【インタビュー】『キングスマン:ファースト・エージェント』日本版声優・小澤征悦「ご家族で見られる場合は、吹き替え版の方が楽しめるのではないかと思いました」

2021年12月23日 / 13:00

 1914年、世界大戦をひそかに裏で操る闇の狂団に、英国貴族のオックスフォード公(レイフ・ファインズ)と息子のコンラッド(ハリス・ディキンソン)が立ち向かう。スタイリッシュな英国紳士が過激なアクションを繰り広げる人気スパイアクションのシリーズ最新作『キングスマン:ファースト・エージェント』が12月24日から公開される。主人公のオックスフォード公の日本版声優を務めた小澤征悦に、初挑戦となった吹き替えや、映画について聞いた。

主人公オックスフォード公の日本語版声優を務めた小澤征悦

-本格的な吹き替えは今回が初めてだと聞きました。出演までの経緯を教えてください。

 オーディションを受けさせてもらいました。「キングスマン」シリーズは1作目も2作目も見ていて、大好きな映画だったし、しかも主人公ということでびっくりしましたが、せっかくチャンスを頂いたのだからと思い、一生懸命オーディションを受けました。決めていただいて、とてもうれしかったです。

-これまでの「キングスマン」シリーズをどう見ていましたか。

 最初の『キングスマン』が出来たときには、また新しいスパイアクション物と出会えたワクワク感があって、一人の観客として楽しく見させてもらったことを覚えています。

-今回は、時代をさかのぼって、前2作とは設定が異なりましたが、どう思いましたか。

 最初に説明を受けたときに「なるほど」と思いました。このシリーズは、傘など、いわゆるガジェットと呼ばれる武器が見ものです。それが時代をさかのぼると、一体どういう形で表現されるのだろうと思いましたが、今回も仕込みづえやティーポットなど、いろんなガジェットが出てきて、それがちゃんと時代背景にも合っていたので、さすがだなと思いました。

-今回、吹き替えを担当したレイフ・ファインズについて、同じ俳優としてどう感じましたか。

 素晴らしい俳優さんだと思います。彼が出ている他の映画も見させてもらっていて、本当にうまくて繊細な芝居をされる方だと思っていたので、そんな人の声を吹き替えられるのはとても光栄なことだと思いました。ただ、年齢的にはレイフさんは僕よりも少し年上ですから、吹き替えをする前に、監督といろいろとお話をさせてもらって、声のトーンを少し低めにすることをベースにして、声を当てていくことにしました。

-オックスフォード公は、激しいアクションも含めて、喜怒哀楽、さまざまな顔を見せる役でした。吹き替えの苦労はありましたか。また、心掛けたことは?

 レイフさんの芝居の邪魔をしないようにしながら、そこにちゃんと感情を乗せて芝居をしようと心掛けました。中には、泣きの芝居もありましたから、できる限りのことをやろうと思いました。今回、面白かったのが、初めての吹き替えだったので、知らなかったのですが、アクションシーンには、その場面だけに声を当てる人がいるんですね。なるほど、そういうこともあるのかと思っていたら、「今回は全部小澤さんで」と言われて…(笑)。それで、映像を見ながら、いろいろなアクションに合わせて、やられたときの声、前向きな声、落ちていくときの声とか、一生懸命にやりましたが、マイクの前ではあまり動けないことあって、とても不安でした。でも、完成した吹き替え版を見たら、ちゃんと成立していたので、うれしかったです。

-声のトーンを少し低めにしたほかに、何か心掛けたことはありましたか。

 技術的なことでいうと、単純に芝居でせりふを言うのとは違い、吹き替える相手の口が動いているところに合わさなければならないし、言葉を切る部分が違ったり、英語と日本語とでは尺が違ったりもするので、とても考えながらやりました。

-今回のメインテーマは父と子の絆の話でした。小澤さんの立場からすれば、息子のコンラッドの気持ちの方が、よく分かるという感じもあったのではないですか。

 コンラッドは、若者らしい熱意で自分も国のために戦いたいと思う。でも、父親としては息子を愛しているが故に、危険な所へは行ってほしくないと思う。ところが、その気持ちを息子の思いを全否定するような形で伝えてしまう。そこで確執が生まれるわけです。自分も、息子はいませんが、今47歳なので、コンラッドの気持ちも、お父さんの気持ちもよく分かります。おやじと息子の関係性でいえば、うちのおやじ(指揮者の小澤征爾氏)も言葉ではなく背中で語るタイプなので、ちょっとオックスフォード公と重なるところがあると感じました。そういう姿はカッコいいと思いますね。

 
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