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殺し屋のコンビが、「AとBのどっちがいい?」という会話をずっとしていくというのは、昔書いた脚本の中にあったのですが、それは映画化していなかったので、今回使ってみようと。それで、リハーサルのときに「何でもいいから二者択一で聞いてみて。答えは自由だから」と。「黒澤と小津」は、健太郎が自分で考えたんだと思います。ほかも現場でやり取りをしていく中で出てきた言葉です。
そうなんです。『ゴッドファーザー』の世界観なんです。あの中のファミリーとしての部分の。法で定められた正義か悪かということではなくて。なので、今回は、原作に比べると警察側の描写を薄くしました。それは、やくざたちの濃密な関係を強く前面に出しかったからです。
そういうふうにして見てもらえるのが、一番の理想です。ある意味、やくざの中の倫理観があって、その線に沿ってのいいやつ、悪いやつということですから。
僕自身が一番好きなのはリングのシーンです。あれは見た時にかなりのインパクトがあると思うので、予告編などには出さないようにと言ってあります。実はそういう伏せ札みたいなところが見どころなので、あまり話すわけにはいきませんが(笑)。例えば、室岡はサイコパスですが、少しアングルを変えて見ると、普通の青年みたいなところもあります。でも、根底は違っていて、仲間とトランプをやりながら、一人一人を見るときに、「どうやって殺してやろうか」と考えているような目をしている。そういうものをまなざしに込めてくれと言ったら、健太郎がうまくやってくれました。そうした虚と実みたいな、際どい一線がこの映画の面白さだと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)
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