中島裕翔くんのファンに、「こんな中島くんが…」と驚愕してもらいたい『#マンホール』熊切和嘉監督【インタビュー】

2023年2月9日 / 07:00

 結婚式前夜、なぜかマンホールに転落してしまった川村。外部に助けを求められるツールはスマホのみ。川村はSNSを駆使して、何とか脱出を試みるが、これは単なる事故ではなかった…。Hey! Say! JUMPの中島裕翔主演の『#マンホール』が2月10日から全国公開される。監督は、本格的ジャンル映画に初めて挑んだ熊切和嘉。熊切監督に、主演の中島について、ワンシチュエーションについて、また意識した映画などを聞いた。

熊切和嘉監督 (C)エンタメOVO

-映画化の経緯から教えてください。

 まず、(原案・脚本の)岡田(道尚)さんとプロデューサー陣とで1年ぐらいかけて作ったプロットを読ませていただいて、「こういうのに興味はある?」と聞かれました。最初は、今までやってきた映画とは全くタイプが違ったので、戸惑いがありましたが、よく読むと、話の転がし方が面白く、SNSの使い方も社会風刺になっていて、狭いけれど広がりのある話だったので、これは面白い映画になると思い、挑戦してみようと。その後、僕が参加して、何度か打ち合わせをしながら、脚本が出来上がっていった感じです。

-出来上がった脚本を読んだ感想は?

 とても面白いと思いました。僕が今まで撮ってきた映画とはタイプが違いましたから。実は、僕はSNSを全くやらないので、これは自分では絶対に書けないし、思いつかない話だと思いました。ちょっととぼけたようなコメントもあり、緩急の付け方がとてもうまいし、SNSの便利さと得体の知れなさ、匿名の怖さなどがよく出ていると思いました。

-この映画は、アイデアの良さが生かされたワンシチュエーションものですが、それに対する特別な思いはありましたか。

 面白いと思ったのは、すごく足かせが多い話だということでした。主人公のほぼ一人芝居で、彼は脚をけがしていて、しかも場所も限定されていて、あまり身動きも取れないという。今までやってきた芝居の作り方が通用しないというか、ただ芝居を撮るだけでは絶対に成立しないので、逆にやってみたいなと思いました。足かせが多いことで、ちょっと燃えるものがありました。

-これは、スマホやSNSがなければ成立しない話で、甚だ現代的だと思われますが、それは道具立てで、実はオーソドックスなスリラーやコメディの要素がちりばめられていると感じました。

 これまで、本格的なスリラーやサスペンスはやっていなかったので、それをやってみたかったということもありました。観客をうまくミスリードして、この時はこう思っているかなと予想をつけて語っていきながら、視線を誘導していくことなどに、挑戦してみたかったということはありました。ただ、ジャンル映画はもともと好きなのですが、ワンシチュエーションは結構大変だなと(笑)。もう撮りようがないかなと。結局、ジャンル映画でも芝居を撮っていくしかないなと思いました。

-主演の中島裕翔さんの印象は? 互いにディスカッションをしながら作り上げていった感じですか。

 川村は、どんどん追い込まれてもう一つの顔が見えてくるような役だったので、彼が生まれたときから、どう生きてきたのかという、細かい人物履歴を作って、事前に中島くんに渡しました。彼はそれを完璧に読み込んで、自分の記憶のようにしてくれました。それを踏まえた上で、穴の中のシーンは割と順撮りで行けたので、「ここはちょっと抑えていこう」とか、「ここはもうちょっと嫌な感じで」など、バランスを調整しながら、慎重に撮ることができました。

 中島くんも、最初は不安だったと思います。だからこそ、しっかりと準備をしたのだと思います。多分、彼も日頃の爽やかなイメージとは違った、汚れ役をやりたかったのではないかと(笑)。だから、全てこちらに委ねてくれました。例えば、元の彼女(奈緒)と最初に話したときに、「本当に探しているのか」と疑心暗鬼になるところも、「昔、DVをやっていたようなニュアンスを出せないかな。ねちっこく、嫌らしく」と言ったら、「やってみます」と。それであの芝居が出てきました。撮っていてすごく面白かったです。

-今回、あえて汚れ役に挑んだ中島さんを演出してみて、どう思いましたか。

 思っていた以上に、素晴らしいなと思いました。まさかここまでやってくれるとは思わなかったですけど(笑)…。ただ、本人も、好きな映画は『ミッドサマー』(19)と言っていましたので、もともとこういうタイプの映画は好きなんだと思います。本人は「監督に毒されています」と言っていましたけど。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

安田章大「体験したことのない違和感を持ち帰ってくれたら」 アングラ演劇の旗手・唐十郎作品に関西弁で挑む『アリババ』『愛の乞食』【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月18日

 2024年に亡くなったアングラ演劇の旗手・唐十郎の初期作品『アリババ』『愛の乞食』が、全編関西弁で、8月31日から9月21日にかけて世田谷パブリックシアターで二作連続上演される。現実と幻想、現在と過去が溶け合うふたつの物語は、叙情的に紡が … 続きを読む

【映画コラム】7月前半『スーパーマン』『ストレンジ・ダーリン』『「桐島です」』『生きがい IKIGAI』

映画2025年7月18日

『スーパーマン』(7月11日公開)  1938年に発行されたコミックに始まり、何度も映画化されてきたアメコミヒーローの原点をジェームズ・ガン監督が新たに映画化。  いきなり、戦いに敗れ、傷だらけになったスーパーマン(デビッド・コレンスウェッ … 続きを読む

俳優デビュー25周年の上戸彩が15年ぶりの写真集を発売 台湾で幻想的な夜市でのロケから寝起き姿まで多彩な魅力満載

イベント2025年7月14日

 俳優デビュー25周年を迎えた上戸彩の写真集『Midday Reverie(ミッドデイ・リヴァリー)』(宝島社)が、7月10日に発売された。発売記念イベントが、7月12日(土)に大阪で、そして7月13日(日)に東京・紀伊国屋書店 新宿本店で … 続きを読む

JT・モルナー監督「この映画の実現は厳しいと言われた時に、『羅生門』を見れば分かると言いました」『ストレンジ・ダーリン』【インタビュー】

映画2025年7月11日

 シリアルキラーの恐怖に包まれた街を舞台に、とある男女の出会いが予測不能な展開へと突き進んでいく様子を、時系列を巧みに交錯させた全6章の構成で描いたスリラー映画『ストレンジ・ダーリン』が7月11日から全国公開される。米映画批評サイトのロッテ … 続きを読む

鹿賀丈史「演じることよりも感じることの方が先だったかなと思います」『生きがい IKIGAI』【インタビュー】

映画2025年7月10日

 2024年の元旦に発生した地震で甚大な被害を受け、さらに8カ月後の豪雨によって2度目の災害に見舞われた能登で、ボランティア活動に参加した宮本亞門監督が、復興支援を目的に製作したショートフィルム北陸能登復興支援映画『生きがい IKIGAI』 … 続きを読む

Willfriends

page top