眞島秀和&吉高由里子、作品作りは「出産と似たような感覚。痛みよりも喜びや感動の方が勝る」【インタビュー】

2022年10月6日 / 08:00

 眞島秀和と吉高由里子が出演する、M&Oplaysプロデュース「クランク・イン!」が10月7日から上演される。本作は、ある映画監督の妻と、その監督の愛人だった女優という、かつて一人の男をめぐって憎み合った2人が、時を経て共感とも友情とも取れる感情を抱いていくさまをつづった舞台「そして春になった」を下敷きに、映画製作の現場を舞台に繰り広げる悲喜劇。作・演出を岩松了が手掛ける。映画監督役の眞島と、女優ジュン役の吉高に舞台に挑む思いを聞いた。

吉高由里子(ヘアメーク:RYO/スタイリスト:藤本大輔(tas)、左)、眞島秀和(ヘアメーク:渕直志(kief)/スタイリスト:momo) (C)エンタメOVO

-岩松作品には初参加となりますが、出演が決まったときの心境を聞かせてください。

眞島 岩松さんとはこれまで役者として共演することが多かったので、演出家としての岩松さんとお仕事ができるのはすごく楽しみです。ただ、岩松さんの演出は厳しいと、いろいろな役者から聞いているので、緊張もしています。

吉高 私も岩松さんとは俳優としては共演経験があるのですが、演出家としては初めてなので、本当に始まるのかなって、フワフワした気持ちです。(取材当時は)まだ実感がありませんが、今後、稽古が始まったら、部活のような日々が来るのかなと楽しみでもあります。

-岩松作品の魅力を、どんなところに感じていますか。

眞島 この作品に限らずですが、人間の本性や人間の汚い部分もきちんと描いているという印象があります。一つ一つのせりふもすごく計算されているので、岩松さんはこれをどう作っていらっしゃるのだろうと思います。

吉高 私は岩松さんは「言葉の人」だと思っています。その一言で、一気に風呂敷が広げられて、物語が進んでいくのを感じますし、一つの言葉の揚げ足をどれだけ伸ばせるかを考えて作られているんだと感じました。そんな作品を作れるので、岩松さんはきっと意地悪な人だと思います(笑)。

-吉高さんは、本作が3度目の舞台出演になりますが、今回、舞台に出演しようと思ったのは、どういう理由からだったのですか。

吉高 マネジャーさんの方針なんだと思います(笑)。舞台は毎日稽古をして、せりふの意味を掘り返す時間が作れるので、そうした勉強ができる場所でもあり、それを学ぶいい機会になるのかなと思います。

-吉高さんにとって、舞台に立つとはどんなことですか。

吉高 緊張しますし、うれしいことも寂しいこともある場所です。私は、映像のお仕事が多いので、舞台に出演することで、失敗したときに、自分を持ち直すメンタル強化の場でもあると思います。

-うれしいことや寂しいこととは?

吉高 うれしいことは、見てくださる方の高揚している顔や感情がしっかりと伝わってくることです。前回出演した作品でも、お客さまが、わざわざチケットを取って、仕事を休んだり予定を立てたりして、足を運んで見てくださっているということを実感できたのはうれしいことでした。ですが、公演中に寝ている方を目の前で見ると寂しくなります(笑)。舞台は、そうした寂しい気持ちも力に変える訓練なんだろうなとは思いますが。

-眞島さんにとっては舞台に立つことにどういう意味がありますか。

眞島 役者をやっている上で、一番純度の高い仕事だなと思います。お客さまにライブで見ていただくというすごくシンプルな空間なので、ある意味、修行の場だとも思います。やはり、お客さまの前で演じるためには稽古期間が大事ですし、メンタルも鍛えられます。

-「クランク・イン!」という本作のタイトルにちなんで、お二人がクランクイン前や初日前にするルーティーンを教えてください。

眞島 ルーティーンは特にないですが、映像の場合は、撮影が始まる前日は、ほぼ眠れず、徹夜でいくというパターンが多いです。

-それは緊張から?

眞島 緊張ではないと思うんですが、何なんでしょうね(笑)。自分でも分かりませんが、結局、眠れないんです。

吉高 私も同じです。クランクイン前は、すごくナーバスになります。何をしていても「どうしよう」と考えてしまうし、気持ち悪くもなる。始まってしまったら、もう止まることはできないので、ゴールを目指して頑張るしかないと切り替えられるんですが。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top