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かつて社会現象を巻き起こした大ヒットSFアニメーションをリメークし、大きな支持を得た『宇宙戦艦ヤマト2199』(12~13)とその続編『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(17~19)。この二つのシリーズに新作映像を交え、新たな切り口で再構成した特別総集編『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』が6月11日から全国上映となる。本作で構成・監修・脚本を務めた福井晴敏と、人気キャラクター、デスラーの声を演じた山寺宏一が、作品の見どころ、その裏に込められた思いなどを語ってくれた。
山寺 冒頭から「そういう入り方!?」と、びっくりしました。もちろん、時間軸を追って『2199』と『2202』の物語が描かれ、総集編的な作品に仕上がっています。ただ、真田(志郎/声:大塚芳忠)さんが語り手を務めることで、「新しい切り口で見事にまとめ上げたな。さすが福井さん」と。最後は感動しました。
福井 真田さんというと、昔の「宇宙戦艦ヤマト」(74~75)の頃から、「こんなこともあろうかと」というせりふで有名ですが、実は本編中では一度も言っていないらしいんです。
山寺 そうなんですか。
福井 ええ。伝説が独り歩きしているらしく…。つまり、それぐらいドラマの解説役のような役割を背負わされてきたキャラクターなんです。今回のリメークシリーズでは、だいぶ人間像が掘り下げられ、「コミュニケーションが苦手な純粋理系」みたいなタイプから、徐々に人間的に柔らかくなっていく様子が『2199』と『2202』を通して描かれています。だから、「この二つをまとめるのであれば、この人しかいない」と思いました。
福井 「『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』とは、一体どんな時代だろう?」と考えてみると、それは毎年のように新しい宇宙人が地球に攻めてくる時代なんですよね。
山寺 私もその一人ですね(笑)。
福井 昔は「いくら何でも、それは漫画的過ぎる」と、お客さんに引かれてしまった部分もあったと思いますが、現代は毎年のように新しい災害が起き、今までの常識が全く通用しない。これほどいろいろなことが続くと、来年あたり宇宙人が攻めてきても、もはや驚かないレベルだな…と。
山寺 そうですね。僕は東北出身ですが、震災のときは「日本はもう立ち直れないんじゃないか」と本気で思っていました。そこから何とか皆さんの努力で復興してきたところに、新型コロナの危機。昔の「宇宙戦艦ヤマト」を見ていた頃は「地球規模の危機なんて、そんなに次から次へと来るわけないじゃん」と思っていましたが、そうでもないんだな…と。
福井 「そうでもないんだな」になっちゃいましたよね。それぐらい何が起こってもおかしくない時代で、その苦難を十何年も生き抜いてこなければならなかった。そういうことから、『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』を「現代日本の鏡像」として描くことができる時代が来てしまった。そこを真正面から捉えて、皆さんにこの物語を肌身で感じていただくにはどうしたらいいか。それを考えた結果、あえて一歩引いた感じの「ドキュメンタリータッチ」という結論に至りました。
山寺 地球の危機を描く作品はたくさんありますが、これほど頻繁に危機が訪れるものはないと、初めて「ヤマト」を見た中学生の頃からずっと思ってきました。そういう意味では、最初にそういうものを描いたのが「ヤマト」であり、時代に合わせてよりリアルにしたのが、『2199』からのリメークシリーズですものね。
福井 「宇宙戦艦ヤマト」は当初、「ヤマト」というタイトルではなかったそうなんです。それが、企画が進む中で「ヤマト」という名前とあの船の形に決まり、その瞬間から「戦後日本を背負う」みたいな雰囲気をまとうことになった。これは、「ガンダム」や「エヴァンゲリオン」にはない「ローカリズムの極致」と言っていいと思います。
福井 そういうものが、「古い、ダサい」と忘れ去られたのが90年代やゼロ年代。その時期を過ぎた後、もう一度「戦後日本」というものを捉え直す必要が出てきた。そういうところにピタッとハマるという意味では、「ガンダム」や「エヴァ」の手が回り切らないところにあるべき存在になっているかな、という気がします。
山寺 「ヤマトの魅力」って、一言で言うのは難しいし、今またこうやって支持を得ているのは、福井さんたちがきちんと再構築してくれたおかげだと思います。ただ、福井さんのおっしゃった「戦後日本」ということに関して言えば、われわれは戦争を遠い昔のことだと思っているかもしれませんが…。
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