今明かされる制作の舞台裏「一緒に作っているのに、吉沢さんの渋沢に励まされるような不思議な実感がありました」菓子浩(制作統括)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年12月14日 / 06:37

-ただその後、コロナ禍や東京オリンピックの延期などがありました。

 コロナ禍やオリンピックの延期などにより、時代が予想を超えて変わっていきました。そういう状況の中で渋沢さんについて調べていくにつれ、逆境にぶち当たってもくじけずに立ち上がっていく人だということが分かってきました。そこから、「生き抜く」ということが、だんだんこの物語のテーマとして前面に浮かび上がってきた感じです。ただ、「逆境の中でも立ち上がる」ということは企画の段階からありましたが、当然、コロナ禍なんて予想もしていませんし、僕らは「とにかく楽しんでもらえるものを」と考えながらドラマを作っていただけです。そういう中で、必然的に物語が今の時代とリンクしていったような感覚です。

-なるほど。

 僕たちも、このドラマを作っている中で、苦しい時期がたくさんありました。でも、作り手でありながら、登場人物たちの行動やせりふに励まされ、「生き抜く」、「前を向いて進む」という力を得るような不思議な体験をしました。

-ドラマを見ていて「渋沢栄一って、こんな人だったのか!」という驚きが毎回のようにありました。大森さんの脚本と吉沢さんのお芝居を経て出来上がった主人公の渋沢栄一を見て、新たな発見などはありましたか。

 大河にはいろいろな作り方があり、大胆な仮説に基づく物語もあり得ますが、大森さんはうそをつきたくないということで、徹底的に史料を調べ、史実に寄り添って作られる方です。だから、こちらも大量の史料を用意し、読み解いていきました。渋沢さんは生きていた時代が近いので、史料もたくさん残っているんです。その史料を調べていくうちに、だんだん渋沢さんの人物像が立体的になってくる。そこに吉沢さんが血肉を与えることで、生涯青春で力強く駆け抜けていく渋沢像が生まれました。僕らも一緒に作っているのに、吉沢さんの渋沢に励まされるような不思議な実感がありました。

-視聴者の反応は、どのように受け止めていましたか。

 始まる前は、「渋沢って誰?」「地味」「次の大河は1年休むか」みたいなことも言われていましたね(笑)。大半の方が渋沢栄一さんをちゃんと知らないし、「新1万円札の人」ぐらいのイメージしかなかったはずなので、仕方ないなとは思っていました。でも、どんどん逆転していくダイナミックな渋沢さんの人生は、ご覧になれば楽しんでいただけるはずだと信じていました。最終的に皆さんから応援していただけるようになったのは、脚本の力ももちろんありますが、役者の方々のおかげだと思っています。皆さんが、それぞれ演じる役を愛して育ててくれたことで、キャラクターがより魅力的になり、応援してくださる方も増えたのではないかと。それに尽きると思います。

(取材・文/井上健一)

 

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