【インタビュー】舞台「近松心中物語」石橋静河が体現する「生きるエネルギーが爆発したような二つの恋」

2021年8月20日 / 12:00

 戦後を代表する劇作家・秋元松代の代表作を、KAAT神奈川芸術劇場の新芸術監督となった長塚圭史が演出する「近松心中物語」が、9月4日から開幕する。本作は、飛脚宿亀屋養子・忠兵衛と見世女郎・梅川、古物商傘屋若旦那・与兵衛と箱入り娘・お亀という、境遇の違う2組のいちずな恋を描く。お亀を演じる石橋静河に、公演への意気込みを聞いた。

 

お亀役の石橋静河

 -本作のどんなところに魅力を感じて、出演を決めたのですか。

 最初にこのお話を頂いたときは、「すごく大きな挑戦が来たな」と感じました。他のキャストさんたちもそうそうたる方々ばかりだったので、その中で演じさせていただくのは絶対にいい経験になるだろうし、長塚さんとご一緒できるのもうれしく、迷うことなくお返事させていただきました。ただ、大きな挑戦になるということに関しては、覚悟しなくてはと思いました。

-「大きな挑戦」とは?

 舞台で時代物に出演するのは初めてなので、お着物を着たときの所作や、その中でのお芝居は難しいだろうなと思っています。それから、この作品は、1人の心情を掘り下げていくというよりも、いろいろな人の人生が複雑に絡み合っていって、それで社会が出来上がっているというスケールの大きなお話だと思うので、そういったスケール感の中に入っていくことも私にとっては挑戦でした。

-実際に稽古が始まってみて、今はどんなことを感じていますか。

 前回、出演させていただいた舞台「未練の幽霊と怪物」の地方公演が終わって、その余韻が抜け切らないまま今回の稽古が始まったので、もう少し休みたかったなという気持ちは正直ありました(笑)。というのも、お亀はものすごくエネルギッシュな女性なので、そのエネルギーを自分から放出するための“元気玉”がまだ自分の中にたまっていなかったんです。なので、最初は大丈夫かなという不安も大きかったのですが、実際にお稽古が始まると、作品が持っている雰囲気や、長塚さんが目指しているものなどの新しい情報がたくさん入ってきて、いつの間にかその流れに自分も乗っている感覚がありました。今、どんどんお稽古が楽しくなってきています。

 -お亀という役柄については、どんなところを意識して演じていますか。

 全ての感情に、100パーセントのエネルギーでぶつかっていくエネルギッシュさがある女性ですが、それは、今の時代にはない部分なのかなと思います。今は、このお芝居の設定よりも何倍もの情報があって、その中から自分の意識が向く対象を選び取ることができますが、当時は女性としても1人の人間としても生きる道が少なく、ある種小さな世界の中で一生懸命生きていた時代だったと思うんです。例えば、旦那の与兵衛が遊郭に遊びに行ってしまったら、お亀は、いつ帰ってくるのかとひたすら待っていることしかできません。ですが、今だったら、帰ってくるのを待っている間、いろんな情報ツールもあるし、いくらでも他のことをしていられますよね。(お亀は)ただひたすら待っているからこそ、やっと帰ってきたら、思いがあふれて与兵衛にぶつけてしまう。ある意味、今よりも生きる力が凝縮されている感じがして、それがすごく面白い反面、演じるのは大変だなと思います。

-与兵衛役の松田龍平さんとはこれまでにも何度も共演経験がありますが、今回は夫婦役です。それについてはいかがですか。

 物語が始まった時点から夫婦という役どころなので、気心が知れている分、すごくやりやすいです。与兵衛という人物は、ひょうひょうとしていて頼りないけれども、すごくいい人というキャラクターですが、その役柄は松田さんにぴったりだと思います(笑)。みんなが「もう!」と言いながらも与兵衛のことを好きになってしまうのは、松田さんの魅力と通じる気がします。

-現在もコロナ禍が続いていますが、その中での舞台公演については、どのような思いがありますか。

 お客さまの前でパフォーマンスができるということは、本来、尊いものだったはずなのに、それが当たり前になってしまっていたということに気付ける時でもあったのかなと感じています。お客さまにとっても、目の前で生身の人間が表現しているものを見るのは、映像や配信を通して見るのとは全く違った感覚があると思います。そう考えると、一概に全てが最悪だとは自分は思っていません。今回も大変な状況の中での公演となりますが、「心配すること」に全ての気持ちが持っていかれるのではなく、喜びもあるということを忘れずに、できるところまでやってみたいと思っています。

 
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