【インタビュー】舞台「スリル・ミー」田代万里生&新納慎也 “伝説の初演ペア”が再び挑む衝撃の物語「初演のドキドキ感は一生忘れてはいけない」

2021年1月28日 / 08:00

 1920年代に実際に起こった、凶悪な伝説的犯罪を土台とした綿密な心理劇「スリル・ミー」が、2021年4月に上演される。出演者は、“私”と“彼”のたった2人。舞台上には、1台のピアノが置いてあり、その美的なメロディーとともに、濃厚な時間がつむがれる。これまで、世界中で何度も上演されてきた本作だが、日本では11年に初演された。今回の公演では、初演時に出演した田代万里生と新納慎也が、約10年ぶりにペアを組んで挑むほか、成河・福士誠治、松岡広大・山崎大輝ペアが出演する。田代と新納に、初演時の思い出、そして公演への意気込みを聞いた。

田代万里生(左)と新納慎也

-「伝説の初演ペア」とも呼ばれるペアの復活とあって大変注目されていますが、出演が決まった気持ちを教えてください。

田代 僕は毎年、やりたいと言い続けていたので、念願がかなったという思いです。今回で、5度目の出演になるのですが、前回出演してからも時間が空いているので、久しぶりにこの作品に携わることができます。そして、初演から10周年の節目の年に、“Mr.スリル・ミー”の新納さん、それからピアノの朴勝哲さんという、(日本での)初演を立ち上げたメンバーが集結して、再び作り上げられるというのは、本当にうれしいです。

新納 僕は、(12年の公演出演時に)もう年齢的にも卒業かなと思っていました。もちろん、初演を立ち上げたからには続けていきたかったのですが、自分でも納得できる年齢だったんで、身を引いたんです。その後、作品がどんどん大きくなっていって…どんどん「初演がすごかったらしい」といううわさが広まっていって(笑)。初演は美化されていくものですから、それはそれで「美化されておけばいいや」と思っていたんですが、まさかここにきて“答え合わせ”をすることになるとは思いませんでした(笑)。でも、万里生と新納慎也で10周年をという意気込みを頂いたので、もちろんやりますとありがたくお受けいたしました。

-初演時は、どんな思いを持って、作品に向き合っていたのですか。

新納 ピアノ1台にキャストが2人というのは、当時の日本のミュージカル界では珍しいタイプの作品だったので、僕たちにも慣れないところがありました。それに、(初演時は)100人ほどのお客さんしか入らない会場だったので、当時の万里生と僕には小さ過ぎる会場だったんです。チケットも即完売で、何のために、この作品をこんな小さな劇場でやるんだろうというのが最初の印象でした。でも、劇場に行ってみて、この作品はここでやるべきだと納得しました。とにかくこの作品に魅了されて、この作品の世界観を伝えるんだと無我夢中でした。

田代 僕もデビューしてから、いわゆるグランドミュージカルと呼ばれる作品に出演し続けていたので、それらとは真逆の作品だった「スリル・ミー」は、戸惑いが大きかったです。グランドミュージカルだと60人ぐらいいるカンパニーも、この作品は2人しかいない。作品的にも、視覚的に派手なものがない中、ほとんど舞台から降りることなく、(ステージに)立ち続けなければならない。自分が主軸となって、54歳の“現在”と19歳の“回想”が入れ替わる。もう、何もかもが違い過ぎた(笑)。

-戸惑いも多い中、初演ならではの苦労もあったのでは?

新納 そうですね。初演では、英語の歌詞に日本語を乗せてみて、それを1曲1曲、僕たちが歌ってみて、意見を出し合って作っていくというところから始まります。それは、僕たちにとっても、ありがたい経験ではありましたが、大変な作業でもありました。作品の世界観も分からないまま、手探りで進んでいって、完成させないといけないというのは、やはり初演ならではの大変さかなと思います。

田代 ただ、初演だからこそ、お客さまが固定観念を持たずに見てくださるので、ワクワク感も大きかったです。この作品は、最後に大どんでん返しがあります。そこで新納さんが“彼”として「えっ?」(と驚く)という芝居をするんですが、その瞬間に、会場全体が凍りついたんですよ(笑)。あの一瞬は本当にすごかった。初演で感じた、そのドキドキ感は、一生忘れてはいけないと思いました。

新納 初演の時は、100人しか入らない劇場だったからこそ、お客さまの衝撃もリアルに伝わってきたよね。全員が、僕と同時に「えっ?」って息を吸ったのが分かった(笑)。

-今回、再び同じ役に挑みますが、どのように演じたいと考えていますか。

田代 僕は、あまり昔にとらわれず、今の自分たちが思うものをやればいいと思っています。10年前は10年前で、そのときにしかできないものがあったと思います。それは年齢的なものだったり、経験値だったり、知らないからこその感情だったり。でも、今はあのときからの10年間で積み重ねたものがあるので、新納さんと僕が、今思う“彼”と“私”として、そこに存在できればと思っています。

新納 結局、10年たとうが、自分がどう演じたいというよりも、万里生がどう演じて、それを僕がどう感じるのかということに尽きると思います。だから、やってみないと分からない。ただ、10年前の自分と今の自分との違いは何だろうと考えると、気取ったり、装わなくなったことだと思うので、それがどう“彼”という役に影響するのかは僕自身も楽しみにしています。

-公演を楽しみにしているファンへメッセージを。

田代 予備知識なく、何も知らずに来ていただいても全く問題のない作品です。むしろ、知らない方が楽しめる部分もいっぱいあるかもしれません。ただ、見たことがある方も、結末を知っているからこそ楽しめる見方もありますし、何度見に来ていただいても、毎回違う物語をお見せできると思います。同じ作品を3回見たではなく、3種類の「私と彼の物語」を体感したと感じていただけると思うので、遠慮なく、何度もいらしていただければと思います。

新納 この作品は、演じるペアによって全く違うものになる作品です。その中にあって、“伝説の初演ペア”とか“レジェンド”と言われている僕たちのペアです(笑)。今回、僕たちは新しいものを作るつもりで臨みますが、それでも、僕たちには初演で0を1にした経験が埋め込まれているので、大きく違うものになることはないと思っています。そういう意味では、いろいろとアレンジはされていても、「純正品はこれだ」というものになると思います。ぜひ、「純正品」がどのようなものか確認しにきていただければ、と。でも、決して「初演ペアだからすごいものができる」と言っているわけではないですよ(笑)。ハードルは下げていただいて、「最初はこうだったんだな」というぐらいのお気持ちで来ていただければありがたいです。

(取材・文・写真/嶋田真己)

ミュージカル「スリル・ミー」

 ミュージカル「スリル・ミー」は、2021年4月に、都内・東京芸術劇場 シアターウエストほかで上演。
公式サイト https://horipro-stage.jp/stage/thrillme2021/

 

 


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