倉科カナが語る幸せの定義「誰かに喜んでもらえることが一番の幸せ」 舞台「蜘蛛巣城」【インタビュー】

2023年2月20日 / 08:00

 NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」をはじめ、数々のドラマ・映画で活躍しながら、第29回読売演劇大賞で優秀女優賞を受賞するなど、舞台女優としても大きな期待が持たれている倉科カナ。2月25日から上演されるKAAT神奈川芸術劇場プロデュース「蜘蛛巣城」では、早乙女太一と共に、破滅へと進む夫婦を演じる。稽古に励む倉科に、本作への意気込みや役作りについて、さらには今後の俳優業への思いなどを聞いた。

倉科カナ

-本作は、シェークスピアの四大悲劇の一つとして有名な『マクベス』を黒澤明監督が日本の戦国時代に翻案し、日本的な無常観に満ちた映画に仕上げた『蜘蛛巣城』を舞台化した作品です。最初に、本作の脚本を読んだときは、どんな感想を抱きましたか。

 映画版よりも武時と浅茅夫婦の愛が深く描かれていると感じました。『マクベス』が根底になっているというのはもちろん知っていましたが、日本ならではの情緒や夫婦愛がしっかりと描かれていたので、この役を演じてみたいというチャレンジ精神が湧きました。

-現在、稽古中と聞いていますが、手応えは感じていますか。

 今(取材当時)は、浅茅に対して私がどういうイメージを持っているのか、(演出の)赤堀(雅秋)さんに提示させていただいています。これから「これは違うな」「これがヒットしているかな」と取捨選択をしていくので、今はまだ振り幅を持たせて、多角的に役柄にアプローチしている段階です。

-赤堀さんからは、どんな演出がありましたか。

 物語の舞台が現代ではないので、その時代の決意の仕方や、感情が高ぶっているが故に抑えながら伝えることが大事だということを教えていただきました。相手を見ずに、でもテンションは高く、心では渦巻いている思いを伝えてほしいと。難易度が高い演出が多いですが、すごく勉強になります。

-倉科さんが演じる浅茅はどんな人物だと感じていますか。

 この作品は、やはり武時と浅茅の愛が軸になると思います。この時代、政略結婚が多い中で、お互いに思いあった同士が添い遂げるというのは、すごく難しいことでした。ですが、武時と浅茅は、親の反対を押し切ってでも一緒になった。それはすごく幸せなことですが、子どもができずに悩んでいました。それが出世にも関わる時代だったので、愛する人に出世してもらいたいのに、それができないというつらさを抱えていたと思います。それに、政略結婚で子どもを産んで幸せそうにしている妹への嫉妬心も根底にあったのではないかと考えていました。ですが、稽古を重ねるにつれて、誰を信じていいのか分からない恐ろしさがあったり、いつ殺されるか分からないという恐怖や欲望もあったのではないかと思うようになったので、そうした思いも織り交ぜながら浅茅を作っていけたらと思います。

-浅茅に共感できるところはありますか。

 あります。誰しもちょっとした欲は持っていると思います。今は今で幸せだけれども、もし、もっと幸せになれるならばそれをつかんでみたくなる気持ちもすごく分かります。子どもができないのは自分のせいかもしれないという忍びなさもあるし…。マクベス夫人は、悪女として描かれることが多いですが、『マクベス』よりも共感できるところが多いと思います。

-なるほど。『マクベス』が原案になっていたり、戦国時代を舞台にしていたりと、現代の私たちからは遠い話なのかと思っていましたが、もっと身近に感じられる作品になっているのですね。

 まさにそうです。赤堀さんが演出をされているからということもあると思いますが、どのキャラクターにもリアリティーがあって、そこに存在して生きているというのが感じられると思います。それに、人々が必死に生きている姿は現代にも通じるところがある。なので、時代劇というよりは、もっと身近で「こんな人いるよね」と思いながら見ていただける作品になっていると思います。

-武時役の早乙女さんの印象は?

 これまで舞台を拝見していて、殺陣が美しく、素晴らしいという印象を持っていたのですが、ご一緒させていただいたら、人柄はもちろんのこと、役や作品に向き合う真摯(しんし)な姿もかっこいいと感じました。殺陣の稽古は早乙女さんが皆さんにつけているのですが、一つ一つの動きが丁寧で、とても繊細なので、だからこそ殺陣がこんなに美しいんだと思いました。

 
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