【インタビュー】映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代  西暦2202年の選択』山寺宏一「歴史の事実を突き付けられた気がした」福井晴敏「『ヤマト』は『ガンダム』や『エヴァ』の手が回らないところにあるべき存在」

2021年6月9日 / 06:44

 かつて社会現象を巻き起こした大ヒットSFアニメーションをリメークし、大きな支持を得た『宇宙戦艦ヤマト2199』(12~13)とその続編『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(17~19)。この二つのシリーズに新作映像を交え、新たな切り口で再構成した特別総集編『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』が6月11日から全国上映となる。本作で構成・監修・脚本を務めた福井晴敏と、人気キャラクター、デスラーの声を演じた山寺宏一が、作品の見どころ、その裏に込められた思いなどを語ってくれた。

山寺宏一(左)と福井晴敏

-山寺さんが本作をご覧になった感想は?

山寺 冒頭から「そういう入り方!?」と、びっくりしました。もちろん、時間軸を追って『2199』と『2202』の物語が描かれ、総集編的な作品に仕上がっています。ただ、真田(志郎/声:大塚芳忠)さんが語り手を務めることで、「新しい切り口で見事にまとめ上げたな。さすが福井さん」と。最後は感動しました。

-真田さんを語り手に選んだ理由は?

福井 真田さんというと、昔の「宇宙戦艦ヤマト」(74~75)の頃から、「こんなこともあろうかと」というせりふで有名ですが、実は本編中では一度も言っていないらしいんです。

山寺 そうなんですか。

福井 ええ。伝説が独り歩きしているらしく…。つまり、それぐらいドラマの解説役のような役割を背負わされてきたキャラクターなんです。今回のリメークシリーズでは、だいぶ人間像が掘り下げられ、「コミュニケーションが苦手な純粋理系」みたいなタイプから、徐々に人間的に柔らかくなっていく様子が『2199』と『2202』を通して描かれています。だから、「この二つをまとめるのであれば、この人しかいない」と思いました。

-「ドキュメンタリータッチ」というスタイルを採用した理由は?

福井 「『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』とは、一体どんな時代だろう?」と考えてみると、それは毎年のように新しい宇宙人が地球に攻めてくる時代なんですよね。

山寺 私もその一人ですね(笑)。

福井 昔は「いくら何でも、それは漫画的過ぎる」と、お客さんに引かれてしまった部分もあったと思いますが、現代は毎年のように新しい災害が起き、今までの常識が全く通用しない。これほどいろいろなことが続くと、来年あたり宇宙人が攻めてきても、もはや驚かないレベルだな…と。

山寺 そうですね。僕は東北出身ですが、震災のときは「日本はもう立ち直れないんじゃないか」と本気で思っていました。そこから何とか皆さんの努力で復興してきたところに、新型コロナの危機。昔の「宇宙戦艦ヤマト」を見ていた頃は「地球規模の危機なんて、そんなに次から次へと来るわけないじゃん」と思っていましたが、そうでもないんだな…と。

福井 「そうでもないんだな」になっちゃいましたよね。それぐらい何が起こってもおかしくない時代で、その苦難を十何年も生き抜いてこなければならなかった。そういうことから、『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』を「現代日本の鏡像」として描くことができる時代が来てしまった。そこを真正面から捉えて、皆さんにこの物語を肌身で感じていただくにはどうしたらいいか。それを考えた結果、あえて一歩引いた感じの「ドキュメンタリータッチ」という結論に至りました。

山寺 地球の危機を描く作品はたくさんありますが、これほど頻繁に危機が訪れるものはないと、初めて「ヤマト」を見た中学生の頃からずっと思ってきました。そういう意味では、最初にそういうものを描いたのが「ヤマト」であり、時代に合わせてよりリアルにしたのが、『2199』からのリメークシリーズですものね。

-福井さんは「ガンダム」シリーズの「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」(10~14)、山寺さんは「新世紀エヴァンゲリオン」(95~96)など、それぞれ日本のアニメ史に残る作品にも参加してきましたが、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズならではの魅力をどんなふうに捉えていますか。

福井 「宇宙戦艦ヤマト」は当初、「ヤマト」というタイトルではなかったそうなんです。それが、企画が進む中で「ヤマト」という名前とあの船の形に決まり、その瞬間から「戦後日本を背負う」みたいな雰囲気をまとうことになった。これは、「ガンダム」や「エヴァンゲリオン」にはない「ローカリズムの極致」と言っていいと思います。

-なるほど。

福井 そういうものが、「古い、ダサい」と忘れ去られたのが90年代やゼロ年代。その時期を過ぎた後、もう一度「戦後日本」というものを捉え直す必要が出てきた。そういうところにピタッとハマるという意味では、「ガンダム」や「エヴァ」の手が回り切らないところにあるべき存在になっているかな、という気がします。

山寺 「ヤマトの魅力」って、一言で言うのは難しいし、今またこうやって支持を得ているのは、福井さんたちがきちんと再構築してくれたおかげだと思います。ただ、福井さんのおっしゃった「戦後日本」ということに関して言えば、われわれは戦争を遠い昔のことだと思っているかもしれませんが…。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「豊臣兄弟!」第16回「覚悟の比叡山」“守られる側”の農民から“守る側”の侍になった小一郎と藤吉郎の覚悟【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年4月28日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=木下小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=木下藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。4月26日に放送された第16回「 … 続きを読む

ゆうちゃみ「るり子が現実にいたらめっちゃ親友になれそうやなっていう感じでした」『アギトー超能力戦争ー』【インタビュー】

映画2026年4月28日

 仮面ライダー生誕55周年記念作『アギトー超能力戦争ー』が4月29日から全国公開される。本作で主要キャストの1人である葵るり子を演じたゆうちゃみに、映画初出演への思いなどを聞いた。 -出演が決まった時の心境は?  「マジ、ドッキリ?」みたい … 続きを読む

千葉雄大、「映像の人」「舞台の人」という「垣根をなくしたい」 友近と挑む二人芝居・リーディングドラマ「老害の人」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年4月25日

 内館牧子によるベストセラー小説『老害の人』が、リーディングドラマとして舞台化される。出演者は、友近と千葉雄大の二人だけ。登場人物のすべてを、二人が自在に演じ分ける。  物語の主人公は、小さな玩具屋を大企業に育てた元社長の福太郎。老いてなお … 続きを読む

小手伸也、「映像ではテンションの7割しか出していない」 リミッターを解除して臨む舞台初主演作「コテンペスト」

舞台・ミュージカル2026年4月25日

 小手伸也が舞台初主演を務める「俺もそろそろシェイクスピア シリーズ『コテンペスト』」が、6月27日から上演される。公演に先立ち、小手が取材に応じ、本作への思いを語った。  本作は、シェイクスピアの最後の作品「テンペスト」の設定を現代に置き … 続きを読む

【映画コラム】4月後半公開の映画から『人はなぜラブレターを書くのか』『今日からぼくが村の映画館』『ソング・サング・ブルー』

映画2026年4月24日

『人はなぜラブレターを書くのか』(4月17日公開)  2024年、千葉県香取市で定食屋を営む寺田ナズナ(綾瀬はるか)は、ある青年に宛てて手紙を書く。  24年前、当時17歳だったナズナ(當真あみ)は、いつも同じ電車で見かける高校生の富久信介 … 続きを読む

page top