中村勘九郎、8歳の子ども役に苦戦 息子たちを見て役作り【インタビュー】

2022年6月7日 / 18:00

 歌舞伎俳優として積極的に活動しながらも、NHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」では主人公の一人・金栗四三を演じて話題を呼ぶなど、幅広い活動を見せる中村勘九郎。6月8日から上演されるスペクタクルリーディング「バイオーム」では、8歳の男の子と女の子という二役を演じる。本作は、宝塚歌劇団で数多くの名作を生み出してきた上田久美子が、退団後、初めて書き下ろした朗読劇で、勘九郎のほか、花總まり、古川雄大など豪華なキャストが一人二役を演じる。開幕に向け、日々、稽古に励む勘九郎に、本作への意気込みを聞いた。

中村勘九郎

-「五感を揺さぶる朗読劇」というキャッチフレーズがついた本作ですが、勘九郎さんはこの作品の話を聞いて、まずどんなことを感じましたか。

 僕が8歳の男の子と女の子を演じると伺ってから、脚本を読んだのですが、率直なところ、これをどうやって舞台にするのだろうと思いました(笑)。朗読劇の枠を超えた壮大な物語を、豪華なキャストの皆さんが演じることで、どう変化していくのかというワクワクももちろんありましたが、最初は不安が大きかったです。

-8歳の男の子と女の子、ルイとケイを演じるというのは、かなり難しい芝居になるのでは?

 日々、苦戦しております。ルイとケイが2人で話すシーンが多いので、稽古中は孤独を感じることもありますし、果たしてこれでいいのだろうかと不安にもなります。芝居は、相手とのキャッチボールで成り立っていますが、今回は、自分で球を投げて、自分で受け止めて、自分で組み立てていかなければいけないので、難しいですね。

-役を作る上では、8歳らしさを出すために、自分の幼い頃を思い出したりもしているのですか。

 自分の8歳の頃を思い出すというよりは、家にいる2人の息子たちを見て勉強しています。どんなことにも真剣な様子や、話を聞いてほしいときの目の輝きや声というのはとても参考になります。

-男の子と女の子を演じ分けるという点では、どんなことを意識しているのですか。

 やはり声を変えないと分かりづらいとは思うので、少しずつ変えてはいるのですが、実際には8歳ですと、男の子も女の子もそれほど声に違いはない気がするんです。なので、微妙なラインを模索しているところです。あとは、ステージングを付けてくださっている先生に、体の使い方を教えていただきながら役を作っていっています。

-今、ステージングという言葉ありましたが、朗読劇とはいえ、ただ本を持って読むということではないんですね。

 そうなんですよ。なので、どうなるか、見に来てください(笑)。

-“スペクタクル”“五感を揺さぶる”というのは、どのような点が?

 この作品は、ある大臣の、威厳のある裕福なお屋敷の庭で起こる物語ですが、人間界と植物界が二重構造になって描かれています。ルイはその庭で、植物たちの声を聞きますが、お客さまには、ルイと同じように「植物たちの声を聞く」という体感を味わっていただけると思います。それから、舞台にはストリングカーテンという、糸状のカーテンがかかっていて、そこにプロジェクションマッピングが投影されるので、とても幻想的な空間が広がっています。一方で、人間界ではとても生々しく、崩壊していく一族の姿が描かれていくので、その対比も味わえるのではないかと思います。バンドの生演奏も入るので、壮大な作品に仕上がるのではないかと感じています。

-ところで、勘九郎さん自身は8歳の頃は、どんな子どもでしたか。

 8歳というと、初めて歌舞伎座の広い空間で1人で踊りを踊らせてもらった頃です。そのときが、自覚を持って演じ、踊る最初のステージだったので、役者として目覚めた瞬間だったと思います。普段は、授業中もずっと寝ているような、本当に不真面目な子でした(笑)。

 
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