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松本潤「徳川家康は、戦国時代を生き延びた“か弱きプリンス”」 大河ドラマ「どうする家康」1月8日放送スタート!【「どうする家康」インタビュー】

 1月8日から放送がスタートするNHK大河ドラマ「どうする家康」。数々のヒット作を手掛け、今最も期待される脚本家の一人、古沢良太が、江戸幕府を開いた武将・徳川家康の生涯を新たな視点で描く物語だ。主人公・徳川家康を演じるのは、これが大河ドラマ初出演となる松本潤。放送開始を前に、本作における家康像や作品の見どころを語ってくれた。

徳川家康役の松本潤 (C)NHK

-昨年6月のクランクインから今まで、撮影を進めてきた感想を聞かせてください。

 いよいよ放送が近づいてきたなということを、ひしひしと感じています。その一方で、これまで経験したような連続ドラマであれば、長くても3カ月半から4カ月で撮影が終わるので、その時期をとっくに過ぎているのに、まだ放送が始まっていないのは不思議な感じもしますね。

-徳川家康を演じている今の気持ちは?

 家康公を演じる中で、毎回のように「どうする?」と決断を迫られ悩む日々です。一つ乗り越えたと思ったら、また一つ問題が起こり…ということの連続で、常に翻弄(ほんろう)されている感じです。唯一、対照的に穏やかなシーンを撮れるのが、徳川家臣団や妻の瀬名(有村架純)と一緒のときなので、今ではそれが日々の楽しみになっています。

-これまで、松本さんは徳川家康にどんなイメージを持っていましたか。

 僕がこれまでイメージしていた家康は、おそらく多くの視聴者の方と同じだと思います。やっぱり、年齢を重ねて江戸幕府を開いた頃の印象が強いので、「タヌキおやじ」と形容されるような“恰幅(かっぷく)のいいおじさん”で、ベテランの俳優の方々が演じるイメージがありました。

-松本さんが演じる今回の家康は、どんな人物でしょうか。

 今回、僕は“家康”を名乗る前の若い頃から演じているので、その印象とは明らかに違います。戦国時代、強国に挟まれた小国・三河は、日々「生きるか死ぬか」の選択の連続です。その中で家康は“か弱きプリンス”という一面がありながらも、一つ選択を誤れば死んでいたところを、運の良さも含めて生き延びることができた。その結果、長生きすることになり、だからこそ戦国時代に終止符を打ち、将軍として江戸幕府を開くことができた人だったんじゃないかと。演じている中で僕がイメージした今回の家康は、そんな人物です。

-江戸幕府を開いた家康の優れていると感じた点は?

 長生きしたことも家康の優れた点ですが、もう一つ優れていたのは、「なんでも自分でやろうとしなかった」ことではないでしょうか。いろんな課題や問題を周囲とシェアし、それぞれ得意な人に任せていくんですよね。つまり、家康は「誰がやるか」かが重要ではなく、「物ごとをいかに早く形にして、いかに成功させるか」に注力した人だったんじゃないかと。それが見方によっては、「タヌキおやじ」と呼ばれることにつながったのかもしれませんが。今後、そういうシーンがあるかどうか分かりませんが、江戸の町を切り開く際も、現地に行って地理を調べ、水路を引いて…という作業に適材適所の人間を配置できたことは、彼の才能の一つだったと思います。

-さらに今回の家康は、だいぶ親しみやすい人物になっているようですね。

 すごく素直ですよね。感情も豊かなので、自分のしてしまったことに対する後悔を、人前で素直に口にしてしまうところがチャーミングでもあり、駄目なところなのかなと(笑)。ただ、その駄目なところを、古沢さんがうまく切り取ろうとしてくれています。それが、生きるか死ぬかの厳しい戦国時代を生きる中で、ふっと笑えるシーンにつながっていたりもする。とはいえ、本人はいたって真面目にやっていることが、周りのリアクションで面白くなる、という感じなので、現場では僕は真面目に演じることを心掛け、笑いの部分は周りの人たちに預けようと思っています。

-家康に大きな影響を与える今川義元(野村萬斎)と織田信長(岡田准一)について教えてください。家康は彼らからどんな影響を受けて成長していくのでしょうか。

 家康は幼い頃、今川家で人質として育ちましたが、義元公にはとてもかわいがってもらっていました。というのも、年齢が近い今川家の嫡男・氏真(溝端淳平)が当主になった時、それを支える家臣になるため、義元公から教育をしっかり受けさせてもらっているんです。第1回では桶狭間の戦いが描かれますが、義元公亡き後も、その教えは家康の中で大切なものとして、ことあるごとに思い出していくことになります。そして、ゆくゆくは家康の人格形成に影響を与えていくことにもなります。

-信長はいかがでしょうか。

 信長は、「こういう人が強くなるんだろうな」、「こういう生き方をしなきゃいけないんだろうな」という、家康にとってある種の恐れや憧れの対象です。ただ、家康自身には信長のような考えはないので、「自分はああいう人にはなれない」という思いを抱きながら、彼を見続けていくことになると思います。

-なるほど。

 特に、若い頃の家康は受け身の傾向が強く、「周りがこうだから、同じようにしておこう」と周囲の言動に影響を受けやすいのですが、その一番重要なポジションにいるのが信長です。そこから少しずつ、家臣や身近な人たちからも影響を受け、「自分はどう思う」というふうに考え方が変わっていく。そういう意味では、信長は家康にとって、“目の上のたんこぶ”のような、頭が上がらない相手というイメージです。

-毎回のよう難題に直面すると「どうなる家康!?」と視聴者が心配しそうですが、そんな“か弱きプリンス”家康を支えるのが徳川家臣団ですね。

 家臣団の皆さんとは、現場で会うのがすごく楽しみです。みんながそろう日は、それだけでちょっとワクワクしますね(笑)。実は今回、クランクインが愛知で、泊まりがけの撮影だったので、みんなで食事に行くなど、早い時期からコミュニケーションを取ることができたんです。おかげで、あっという間に深い関係を作ることができました。

-家臣団のチームワークも見どころになりそうですね。

 ある時、みんなで心理テストをやってみたら、戦略的な人や肉体派の人など、いろんなタイプの人がバランスよくそろっていたんです。それはプロデューサーのキャスティングの妙だなと感じました(笑)。年齢的にも、最年長のイッセー尾形(鳥居忠吉役)さん、その次の松重豊(石川和正役)さん…とだいぶ幅広いんですけど、変に気を使うことなく、芝居に対してみんなが言いたいことを言い合える環境も出来上がっています。それは、先輩方がそういう空気を容認して、支えてくださっているおかげだと思っています。おかげで日々、心強い仲間と撮影に臨むことができています。

(取材・文/井上健一)

 

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