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斎藤 圧倒的なルックスと身長の東出昌大が函館の町で浮いて見えないか? 脚本上に描かれた和雄が抱えた闇を肉体化できるのか? と思っていた部分はありました。だって東出昌大ですよ(笑)。だけどそんな不安は一瞬で吹き飛びましたね。結果、映画を見た知人が「今までにない東出昌大が見られた」と褒めてくれました。それが一番うれしかったですね。
東出 手応えはないですね(笑)。でもそれは、ネガティブな意味ではなくて。ありがたいことに監督の現場では、いろいろ意見をぶつけ合いながらも、最後は「好きにやってこい」と背中を押してくれたんです。例えば、台本に「泣く」と書いてあるシーンも、ぎりぎりまで「泣きますか? 泣きませんか?」というやりとりがあった上で、最後は「感情の高ぶる方で」と任せてくれる。だから、現場中は「こう表現しよう」みたいな作為を持っていなかったんです。どういう映画になるのか想像しないまま、出来上がったものを見て、「こういう映画になったんだ」と。
斎藤 それを許してくれたことには、感謝したいです。監督がどうこう言っても、最終的には映っている人が一番リスクを負う部分があるわけだから。そういう意味では、「この人になら、何を見せてもいい」と思わせることが演出だと思っています。そのためにはこちらも相手を信用しないといけない。つまり共犯です。今回は監督と俳優というヒエラルキーじゃない関係になれたと思っています。
斎藤 脚本を作っている最中にコロナ禍があったので、それを取り入れるかどうかは考えました。こんなふうに人と人の距離が近づいたり、近づけなかったり、というのは、まさにぴったりな話だと思ったので。ただやっぱり、出演者が全員マスクをしたまま映画を撮るのは難しいので、それはいったん忘れることにしました。とはいえ、現場では全てのスタッフがマスクをしているので、そういう気分はなんとなく出たのかなと。
東出 でもやっぱり、僕らはロマンチストだな、と思うんです。寒い中の撮影など、しんどいことも多いのに「何のために撮ってるの?」と聞かれると、「誰かを肯定したい」「沈んだ人の気持ちをすくい取れるものになれば」と思いながら現場にいたんだな、と考えるわけですから。歯の浮くような答えかもしれませんけど…。だから、こういう苦しいときにこそ、見ていただきたい作品になったと思います。
(取材・文・写真/井上健一)
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