蓮佛美沙子「松田龍平さんに引っ張られて、芝居が変わっていった」一人二役で挑んだパニック・スリラーの舞台裏 「連続ドラマW 鵜頭川村事件」【インタビュー】

2022年8月26日 / 12:00

 失踪した妻・仁美の行方を捜して、仁美の故郷・鵜頭川村を訪れた岩森明。だがそこは、血縁や世代間の不毛な争いが続き、絶望に支配された土地だった。その夜、大嵐に襲われた村は周囲との連絡が途絶し、完全に孤立する。そこに起こる連続殺人。仁美の双子の妹・有美と出会った岩森も、事件に巻き込まれていくが…。

 櫛木理宇の同名小説を原作にしたWOWOW初のパニック・スリラー「連続ドラマW 鵜頭川村事件」が8月28日に放送・配信スタートとなる。『AI崩壊』(20)の入江悠監督と主演の松田龍平がタッグを組んだ本作で、主人公・岩森の妻・仁美とその双子の妹・有美の二役を演じたのが、蓮佛美沙子。一人二役で挑んだ撮影の舞台裏を聞いた。

蓮佛美沙子(ヘアメーク:SAKURA(makiura office)/スタイリング:Ami Michihata) (C)エンタメOVO

-謎と殺人事件が積み重なっていく息詰まる物語の中、蓮佛さんが演じた仁美と有美の空気感が全く異なるのに驚きました。二役の演じ分けは、どの程度意識したのでしょうか。

 「双子だから演じ分けよう」みたいなことは一切考えていませんでした。基本的に、一人で一役をやるときも、撮影に入る前にその人を掘り下げていく作業をします。台本に書かれていないその人のバックボーンや歩んできた人生を脳内で全部作り上げる、みたいなことですね。今までも経験はありますが、一人二役の場合、その作業が×2になる感じです。そんなふうに個人個人を掘り下げていき、結果的にそれが違いとして見えたらいいのかな、と。

-では、有美と仁美を、それぞれどんな女性だと捉えましたか。

 足にハンディキャップを抱えている有美は、幼い頃から姉と比較され、それが当たり前の環境で育ってきた女性です。イメージとしては、モノクロの世界で生きてきたような感じ。見るもの全てが灰色で、そこには希望もなければ絶望もなく、それが普通、みたいな価値観で生きてきた女性なのかなと。逆に仁美は、本来はすごく明るくて普通の女性だったと思うんですけど、ある出来事をきっかけに人生が180度変わってしまった。そんな印象です。

-対照的な役なので、現場で有美と仁美を切り替えるのは難しそうですね。

 それは大丈夫でした。私は役を掘り下げてから現場に入って、現場で全部忘れようというタイプなので、「5分後に仁美で」、「5分後に有美で」と言われても「一回、魂を入れているから大丈夫」みたいな。ちょっと変な言い方かもしれませんが(笑)。

-それぞれの役を掘り下げた結果、ご自身の中に定着したものを、その場に応じて「このときは有美」、「このときは仁美」と、引き出しから取り出すような感じでしょうか。

 そうですね。「召喚する」みたいなイメージで(笑)。

-そこまで掘り下げた役を「現場では忘れる」というのは?

 現場では、監督も相手の役者さんもそれぞれの考えがあるので、それに柔軟に対応できるようにしておきたくて。もちろん、台本を読んだ際に、「ここはこうなるんだろうな」と想像はします。でも、それをガチガチに固めて、新しいものが生み出されるのを阻害してしまうのはもったいないと思うんです。私自身も常日頃から「自分はこういう人」と意識して生きているわけではありませんし。だから、一回入れ込んでしまった後は忘れて、素でその人になれるようにと。すごく概念的な話ですけど、どの作品も同じ気持ちでやっています。

-蓮佛さんのお芝居に対する考え方がよく分かりました。ところで、仁美も有美も、松田龍平さん演じる岩森と深く関わる女性です。劇中では、有美として接する場面が多かったと思いますが、松田さんのお芝居に影響を受けたところもあるのでしょうか。

 龍平さんとは初めてご一緒させていただきましたが、これまでの作品を拝見して、唯一無二の空気感や、誰もまねできない立ち居振る舞い、カメラの前でのお芝居まで含めて、すごくすてきだなと思っていました。ただ、今まで龍平さんには、感情をあらわにする印象があまりなかったんです。でも今回は中盤以降、怒鳴ったり叫んだりするシーンが結構あって、それが私にとっては新鮮でした。それに引っ張られて、私の芝居が変わっていった部分はあります。やっぱり、台本から想像したのと違うものに現場で出会えたときって、相手が誰であっても楽しいし、そこに乗っかりたいですから。

-逆に、仁美として接する場合はいかがでしたか。

 仁美としてご一緒するシーンは少なかったんですけど、有美のときとは明らかに違いました。ハッピーなシーンはほぼなかったんですけど、それでもやっぱり夫婦として体温を近くに感じる部分はあって。だから、楽しいシーンがもっとあってほしかったです(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

木戸大聖「悲しいと思っていてもそれを表情に出せないのが難しかったです」『沖晴くんの涙を殺して』【インタビュー】

映画2026年10月1日

 余命1年の音楽教師・京香(広瀬アリス)と、喜び以外の感情を失った高校生・沖晴が織りなす、切なくも温かい感動の人生賛歌『沖晴くんの涙を殺して』が10月2日から全国公開される。本作で、訳あり高校生の沖晴を演じた木戸大聖に話を聞いた。 -沖晴の … 続きを読む

小瀧望「ファンの皆さまの声に応え続けたい」 舞台「ロックンロール」では「僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月30日

 小瀧望が主演する舞台「ロックンロール」が、11月6日から上演される。本作は、世界的な劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロバキアを舞台に、20年以上にわたる歴史のうねりを描きながら、自由の尊さをうたう物語。愛するロックンロールと母親を守 … 続きを読む

佐津川愛美「酒井監督に惚れました(笑)」念願だった酒井麻衣監督との初タッグ『時給三〇〇円の死神』【インタビュー】

映画2026年9月30日

 10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#受験競争だけではない韓国の教育問題、「鉄槌教師」が問う教師の役割

2026年9月29日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

鈴鹿央士「絶対に映画館で見て損はさせない映画になっています」『藁にもすがる獣たち』【インタビュー】

映画2026年9月29日

 出会うはずのなかった登場人物たちが、1億円をきっかけに複雑に絡み合いながら“金の獣”と化していく数奇な運命を描いた、曽根圭介の同名小説を城定秀夫監督が実写映画化した『藁にもすがる獣たち』が全国公開中。本作で、主人公のチャンネル登録者数“2 … 続きを読む

page top