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NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。5月30日に放送された第十六回「恩人暗殺」では、主人公・渋沢栄一(篤太夫/吉沢亮)を主君・徳川慶喜(草なぎ剛)に引き合わせた恩人・平岡円四郎(堤真一)が、非業の死を遂げた。円四郎の壮絶な最期や、その死を悲しむ慶喜など、胸に迫る名場面が満載となった今回。演出を担当した村橋直樹氏が、撮影の舞台裏を語ってくれた。
堤さんとも話していましたが、円四郎はある意味、「人生最高の時に突然、途切れるように死んだ」というふうに描きたいと思っていました。見ている方には既にフラグが幾つも立っていますが、円四郎にとってはまったく予期せぬ出来事で、目の前には明るい未来だけが広がっていた。その直前、主君の慶喜に「どこまでもお供つかまつります」と告げ、慶喜はほほ笑み返していたわけですから。そういう満たされた状況の中で、どう死んでいけるのか。そこを意識しました。最後に立ち上がり、どこかへ歩いていこうとする…という動きも、堤さんと話し合って決めたものです。
実は、顔がしっかり見えるようには撮っていないんです。顔よりも、円四郎が見ていた先、みたいなものを意識していたので。最後に倒れたまま、空に向かって手を伸ばしたのも、そういうところから出たものです。堤さんも素晴らしい表情をされていましたが、あえてその先を想起させるようにしたいと。しかも、ずっと「殿、殿」と言っていた円四郎が、最後にふっと「やす…」と、妻の名を呼ぶんですよね。とても大森(美香)さんらしい脚本で、僕も好きな一言だったので、そこも意識したつもりです。
円四郎がやす(木村佳乃)への伝言として「おかしろくもねえときは、掛け軸の小鳥にでも話し掛けろ」と栄一に伝えるくだりがあったので、この回は鳥をモチーフにしようと思っていました。円四郎は、やすの様子も知りたかっただろうし、栄一にも何かを残したいけど、ちゃんとお別れすることができない。そういう円四郎の「この世の気掛かり」みたいなものを、何とか形で残せないかと。栄一が歩いていく最後のシーンでは、鳥そのものを見せるかどうかはやや迷いましたが、栄一が感じられるものが欲しかったので、少なくとも鳴き声は入れようと決めていました。
僕は、すぐに雨や雪を降らせるので、スタッフからは嫌がられていると思います(笑)。(注:代官に御用金を届けた栄一が雨の中にたたずむ第四回、雪の中の桜田門外の変が描かれる第九回なども村橋氏が担当)。実は今回も、脚本では「雨が降りそうな不穏さの中で」という表現だったんです。慶喜が涙を流すので、雨を降らせない方が効果的かも…と思いましたが、そういう涙やおえつといった「形」では見せたくないな、と。言い方が難しいのですが、草なぎさんのお芝居には、そういう「形」とは違ったところから出るものが、ものすごくあるんです。僕らが現場で感じているそういうものを視聴者にも見てほしかったので、あえて涙を隠す方向で、雨を降らせることにしました。
あの場面では、カメラ3台で草なぎさんだけを撮っています。草なぎさんのお芝居は、技術的に組み立てるものとは違い、いい意味で本番一回限りのものだったりするんです。その分、撮る方も緊張しますが、最初のお芝居で「どんなものが出てくるんだろう?」とすごく楽しみになる。あの場面も、雨でおおわれていても涙やおえつが伝わってくるし、そういう「形」を越えた想像以上のものが出てきたので、「一回目ですごいものが出たな…」と、ホッとしたのを覚えています。
今回は、殴り合ったり、つかみ合ったりする血みどろで汗くさい殺陣が狙いでしたが、町田さんのシーンに関しては、相手は触れることすらできず、一太刀の下に死んでいく、という美しい殺陣を目指しました。町田さん自身の動きもきれいで、最初に稽古で動いてもらったときから、剣を振る姿がとても美しい。だから、「それを生かすように撮ればいい」という感じで、殺陣に関してはスムーズにやっていただけたと思います。それを見た吉沢くんが、「自分もこういう場面が欲しい」とうらやましがっていました。栄一には、そういう見せ場がありませんから(笑)。
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