「渋沢との言い合いはこれからも続きます」大倉孝二(大隈重信)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年10月17日 / 12:03

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。時代は明治に移り、新たな国造りを目指す人材が次々と登場してきた。その1人が、後に総理大臣として歴史に名を残す大隈重信だ。駿府藩で頭角を現した主人公・渋沢栄一(吉沢亮)を新政府に登用するため、得意の弁舌で口説き落とした初対面も強烈なインパクトを残した。演じる大倉孝二が、その舞台裏や役作りの裏話を明かしてくれた。

大隈重信役の大倉孝二

-第二十八回、初対面の栄一に対して熱弁をふるう場面は強い印象を残しました。あの場面、大隈は新政府への出仕を断ろうとする栄一を説得しなければいけなかったわけですが、芝居の際に心掛けたことは?

 撮影のときは、あのシーンの最初から最後まで、途中で止めず、全部通してやったんです。それを何度も繰り返したので、ものすごい緊張感で。もちろん、知識として時代背景は多少頭に入れていましたが、自分がどうこうというよりも、吉沢くんの心を動かすことだけに尽力していました。僕自身、細かい演技でどうにかできるほど演技力に長けた俳優でもないので、あとはもう熱量を信じてやろうと。目の前の吉沢くんに伝わらなければ、見ている方にも伝わりませんしね。なので、そういった僕の必死さもお芝居に出ていたのかもしれません。

-「○○であーる!」という大隈の口癖も非常に面白かったです。

 「○○であーる!」が大隈さんの口癖だったことは知っていましたが、どこまでやるかは、現場次第だと思っていました。そうしたら、監督の方から「際立たせてほしい」というお話があって。探り探り、やらせていただきました。ただ、あんなふうに3回も繰り返す編集をされるとは思っていなかったので、「なんだこれは!」とびっくりしました(笑)。

-あの場面のおかげで、大隈のキャラクターも強く印象付けられたと思います。それでは、改めて今回の出演が決まったときの気持ちを聞かせてください。

 率直に言って、「自分で大丈夫だろうか…?」と不安になりました(笑)。史実に基づいたフィクションとはいえ、大隈重信さんに対しては、皆さんがいろいろな思いを持っていらっしゃるでしょうから、「自分に務まるのだろうか?」と。お話を頂いた時点では、元総理大臣で、早稲田大学を作った方、ぐらいの知識しか持っていませんでした。ただ、それからいろいろ調べてみたら、いろんなところに「民衆に愛された」と書かれていたり、天真らんまんなところもあったり、面白いエピソードが多く見つかったんです。そういうことを知り、「自分にもできそうな可能性が出てきたぞ」と。演じる上では、そういった部分を少しよすがにしました。

-大隈に関するエピソードで特に印象に残っているものは?

 資料を読んで印象的だったのが、伊藤(博文)を相手に碁や将棋を打つとき、打ち方が対照的だったと書かれていたことです。伊藤がじっくり進めていくのに対して、大隈は割と大ざっぱな打ち方で、ピンチになると慌てて対処するタイプだったそうで。そういうざっくりしたところに、すごく親近感を覚えました。

-そういうところも、今回の役作りに生かされているのでしょうか。

 そうですね。意識的にそういうキャラクター性を出そうとしているわけではありませんが、親しみやすさという部分は、自分の中に落とし込んでやっているかもしれません。なんとなくにじみ出ればいいかな…という程度ですが。

-大隈の妻・綾子役の朝倉あきさんの印象は?

 史実では、大隈さんは綾子さんの手の平で転がされていた部分があったそうです。どんなに頑固に意地を張っていても、綾子さんに言われると、コロッと考え方を変える、といった感じで。一緒にお芝居させていただき、朝倉さんはそういう安心感を与えてくれる雰囲気やお声を持っている女優さんだと思いました。また、佐賀藩出身の大隈は佐賀ことばでしゃべりますが、彼女のご両親も佐賀の方らしく、「大倉さんのせりふを聞いていると、懐かしい気持ちになる」と言ってくれました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top