「パリを訪れた昭武は、栄一の柔軟さや聡明さに引かれ、信頼関係を築いていきます」板垣李光人(徳川昭武)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年7月5日 / 06:33

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。7月4日放送の第二十一回でついに主人公・渋沢栄一(篤太夫/吉沢亮)がパリ万国博覧会に派遣される幕府の使節団に加わり、遠い異国の地へ旅立つことになった。その使節団を率いるのが、将軍に就任した徳川慶喜(草なぎ剛)の名代を務める弟の徳川昭武だ。演じるのは、「花燃ゆ」(15)に次いでこれが二度目の大河ドラマ出演となる板垣李光人。パリ滞在中に栄一とも深い関わりを持つことになる昭武役に込めた思い、ドラマの見どころなどを語ってくれた。

徳川昭武役の板垣李光人

-出演が決まったとき、徳川昭武に対してどんなイメージを持っていましたか。

 正直、徳川昭武のことは知りませんでした。ただ、現代の中学生ぐらいの年齢で、「日本を背負ってパリに行く」という大役を引き受けるので、慶喜が「昭武に任せよう」と思うぐらいの品位やカリスマ性があったはず。お話を頂いたときは、そういうものを感じさせるたたずまいやしゃべり方が大事になってくるんだろうな、と思っていました。それから、写真を見たり、いろいろ調べたりする中で、「とても気高そうな人物」という印象を受けました。空気を含むような動きや柔らかさがありそうだったので、演じるに当たっては、そこから膨らませていきました。

-昭武を演じる上で心掛けていることは?

 時代劇で身分の高い役を演じる場合、所作もある程度決まったものになってきます。とはいえ、演じる際は役を自然に生きられるようにしなければならないので、そういう、決まった動きを自分の中でかみ砕き、昭武らしい動きに落とし込んでいく必要があります。時代劇ではそういうことが大事になってくるので、台本を読むときから所作を意識するようにしています。

-13~4歳でパリに行くことについては、どんなイメージを?

 ただ「行く」のではなく、「日本を背負って行く」わけです。日本の全てを背負って博覧会へ行き、「日本はこういうところだ」と示した上で、ナポレオン3世に謁見する。そこには、普通の13~4歳だったら感じることのないような圧があるはずです。でも、昭武はそれを押しのけて堂々とたたずむ。だから、演じる上では“強さ”とか“覚悟”みたいなものが一番大事になるだろうな、と。昭武がパリへ行ったのは、僕が初めて大河ドラマ「花燃ゆ」に出演したときと同じくらいの年齢ですが、僕にはとても昭武のように振る舞うことはできそうにありません。

-昭武と一緒にパリを訪れる栄一役の吉沢亮さんの印象は?

 これまでいろいろな作品を拝見してきましたが、実際にお会いしてみると、やっぱり目がすてきできれいだな…と。初めて見る世界に目を輝かせる子どものように澄んだ目をされるときもあれば、鷹のように鋭い目をされるときもある。一緒に芝居をさせていただき、それを実際に感じることができたのはうれしかったです。お芝居以外の部分でも、すごく優しいですし。以前、僕が朝の情報番組に出演していたとき、2時半起きでその番組をやった後、「青天を衝け」の撮影に来ていたことがあったんです。そうしたら、吉沢さんも以前、同じ番組に出られていたので、心配して声を掛けてくださって。あと、僕は少し変わった服が好きなので、そんな話でも盛り上がりました。

-これまでの撮影で印象的だった出来事は?

 合成するためにパリの場面をグリーンバックで撮影したことです。例えば、ナポレオン3世に謁見するシーンでは、たくさんの人が並んでいる絢爛(けんらん)な宮殿を、正面のナポレオン3世に向かっておずおずと歩いていきます。実際にその場で演じるのであれば、人がいる緊張感や呼吸、宮殿内に響く足音など、周囲の環境に芝居が助けられたり、乗ってきたりすることもあります。でも今回は、事前にパリで撮影した映像を見せてもらってはいますが、演じる際にはそれを全部、自分の頭で想像しなければいけませんでした。そのため、ものすごく集中力が必要で…。それがとても印象的だったので、完成した映像を見るのが楽しみです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

原田琥之佑「この映画は、何でもあるけど、何にもないみたいなところが一番の魅力だと思います」『海辺へ行く道』【インタビュー】

映画2025年8月26日

 海辺の街に暮らす14歳の美術部員と仲間たちに起きたちょっと不思議なひと夏の出来事を小豆島でのロケで描く、横浜聡子監督の『海辺へ行く道』が8月29日から全国公開される。本作で主人公の高校生・奏介を演じた原田琥之佑に話を聞いた。 -最初に脚本 … 続きを読む

上田竜也&橋本良亮、舞台初共演を通して「絆はより強固になる」 音楽劇「謎解きはディナーのあとで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年8月26日

 シリーズ累計500万部を突破する、東川篤哉による大ヒット小説「謎解きはディナーのあとで」が、舞台オリジナルストーリーで音楽劇として上演される。原作は、毒舌執事とお嬢様刑事が繰り広げる軽快なやりとりと本格的な謎解きが話題となり、2011年に … 続きを読む

青山貴洋監督「問診シーンが最大の課題に」日曜劇場『19番目のカルテ』【インタビュー】

ドラマ2025年8月25日

 体の不調を感じていても、何科を受診すべきか分からない…。そんな悩みを抱える人は少なくない。そうした現代の医療課題に向き合う存在が「総合診療医」だ。日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS系)は、まさにその最前線で患者と向き合う医師たちの姿を描 … 続きを読む

中園ミホ 連続テレビ小説「あんぱん」は「やなせたかしさんが書かせてくださった」執筆を終えた脚本家が物語を振り返る【インタビュー】

ドラマ2025年8月22日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、いよいよクライマックスが近づいてきた。このタ … 続きを読む

森田剛「戦争と背中合わせの世界であるということは今も変わらない」 19世紀を代表する未完の戯曲に挑む パルコ・プロデュース 2025「ヴォイツェック」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年8月22日

 森田剛が主演する舞台、パルコ・プロデュース 2025「ヴォイツェック」が9月23日に開幕する。本作は、ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーが遺した未完の戯曲を、2017年にジャック・ソーンが翻案した作品を日本で初めて上演。冷戦下の1981 … 続きを読む

Willfriends

page top