のん「『男か女かはどっちでもいい』という貼り紙を見て、純粋にお魚が好きなミー坊を演じればいいんだと思いました」 磯村勇斗「日常的に魚をさばいたりするのが好きになりました」 『さかなのこ』【インタビュー】

2022年8月29日 / 07:00

 魚類に関する豊富な知識で学者としてさまざまなメディアでも活躍するさかなクンの半生を、沖田修一監督が映画化した『さかなのこ』が9月1日から公開される。主人公のミー坊を演じたのんと、ミー坊との絆を深める不良の総長を演じた磯村勇斗に話を聞いた。

(C)2022「さかなのこ」製作委員会

-今回、さかなクンという、個性の強い男性で実在の人物を演じる上で、何か意識したことはありましたか。

のん まず、本読みに行ったときに、ホワイトボードに、沖田(修一)監督の直筆で、「男か女かはどっちでもいい」という貼り紙があったので、それを見て、「あー、どっちでもいいんだ」とビビッときて、純粋にお魚が好きなミー坊を演じればいいんだと思いました。ただ、さかなクンのことはすごく研究しました。YouTubeの「さかなクンちゃんねる」を見て、喜んだときやショックを受けたときは、どんな感じになるんだろうとか。あとは、「TVチャンピオン」のときの、学生服を着た姿も研究しました。今と全然雰囲気が違って、どちらかというと、テンションが暗めで、静かな青年みたいな感じで、喜んだときだけ、拳を突き上げて喜んでいて、そこはさかなクンだなと。その要素を少し入れたいと思いました。映画ではその雰囲気よりも少し明るめに演じています。

-磯村さんは、ヤンキーだけど、怖くない、気のいい総長の役でした。

磯村 総長で不良なんですが、やっぱり沖田監督の世界観で、決して悪い人ではないので、見る人から愛されるような、愛くるしい不良を演じられたらいいなということはすごく考えました。プラス、不良に成り切れない、中途半端な総長ができれば、面白くなるのかなというところは意識しました。

-最初に脚本を読んだときは、どう思いましたか。

のん 面白かったですし、衝撃的でした。ファンタジー風味で描くところがさすがだなと思いました。さかなクンをこういうふうに解釈して、映画として描くのかと思うと楽しかったし、これを沖田監督が撮ったらと想像すると、ドキドキワクワクして、ぜひやりたいという気持ちでいっぱいになりました。もともと沖田監督のファンだったので、沖田組に参加できることを幸せだと思いました。

磯村 最初に読んだときに、とても心が温まる脚本だなと思いました。この映画は、会話劇的なところもあるんですが、みんなが愛を持って言葉を発しているという印象を持ちました。それに加えて、クスっと笑えるようなところもあるんですが、それが、笑いを狙っているのではなく、何か沖田監督らしさというか、小さな笑みみたいなものが、たくさん脚本上にあったので、読みながら、笑いながら、「あー、いい台本だな」と、つい口にしてしまうようなところがありました。脚本の段階ですてきだなと思いました。

-男性のさかなクンを女性ののんさんが演じることは、この映画のテーマの一つである「男か女かはどっちでもいい」にもつながると思いますが、実際に演じてみていかがでしたか。

のん もう最高でした。すごく幸せな現場でした。沖田監督の集中力がすさまじくて、映画のことしか考えていないから、のんのことなんて見えていなくて、(そこにいるのは)ミー坊なんだ、と(笑)。それぐらい映画にどっぷり漬かっている方なので、その空気がみんなに伝わってくるような、役者にとってはすごく幸せな現場でした。

 磯村さんもそうですけど、みんな、私がミー坊をやっていることに、何の疑問も持っていないという感触がありました。だから、自分も現場に入ったときに違和感なくやれました。例えば、ミー坊が釣りをしているところに、不良たちがバイクと自転車で来るシーンがあって、撮影の合間で不良チームが宣材用の写真を撮っていて、「いいなあ」と思いながら見ていたら、磯村さんが「ミー坊も来なよ」って声を掛けてくれて。磯村さんからはミー坊にしか見えていないんだと自信がつきました。

-総長が久しぶりにミー坊に会ったときに「変わんねえなあ、おまえ」と言いますが、あれは、ある意味ミー坊に対する憧れの言葉とも取れると思いましたが、いかがでしょうか。

磯村 それも一つの解釈としてあるでしょうね。何といっても、学生時代から変わらず、魚をいちずに愛しているというミー坊の姿が、総長には輝いて見えたのでしょうし、それをとてもいとおしく感じた瞬間だったと思います。みんなが、大人になって変わっていく中で、変わらずに魚が好きで、それを突き詰めているミー坊の姿は、とてもすてきだと思いました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことが嬉しい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)  かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む

桐山照史「ジュリエットは時生でなければできない」 柄本時生、「見ていいよ」の言葉で「女子になれた」 「泣くロミオと怒るジュリエット2025」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年6月25日

 WEST.の桐山照史がロミオ、柄本時生がジュリエットを務める、Bunkamura Production 2025「泣くロミオと怒るジュリエット2025」が7月6日から上演される。本作は、映画『愛を乞うひと』の脚本などでも知られる劇作家・演 … 続きを読む

Willfriends

page top