「考察を楽しんでいただければと思います」 内田英治監督&土屋太鳳『マッチング』【インタビュー】

2024年1月18日 / 16:00

 『ミッドナイトスワン』(20)の内田英治監督が原作・脚本・監督を務め、マッチングアプリによる出会いから始まる恐怖をオリジナルストーリーで描いたサスペンススリラー『マッチング』が、2月23日から全国公開される。内田監督と、本作で主人公の輪花を演じた土屋太鳳に話を聞いた。

(左から)土屋太鳳、内田英治監督 (C)エンタメOVO

ーまず内田監督、どうしてこういう話を思いつき、映画にしようと思ったのでしょうか。

 中学時代からスリラーとかホラーが好きで、推理小説も好きで、いつかやりたいなと思いながら、何年もたってしまいました。こういう作品はテーマや、そのベースになるストーリーラインが結構重要だったりもするのですが、それがなかなかなくて。それで、5年ぐらい前にマッチングアプリではこういう話もあるだろうなって思いついたんです。これはいいなと思いながらも早5年がたち、今回ようやく撮影ができました。

ー土屋さんのキャスティングはイメージ通りでしたか。

 イメージとは全然違いました。いい意味で、イメージしていたよりはすごくリアルな感じなんだなと。日常的ではない存在感みたいなことを思っていたんですけど、リアリティーもあって、とても日常的なものも出せる人なんだと思いました。もっとキラキラしているはずだと思っていました(笑)。今回は映画的なリアリティーがあったと思います。

ー土屋さんは、最初にオファーがあった時と、最初に脚本を読んだ時の印象を聞かせてください。

土屋 オファーがあった時はまだ脚本が出来上がっていなくて、最初はもっとつらいお話で、「私、こんなのできないかも。この話は耐えられない」と思いました(笑)。1年前ぐらい前に、監督の『ミッドナイトスワン』(20)を見て、衝撃というか、ショックを受けました。何で自分は好きでお芝居をしているのに、こういう世界に入れないんだろうと考えてしまって。見た人の人生に大切なものを残す映画を作った監督とぜひご一緒したいと思ったので、内田監督と聞いた時点で、やりたいですと。

内田 そうしたらスリラーだった。

土屋 「あー、そっちなのかって」(笑)。だから、今度はもっと穏やかというか、スリラーではないものでご一緒したいです。

内田 分からないですよ。次があるかもしれないし、そうしたらまたスリラーです(笑)。

ー輪花の役作りについて、監督とディスカッションはしたのですか。

 私が覚えているのは、ある登場人物がマンションの上から落ちてくるシーンです。全然想像ができなくて、感情があまり乗らなかったんです。その時、監督から「ダンスを踊るつもりでやってもらえる? 体で表現してほしい」と言われて、頑張ってスイッチを思い出してお芝居に出そうと思いました。監督が話してくださったのは「僕が大事にしているのはライブ感。ライブでは、本番でしかできないパフォーマンスがある。お芝居も同じだと思って、ライブのように撮ったら、たくさんの人に見ていただけるようになった」ということでした。私はその考え方がすごく好きで、そういう本番にしか宿らない、瞬間のパワーみたいなものを信じてくださっている監督との会話のキャッチボールで救われたなと思います。

ー今回は、土屋さんが絶叫するシーンも多くあり、スクリーミング・クイーンのような土屋さんがとても印象に残りました。ある意味、新たな挑戦だったと思いますが。

 もともと小さい頃からあまり声が出なくて、すぐに枯れちゃうんです。でも、叫んでも枯れないんだと実感できたのがこの映画でした。多分、ちゃんと感情が乗ったのだと思います。感情が乗らずに叫んだら声が枯れるんです。だから、叫び方も、ただの「キャア~」だけじゃなくて、常にいろんなことを考えて、情報を持っての「キャア~」が出せたらいいなと思いました。

ー監督、実際にマッチングアプリを利用して幸せになった人もいますが、この映画ではマイナス面や怖い面も描かれていますね。

 そうですね、基本的にはマッチングアプリは、とても現代っぽくて、いいものだなとは思います。ただ、幸せの裏には当然不幸もある。今回の映画は、その半面を描いています。マッチングアプリは出会いのきっかけになるだけであって、実際には、人間同士で発展させていくわけですから。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top