が、自身のオリジナル脚本で撮り上げたタイムループサスペンス『ペナルティループ』が、3月22日から全国公開される。荒木監督と、岩森を演じた若葉竜也に話を聞いた。

 

(左から)荒木伸二監督、若葉竜也 (C)エンタメOVO

-監督、タイムループものはこれまでも結構映画になっていますが、今回の形は非常に珍しいタイプのものでした。このアイデアはどこから生まれたのでしょうか。

 自分の中にうごめく情念みたいなものが、もしかしたらタイムループもので表現できるのではないかと、ある日思い立って企画を始めました。で、せっかくタイムループものを作るなら、誰も見たことがないようなものを作りたいと思いました。もうこの後には誰もタイムループものを作ろうとは思わなくなるような。でも、やっぱり考えていくと、大体似てくるんです。そこから抜け出そう、新しいものにしよう、もっと何か訴えかけられるものにしようというふうに考えてやっとたどり着きました。

-若葉さんは、最初に脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか。

 この映画のオファーを頂いた時は、ちょうどコロナ禍の真っただ中で、エンタメ業界も映画界も、保守的になっていって、言葉一つでも揚げ足を取られるような状況で、自分の中ですごい怒りみたいなものがどんどんと蓄積されていって、何かを壊してしまいたいという衝動が膨れ上がっている時期でした。この映画の前にも、何本か主演作のお話を頂きましたが、あれもこれも何かが違うみたいな感じでした。『ペナルティループ』の台本を届いた時に、「こんなめちゃくちゃなことをしませんか」と言われているような気がしたんです。それで、同志がいてくれたというか、これだなと思って即決でした。「この飽和した映画界から一緒に離れていきませんか」みたいな気持ちにさせてくれて、手を差し伸べられたような感じがしました。

-では実際に演じてみて、監督の演出も含めていかがでしたか。

 面白かったです。今までやったことがないような感じでした。せりふも極限まで減らしていくような作業だったので、表現という、ある種不確かなものを排除されて、じゃあ一体俳優に何ができるのかということを突き付けられた気がしました。感情を優先させて、ここまで振り切ってしまうみたいなことをやったら、ネタバレになる可能性も十分にはらんでいたので、監督と一緒に、客観的な視点を大事にしながら、話し合いながら進めていったことは、今まで自分がやってきた映画とは全く毛色の違う作り方でした。

-監督、タイムループは映像ならではの表現なので、とても映画向きだとは思いますが、同じことの繰り返しを描くというのはどんな感じなのでしょうか。

 これは何回目?って絶対に混乱するなと思っていたのですが、若葉さんご本人に管理していただいたからというのもありますが、事前に結構練ったので、そこまで混乱は起きず、こことここはどう違うかというのが、皆の中で十分に共有されていたので、こんがらがったりはしなかったです。

-若葉さんは以前、「自分が観客として面白いと思う映画や、自分が観客なら見に行くみたいな映画が好き。そういうものを目指す」みたいなことを言っていましたけど、今回もそのカテゴリーに入りますか。

 もちろんです。僕はそういうものしかやらないので。自分が面白くないと思ったり、これはできないと思うような映画は、そもそも宣伝ができません。それは正直なところです。だって観客に対して失礼じゃないですか、自分が面白いと思っていないんですよ。僕が観客の立場だったら、裏切られたような気持ちになると思うので、それはしたくないという思いはあります。この映画は、どこにカテゴライズしたらいいのか分からないところが非常に魅力的ですし、せりふを極限までそいだ時に、言葉の壁を超えられる可能性を秘めていると思ったのでとても魅力的でした。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

門脇麦、「芝居に対してすごく熱い」田中圭と夫婦役で5度目の共演 舞台「陽気な幽霊」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月2日

 田中圭を主演に迎え、若村麻由美、門脇麦、高畑淳子ら豪華共演者で贈る舞台「陽気な幽霊」が5月3日から開幕する。本作は、20世紀を代表する劇作家ノエル・カワードによるウェルメイド・コメディー。1945年にはデヴィッド・リーン監督により映画化も … 続きを読む

今田美桜「『アンパンマン』のように、幅広い世代に愛される作品に」連続テレビ小説「あんぱん」いよいよスタート!【インタビュー】

ドラマ2025年4月1日

 3月31日から放送スタートしたNHKの連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、何者でもなかった朝田のぶと柳井嵩(北村匠海)の2人が、数々の荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『 … 続きを読む

坂本昌行&増田貴久がミュージカルで初共演「笑顔になって、幸せになって帰っていただけたら」 ミュージカル「ホリデイ・イン」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月1日

 坂本昌行と増田貴久をはじめとした豪華キャストが出演するミュージカル「ホリデイ・イン」が4月1日から開幕する。本作は、1942年に公開された映画『Holiday Inn』(邦題『スウィング・ホテル』)をもとに舞台化されたミュージカル作品。「 … 続きを読む

藤原竜也が挑む「マクベス」 「1日1日、壁を突破することが目標」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月29日

 2024年5月にスタートした、吉田鋼太郎が芸術監督を務める【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】。待望の二作目となる「マクベス」が、藤原竜也を主演に迎え、5月8日から上演される。藤原に初めて挑む「マクベス」への思いや吉田とのクリエイトに … 続きを読む

竈門炭治郎を演じる阪本奨悟が語る、舞台「鬼滅の刃」の魅力 「生身の人間が演じているからこそ、リアルに共感できる」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月28日

 「週刊少年ジャンプ」で2020年5月まで連載していた吾峠呼世晴による大ヒット漫画『鬼滅の刃』。2020年に初めて舞台化されて以降、シリーズを重ね、4月11日からはシリーズ5作目となる、舞台「鬼滅の刃」其ノ伍 襲撃 刀鍛冶の里が上演される。 … 続きを読む

Willfriends

page top