「『転機になった作品』と一生言っているような気がします」吉沢亮(渋沢栄一)「吉沢さんが全身全霊で91歳の最期の瞬間まで演じ切ってくれた」黒崎博(チーフ演出)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年12月26日 / 12:00

-いわれてみれば、そうですね。

黒崎 その一方で、毎回撮影をしながら感じていたのは、吉沢さんもゼロベースで演じる人だということです。これだけ長く渋沢栄一を演じてきたんだから「こんな感じかな」でもできると思うんです。でも、そういうことは一切せず、毎回、まっさらなゼロの状態から演じる。「こんなやり方をしていたら、疲れるだろうな」と思いながら見ていましたが、そういう姿勢は栄一と重なる部分もあったなと。

-なるほど。これから新一万円札を見るたびに、「青天を衝け」を思い出す人がたくさん出てきそうな気がします。ところで、12月14日の「あさイチ」で放送されたクランクアップ時の映像で、吉沢さんが「自分が変わった瞬間は何かと聞かれたら、一生『青天を衝け』ですっていっているような気がします」とおっしゃっていましたが、その言葉に込めた思いを聞かせてください。

吉沢 1年以上同じチームで主人公をやらせていただきましたが、監督の皆さん、スタッフの皆さん、演者の皆さん、誰一人欠けることなく、そこにいた人たちからもらったもので一つ一つの要素ができていき、渋沢栄一という人物をみんなで作り上げていった感覚がすごくあります。しかもその間、うれしいことだけでなく、苦しい思いも、つらい思いもたくさんして、渋沢栄一を演じている時間は、めちゃくちゃ生きているな、と感じた時間でした。それがとても印象的だったし、こんな刺激的な現場にはそうそう出会えるものではないな、と。だから、「転機になった作品は『青天を衝け』です」と一生いっているような気がします。

-それでは最後に、最終回の見どころを教えてください。

吉沢 終わりに向けて、まとめに入るということではなく、最後まで現役でやりたいことをやって、失敗もしてと、栄一が、年を重ねても挑戦を続ける姿がこの作品の肝です。それを最後までやり切ったと思っているので、そういう部分をぜひご覧いただきたいです。

黒崎 渋沢栄一さんは、文字通り駆け抜けるように生きた人で、次から次へとこれをやった、こんなことも考えた、こんな言葉を残した、ということがたくさんあり、何とも収束し切らない物語になったなと思っています。第40回でも、この期に及んでアメリカに行くのか、と驚かれたかもしれません。でも、それは渋沢栄一さんのせいであって、われわれのせいではありません(笑)。最後までそういうエネルギーにあふれた物語になっています。吉沢さんも全身全霊で91歳の最期の瞬間まで演じ切ってくれていますので、そのパワーは伝わると信じています。ぜひ、楽しみしていてください。

(取材・文/井上健一)

チーフ演出・黒崎博氏

 

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