「原作を読み始めたときから、岡田准一ありきという感じでした」 セクシーな男同士の三角関係劇 映画『ヘルドッグス』原田眞人監督【インタビュー】

2022年9月12日 / 07:00

-兼高と室岡が「黒澤と小津」は「小津」、『アラビアのロレンス』と『ワイルドバンチ』は『ロレンス』などと、好きな映画について話す場面も面白かったです。

 殺し屋のコンビが、「AとBのどっちがいい?」という会話をずっとしていくというのは、昔書いた脚本の中にあったのですが、それは映画化していなかったので、今回使ってみようと。それで、リハーサルのときに「何でもいいから二者択一で聞いてみて。答えは自由だから」と。「黒澤と小津」は、健太郎が自分で考えたんだと思います。ほかも現場でやり取りをしていく中で出てきた言葉です。

-例えば、『ゴッドファーザー』(72)もそうでしたが、この映画も、主人公が悪事を働いているのに、不思議と引きつけられてしまうところがありました。

 そうなんです。『ゴッドファーザー』の世界観なんです。あの中のファミリーとしての部分の。法で定められた正義か悪かということではなくて。なので、今回は、原作に比べると警察側の描写を薄くしました。それは、やくざたちの濃密な関係を強く前面に出しかったからです。

-また、悪人なのに感情移入をして、悪事がうまくいってほしいと思ってしまうところもありました。

 そういうふうにして見てもらえるのが、一番の理想です。ある意味、やくざの中の倫理観があって、その線に沿ってのいいやつ、悪いやつということですから。

-最後に、この映画の見どころをお願いします。

 僕自身が一番好きなのはリングのシーンです。あれは見た時にかなりのインパクトがあると思うので、予告編などには出さないようにと言ってあります。実はそういう伏せ札みたいなところが見どころなので、あまり話すわけにはいきませんが(笑)。例えば、室岡はサイコパスですが、少しアングルを変えて見ると、普通の青年みたいなところもあります。でも、根底は違っていて、仲間とトランプをやりながら、一人一人を見るときに、「どうやって殺してやろうか」と考えているような目をしている。そういうものをまなざしに込めてくれと言ったら、健太郎がうまくやってくれました。そうした虚と実みたいな、際どい一線がこの映画の面白さだと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2022「ヘルドッグス」製作委員会

 

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことが嬉しい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

-それが変わってきたということでしょうか。  物事は、ある程度加速がつき、歯車がスムーズに回り始めれば、少ないエネルギーで進んでいくようになりますが、スタートするときは膨大なエネルギーが必要です。この作品もそういう過程を経て、ようやく彼が笑 … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

-30年間やってきて、栗田さんなりのルパンに対する思いや魅力について。また栗田さんにとってルパンとはどういう存在でしょうか。  やっぱりルパン三世の声は、パート2や『ルパン三世 カリオストロの城』(79)の頃の、山田さんが一番元気だった頃の … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

-三池崇史監督の演出や映画に対する姿勢についてはどう感じましたか。 大倉 あまり無駄なことはおっしゃらないです。すごく明確な演出をなさいます。僕の場合は、校長と薮下先生との間に挟まれているという、スタンスにちょっとよどみがあったのかもしれな … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『アスファルト・シティ』(6月27日公開)  犯罪と暴力が横行するニューヨークのハーレム。クロス(タイ・シェリダン)は医学部への入学を目指し勉学に励む一方で救急救命隊員として働き始める。  ベテラン隊員のラット(ショーン・ペン)とバディを組 … 続きを読む

桐山照史「ジュリエットは時生でなければできない」 柄本時生、「見ていいよ」の言葉で「女子になれた」 「泣くロミオと怒るジュリエット2025」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年6月25日

-5年前の初演が初共演でしたが、お互いの印象は? 桐山 同じ事務所の人たちでも同級生が少ないんですよ。なので、ようやく同い年の役者さんとご一緒できるとすごくうれしかった記憶があります。初演が終わってからはそれほど頻繁に連絡を取っていたわけで … 続きを読む

Willfriends

page top