【インタビュー】舞台「奇蹟」井上小百合「私も舞台に立ってみたい」を実現 乃木坂46を卒業し、俳優業にまい進

2022年3月5日 / 08:00

 井上芳雄が主演する舞台「奇蹟 miracle one-way ticket」が、都内・世田谷パブリックシアターで上演される。本作は、劇作家・北村想が書き下ろした新作舞台。記憶を失くした名探偵とその相棒が、どこからか届いた謎の依頼を受けて、深い森へと出向いていく。本作で、謎の女性・マリモを演じるのは井上小百合。井上は、2020年に乃木坂46を卒業後、本作の企画・製作も行っている芸能事務所シス・カンパニーに移籍し、俳優として本格的に活動をスタートした。本作は、井上にとって念願のシス・カンパニー制作舞台への出演となる。井上に稽古を通して感じたことや、本作への意気込み、さらには俳優業への思いを聞いた。

井上小百合 (ヘアメーク:奥山信次(barrel)/スタイリング:中川原有(CaNN)

-シス・カンパニー制作の舞台に出ることが夢だったと聞きました。それだけに出演が決まったときはとてもうれしかったのではないですか。

 夢のようでした。今でも夢を見ているんじゃないかなと思っているほどです(笑)。ですが、うれしかったのと同時に、シス・カンパニーに所属している役者として、この公演に出演するということで、「新しい子が(事務所に)入ったみたいだけど、微妙だったね」と思われてしまったら、先輩たちに申し訳ないと思うので…。なので、今(取材当時)は、うれしい気持ちとプレッシャーとを両方抱えながら、毎日を大切に過ごそうと思って稽古に臨んでいます。

-稽古では、手応えを感じていますか。

 最初に台本を読んだときは、小説のように楽しく読み進めることができる作品だと思ったのですが、逆にいってしまえば、それはすでに台本だけで完成しているようにも感じました。なので、これを役者がどう演じれば舞台としてやる意義があるのだろうということはすごく悩みました。さまざまな解釈ができる物語で、それがこの作品の面白さでもあると思うのですが、役者が舞台に立って演じると、ニュアンスが違ってしまうのではないかという懸念もあって…。それぞれの価値観と解釈で表現していくのもいいのかもしれませんが、そうすると謎が謎を呼んでしまうので、今は、道筋を立ててやろうと、カンパニー一丸となって進めています。

-台本を読んで小説のように楽しいということでしたが、どんなところに台本の魅力を感じましたか。

 これまでさまざまなミステリー作品を映像で見たり、舞台で見たり、本で読んだりしてきましたが、この作品は私が出会ったことがないようなミステリーでした。脚本の北村さんが「そもそもつじつまが合うものを作ってしまったらつまらない」とおっしゃっていたのですが、いかようにも解釈できるし、見方によっては全く違う作品になります。それが面白いと私は感じました。ミステリーと言いながらも面白いシーンも出てきますし、井上(芳雄)さんが歌うシーンもありますし、てんこ盛りです。これまで見たことがないものを稽古場で作り上げているので、ミステリーと呼んでいいのだろうかというぐらい斬新で、前衛的な作品になるんじゃないかなと思っています。

-井上さんが演じるマリモという役は、どんな役どころですか。

 この作品は、井上さんが演じる探偵と、鈴木浩介さんが演じるその助手が“迷いの森”に迷い込むところからお話が始まるんですが、私が演じるマリモちゃんは、その“迷いの森”にいる謎の女性です。善なのか悪なのか分からない女性ですが、彼女の過去や人生をひも解いていくと、少しずつ(マリモの)物語が見えてきます。純粋でピュアなのか、それとも計算しているのかも見方次第だと思いますが、私自身は、彼女は純粋な女性だと今は解釈しています。真っすぐでピュアだから人を信じてしまい、結果としてこうなってしまったと、マリモちゃんを通して、人間の未熟さをお客さんに感じていただけたらいいなと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

ファーストサマーウイカ「それぞれの立場で“親と子”という普遍的なテーマについて、感じたり語り合ったりしていただけたらうれしいです」日曜劇場「19番目のカルテ」【インタビュー】

ドラマ2025年8月17日

 TBSでは毎週日曜夜9時から、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」が放送中。富士屋カツヒトによる連載漫画『19番目のカルテ 徳重晃の問診』(ゼノンコミックス/コアミックス)を原作に、「コウノドリ」シリーズ(TBS系)の坪田文が脚本を手 … 続きを読む

橋本愛 演じる“おていさん”と蔦重の夫婦は「“阿吽の呼吸”に辿り着く」【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年8月16日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。本作で蔦重の妻・ていを演じているのは、今回が4度目の大河ドラマ出演で … 続きを読む

山里亮太「長年の“したたかさ”が生きました(笑)」 三宅健太「山里さんには悔しさすら覚えます(笑)」STUDIO4℃の最新アニメ『ChaO』に声の出演【インタビュー】

映画2025年8月15日

 『鉄コン筋クリート』(06)、『海獣の子供』(19)を始め、個性的なアニメーションを次々と送り出してきたSTUDIO4℃。その最新作が、アンデルセンのおとぎ話『人魚姫』をベースに、人間の青年・ステファン(声:鈴鹿央士)と人魚王国のお姫さま … 続きを読む

ウィリアム・ユーバンク監督「基本的には娯楽作品として楽しかったり、スリリングだったり、怖かったりというところを目指しました」『ランド・オブ・バッド』【インタビュー】

映画2025年8月14日

 ラッセル・クロウとリアム・ヘムズワースが共演し、戦場で孤立した若手軍曹と、彼を後方から支援する無人戦闘機のベテラン操縦官の闘いを活写したサバイバルアクション『ランド・オブ・バッド』が8月15日から全国公開された。米海軍全面協力のもと、入念 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(1)“たまたま”が導いた講談の道

舞台・ミュージカル2025年8月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼みなさん、こんにちは  日本の伝 … 続きを読む

Willfriends

page top