渡辺謙「俳優の人生って、面白い」日本を代表する名優が、40年のキャリアを振り返る「役者道~渡辺謙があなたに語る仕事と人生~」【インタビュー】

2023年2月18日 / 08:00

 「役者道~渡辺謙があなたに語る仕事と人生~」が、2月19日(日)午前10:00からWOWOWで放送・配信スタートとなる(全4回・初回無料)。これは、ハリウッドでも活躍する名優・渡辺謙が、テレビデビュー40周年を迎え、モノローグ(独り語り)でこれまでの人生やキャリアを徹底的に語り尽くす、全く新しいスタイルのドキュメンタリーシリーズだ。放送を前に、番組に込めた思いや俳優としての考えを語ってくれた。

渡辺謙(スタイリスト:JB/ヘアメーク:倉田正樹(アンフルラージュ )) (C)エンタメOVO

-渡辺さんが40年のキャリアを振り返る貴重な番組ですが、そういう機会はこれまでなかったと思うのですが。

 ないですね。あまり振り返ろうという気もなかったですから。というか、むしろ振り返るのはちょっと嫌だなと思っていて。「あいつ、そろそろ引退か…?」と思われそうじゃないですか(笑)。

-それがなぜ、この企画を受ける気になったのでしょうか。

 以前、クリント(・イーストウッド)のドキュメンタリーを見たとき、クリントも最初から売れたわけじゃなく、テレビドラマから出て、マカロニウェスタンをやり、『ダーティハリー』(71)のようなアクション映画もやり、今に至る、というアップダウンのある、折れ線グラフみたいなものを改めて知って、「俳優の人生って、なかなか面白いな」と思ったんです。そういう意味では、僕もいろいろアップダウンはありましたし、作品に対する思いや、心根みたいなものを、ちょっとでも発信できれば、多少なりとも次の世代や、これから海外に出たいと考える若い俳優の役に立てるかなと思って、やってみるかと。

-次の世代や海外を目指す若い俳優のために、という「継承」の意識は、もともとあったのでしょうか。

 もちろん、ずっとあるんですけど、僕の経験だけが生かされるわけでもないので、その辺はなかなか難しいよなと思っていたんです。でも、「海外に出て行くなら、こういうことが大事」ということは、伝えて行かないとゼロになっちゃうので、少しでも力になれればと。ゼロから海外に出て行くのは、本当に大変ですから。

-継承という点では、番組の中で、主演したNHKの大河ドラマ「独眼竜政宗」(87)で勝新太郎さんと共演したときの話をしていました。その後、渡辺さんは大河ドラマに何度も出演し、最近では「西郷どん」(18)で、主演の鈴木亮平さんと濃密な芝居をしていました。そこから、大河ドラマを通した、勝さん、渡辺さん、鈴木さんという伝統の継承が見えてくる気がしました。

 結局、僕らの場合、体感でしか伝えられないんですよね。だから、勝さんのときも、勝さんが「おまえな、こうで、ああで…」と言ったわけではなく、「かかってこい」とやってくれたことによって、僕は「そういうことなんだ」と思えたし、だから僕も、鈴木に「かかってこい」とやったわけで。そういうことでしか、核心みたいなものは伝えられないんです。僕らは歌舞伎のような伝承芸ではないけど、「継承する」という意味では、僕らが先輩たちにやってもらったことを、今度は僕らがやって見せて、後輩に「やってみろ」とやるしかない。

-そうすると、大河ドラマには継承の場としての意義もあると?

 あると思います。あれだけ大掛かりな作品は、今、そうありませんから。たとえどんな役でも、学ぶことはたくさんあると思います。

-番組の中で、武士の“すね当て”の結び方を披露していましたが、あれも大河ドラマの現場で学んだことでしょうか。

 そうです。大河の小道具を手掛けている高津装飾美術という業者のよろいのオーソリティーの方にたたき込まれました。これが一番、ファンクショナブルで、美しくて、全体のシェイプもきれいになると教わり、「なるほど」と。単なるひもの結び方なので、どうってことないように思えるんですけど、その考え方が全体に関わってくるんです。演じ方にしても、いかに効率的で、シンプルで、美しく見えるか。そういう所作にも関わってくる。だから、僕はいまだにそれを踏襲していますし、僕が考える美学という意味では、それがベストだと思っています。

-そういうちょっとしたことでも、今はなかなか学ぶ機会がないと?

 今の若い俳優は、全部やってもらっちゃうんですけど、それだと身につかないんですよね。昔、『海と毒薬』(86)に出たとき、僕ら毎日、ゲートル(すねの部分に巻く布・革でできた被服)を巻く練習をさせられましたから。「何秒で巻けるか?」ってみんなで競争して。でもそれって、戦時中、学生たちがやっていたことと同じなんですよね。「役を作る」と型にはめるのではなく、そういうことを面白がって、その時代を生きることができるかどうか。そういうことが大事じゃないかと思うんです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】世界が揺らぐとき、人間は何をするのか…『DIGGER/ディガー』『ディスクロージャー・デイ』

映画2026年10月20日

『DIGGER/ディガー』(10月9日公開)  石油採掘会社のCEOとして君臨するディガー・ロックウェル(トム・クルーズ)の、利益しか考えない強欲な行動によって氷河に亀裂が生じ、地球規模の環境災害が発生する。コンプソン大統領(ジョン・グッド … 続きを読む

堂本光一演出「百鬼夜鏡」、「期待を超える作品を作っていけたら」川﨑皇輝×内村颯太×元木湧×北川拓実×安嶋秀生×松尾龍【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年10月20日

 堂本光一が構成・演出を務める舞台、EX THEATER ARIAKE OPENING LINEUP「百鬼夜鏡」が、11月3日からEXシアター有明で上演される。本作は、 “人ならざる力”を持ち、恐怖や災いを象徴する鬼と、室町時代にタイムスリ … 続きを読む

芦田愛菜、努力を続けるコツは「一度に大きく飛躍しようと頑張り過ぎない」【インタビュー】

ドラマ2026年10月19日

 芦田愛菜が主演するドラマ「南田南弁護士は天才肌」(カンテレ・フジテレビ系)が、10月19日22時からスタートする。世界的にヒットした韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」を日本版にリメイクした本作は、自閉スペクトラム症(ASD)の新人弁護 … 続きを読む

ドラマ「LOST10」脚本・奥寺佐渡子×監督・塚原あゆ子 横浜流星と小栗旬が演じるバディの魅力と制作の舞台裏を語る【インタビュー】

ドラマ2026年10月16日

 横浜流星が主演する金曜ドラマ「LOST10」が、16日22時からTBS系でスタートする。大河ドラマ以来の民放連続ドラマ出演となる横浜が、映画『国宝』の脚本家・奥寺佐渡子と再タッグ。「Nのために」「最愛」などを手掛けた塚原あゆ子監督、新井順 … 続きを読む

磯村勇斗「吉田監督の世界に入れることが楽しみでした」吉田恵輔監督「磯村くんは思考が自分に近い」初顔合わせの舞台裏『mentor』【インタビュー】

映画2026年10月15日

 かつて、花火遊びをきっかけにアパートを全焼させてしまった2人の少年、龍之介(磯村勇斗)と拓海(末澤誠也)が15年ぶりに再会。さらに、その火事で大火傷を負い、妻子を失った被害者・埜本(綾野剛)と交流する中で、2人は運命を狂わせていく…。   … 続きを読む

page top