【インタビュー】映画『マイスモールランド』奥平大兼「こういう問題があると知っていただき、状況が少しでも改善されるきっかけになれば」難民申請が不認定となるクルド人の少女と心を通わせる高校生役に込めた思いとは

2022年5月2日 / 08:00

 昨今、世界中で注目を集める“難民”の問題。幼い頃、故郷を逃れたクルド人の家族と共に来日し、日本の高校に通う17歳の少女サーリャ(嵐莉奈)の目を通して、難民問題をベースに日本の現状を映し出した意欲作『マイスモールランド』が5月6日から全国公開となる。是枝裕和監督率いる映像製作者集団“分福”の新鋭・川和田恵真が商業映画初監督を務める本作で、サーリャと心を通わせる高校生・聡太を演じたのは、鮮烈なデビュー作『MOTHER マザー』(20)で数々の映画賞に輝いた注目の若手俳優・奥平大兼。2年ぶりの映画出演となる本作の舞台裏、役に込めた思いなどを聞いた。

聡太役の奥平大兼 (C)エンタメOVO

-『MOTHER マザー』以来2年ぶりの映画出演となりますが、出演が決まったときの気持ちを聞かせてください。

 僕は映画で俳優としてスタートしたので、気持ち的には「帰ってきた」という感じで「頑張ろう!」と気合が入りました。この2年、映画の現場がずっと恋しかったので、「戻ってこられた」という思いも強かったです。

-そういう2年越しの思いがかなったこの映画では、「難民」という難しい問題とどのように向き合ったのでしょうか。

 クランクインするまではあえて何も調べず、役作りもしないようにしていたので、「クルド人」という言葉以外は一切知りませんでした。実は監督の意向で、莉菜さんの家族(劇中でサーリャの家族を演じているのは、実際の嵐の家族)に会ったのも、現場が初めてだったんです。クルド人や難民を巡る細かい事情については、現場で初めて触れる方がいいのかなと。撮影が進む中で、聡太と一緒に知っていった感じです。

-当然、台本は読んでいたわけですよね?

 読みました。でも僕は、台本を自分のパート以外は読まないんです。結末を知っておかないと都合が悪い場合はさっと読みますが、基本的には自分のせりふだけを覚えるようにしています。相手のせりふは知らないまま、情報もないまま、撮影のときに初めて聞いて反応するというやり方をしています。ただ、それはこの現場に限ったことでなく、他の現場でもほぼ同じです。

-川和田監督からは芝居について、どんな指示がありましたか。

 役について、「こうしてほしい」という話はなく、「自由にやってもらって構いません。せりふも好きに変えてもらって大丈夫」と言ってくださったので、現場で感じたまま演じさせていただきました。

-難しい問題を扱った物語の中、サーリャと聡太の交流は希望にあふれた青春映画のような雰囲気で描かれ、そういう奥平さんの芝居も効果を上げています。2人が交流する場面の芝居は、どのようにして生まれたのでしょうか。

 監督からは「聡太はサーリャにとって楽しい時間を一緒に過ごす相手で、映像的にも聡太との時間は楽しくしたい」と言われていました。だからと言って、無理に楽しくするのも違うので、僕はシンプルに、サーリャを喜ばせることと、自分が楽しむことだけを心掛けました。その方がサーリャも素直に反応できるんじゃないかなと思ったので。

-サーリャ役の嵐さんはこの映画が俳優デビュー作となりますが、芝居について2人で相談することはあったのでしょうか。

 お芝居の話はしないようにしました。僕も莉菜さんと同じように、お芝居の経験が全くないまま『MOTHER マザー』でデビューしたので、気持ちは少し分かるんです。他の役者さんから、お芝居について「こうしてみたら」と言われても、どうしたらいいのか分からないし、やれる自信もなかったですし。

-そうすると、嵐さんとは現場でどんなふうに過ごしていたのでしょうか。

 本人は何も言っていませんでしたが、初めてのお芝居で主演を務め、サーリャという大変な役を演じるのは、ものすごいプレッシャーだったと思うんです。だから、莉菜さんがお芝居をしやすいようにしてあげられたら…とは思っていました。とはいえ、僕もまだ2年目で、他人にアドバイスができる立場でもないので、せめてカメラが回ってないときは楽しく過ごそうと、服や音楽の話で盛り上がっていました。それこそ、「ここは本当に撮影現場なのか?」というぐらいの勢いで(笑)。

-現場の雰囲気はいかがでしたか。

 川和田監督も初めての商業映画ということで、最初に「皆さんと一緒に作っていきたい」とおっしゃっていましたが、とてもアットホームな現場で、居心地はすごくよかったです。莉菜さんも楽しそうでしたし、みんなで模索している感じがあって、「一緒にものを作っている」という手応えがすごくありました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

川口春奈、高杉真宙「自分や家族、周りの人たちを大事にしようと思うきっかけになったらうれしいです」『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』【インタビュー】

映画2026年10月1日

 大腸がんによって24歳で他界した遠藤和(のどか)さんが亡くなる10日前までつづり続けた手記を映画化した『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が、10月2日から全国公開される。本作で、主人公の和と夫の将一を演じた、川口春奈と高杉真 … 続きを読む

木戸大聖「悲しいと思っていてもそれを表情に出せないのが難しかったです」『沖晴くんの涙を殺して』【インタビュー】

映画2026年10月1日

 余命1年の音楽教師・京香(広瀬アリス)と、喜び以外の感情を失った高校生・沖晴が織りなす、切なくも温かい感動の人生賛歌『沖晴くんの涙を殺して』が10月2日から全国公開される。本作で、訳あり高校生の沖晴を演じた木戸大聖に話を聞いた。 -沖晴の … 続きを読む

小瀧望「ファンの皆さまの声に応え続けたい」 舞台「ロックンロール」では「僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月30日

 小瀧望が主演する舞台「ロックンロール」が、11月6日から上演される。本作は、世界的な劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロバキアを舞台に、20年以上にわたる歴史のうねりを描きながら、自由の尊さをうたう物語。愛するロックンロールと母親を守 … 続きを読む

佐津川愛美「酒井監督に惚れました(笑)」念願だった酒井麻衣監督との初タッグ『時給三〇〇円の死神』【インタビュー】

映画2026年9月30日

 10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#受験競争だけではない韓国の教育問題、「鉄槌教師」が問う教師の役割

2026年9月29日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

page top