【インタビュー】舞台「迷子の時間-語る室2020-」松岡広大が語る舞台への思い「芝居をすることは生活の一部」

2020年10月26日 / 08:00

 前川知大・演出、亀梨和也が主演する舞台「迷子の時間-語る室2020-」が11月7日から開幕する。本作は、新生PARCO劇場のオープニング・シリーズの一作として上演されるもので、前川が、2015年に自身が主宰する劇団イキウメで上演した「語る室」をベースに新たに作り上げた。ある田舎町で突然失踪した1人の園児と、幼稚園送迎バスの運転手をめぐる事件を、独自のSF的な世界観でつづる。本作で、帰ることができない未来人を演じる松岡広大に、作品への意気込みや、舞台へ出演することへの思いを聞いた。

松岡広大 (ヘアメイク:RYO(ROI)/スタイリング:カワサキタカフミ)

-独自の世界観と、先が見えない展開で、脚本の段階から引き込まれる作品でした。松岡さんは、脚本を読んで、どんな感想を持ちましたか。

 非常に緻密で、芸術的な重なりのある作品だと感じました。文章だけでも完成されているので、これを役者が演じることで、どういった作品ができるのか、非常に楽しみです。

-今回、松岡さんは「未来人の和夫」という、とっぴな設定の役柄です。

 設定は飛躍していますよね(笑)。ただ、キャラクター自体は、すごく真面目な青年で、目の前で起きている物事を分析して、何が起こっているのかを推測していくクレバーさもある。そういったキャラクターなので、物語の核となるせりふも多く、ストーリーを中盤で盛り上げていきます。なので、いい意味でプレッシャーも感じながら演じていこうと思っています。

-現在(取材時は稽古前)は、どのようなところを意識して演じたいと考えていますか。

 まずは、ストーリーがお客さまにしっかりと見えるようにしたいです。この作品は、時が巻き戻ったり、時系列が入れ替わったりと、時間軸が複雑な作品なので、それをしっかりとつなげていくことが第一になるかなと思っています。すなわち、会話というものに重きを置くことだと考えています。

-確かに、時系列が入れ替わると混乱しそうですね。

 気を抜くと(観客が)置いていかれる可能性もあると思うんです。なので、お客さまには緊張感を持って見ていただきたい。そのためにも、きちんとテンションをかけていきたいと思いました。もちろんそれだけでなく、作中にはちょっとした笑いや、気を抜けるシーンもあるので、緩急のついた見応えのある作品になると思います。

-演出家としての前川さんの印象は?

 ビジュアル撮影のときにごあいさつさせていただいたのですが、「楽しみながら作っていきましょう」という言葉をおっしゃっていただき、全幅の信頼を置いて臨めそうです。これまでにも前川さんの作品は何作も観劇させていただいているのですが、人の五感を奪うことができる演出家さんだと思っています。例えば、何かに集中して見ていたら聴覚が奪われたり、突然視界にあるものが消えたり…。まるでマジックのような体験を客席でしました。きっと人間の潜在意識や、脳のメカニズムといったものを理解された上で演出をされているのだと思います。なので、この作品もきっと素晴らしいものになると確信しています。

-ここ数年、ストレートプレーからミュージカルまで、松岡さんの出演作品の幅がどんどん広がっているように感じます。何かターニングポイントがありましたか。

 舞台や芝居への意識が大きく変わったきっかけは、20歳になってすぐに劇団☆新感線さんの作品に出演させていただいたことだったと思います。ずっと出たいと思っていた劇団の、大好きな「髑髏城の七人」という作品にメインキャストとして出演できて、しかもIHIステージアラウンドという特別な劇場で公演できた。それは、同世代の俳優が嫉妬するような素晴らしい経験だったと思います。毎日、刺激的で、何もかもがすごくて、ぜいたくな経験でした。そこで、僕は「演技」ではなく、「芝居を演じる技術」というものを学べたと思います。演劇の先輩方からたくさんの金言も頂き、意識が大きく変わったと思います。

-芝居に対する思いに変化があったのですね。

 これまで、2.5次元作品にも出演させていただいていましたが、たくさんの経験をさせていただく中で、2次元のキャラクターにひょう依するというだけでは限定的な芝居になってしまうとは感じました。原作があるが故に、もちろんそれを順守するのですが、どうしても限界を感じてしまうところがあったんです。俳優として、僕自身が変化している部分もあるので、何か新たなチャレンジがしたいという思いもありました。世界的に活動したいという意味も含めて、僕は海外の演出家さんともご一緒したいと思っているんです。そうして、技術をしっかりと身につけていけたらいいなと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

岡本圭人、岡本健一と2度目の親子共演への思い 「成長した姿を見せられたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月27日

 若村麻由美と岡本圭人、岡本健一が出演する舞台「La Mère 母」と「Le Fils 息子」が2つの劇場で同時上演される。同作は、劇作家フロリアン・ゼレールによる家族三部作のうちの2作で、若村が主演する「La Mère 母」は日本初上演、 … 続きを読む

「光る君へ」第十一回「まどう心」互いの思いとは裏腹に、さらに開くまひろと道長の距離【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年3月23日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月17日に放送された第十一回「まどう心」では、藤原兼家(段田安則)によるクーデター“寛和の変”の事後処理、およびそれに伴う主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の行動が描かれた。  兼 … 続きを読む

【週末映画コラム】4K復元版で「ドル3部作」を一挙上映『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』

映画2024年3月22日

 監督セルジオ・レオーネ、音楽エンニオ・モリコーネ、主演クリント・イーストウッドという伝説のトリオが放った「ドル3部作」(「ドル箱3部作」と表記されることも多い)が、マカロニ・ウエスタン誕生60周年を記念し、4K復元版として3月22日から一 … 続きを読む

「生への回帰というのがこの映画の目指したところです」荒木伸二監督、若葉竜也『ペナルティループ』【インタビュー】

映画2024年3月21日

 朝6時、いつものように目覚めた岩森淳は、恋人の砂原唯(山下リオ)を殺した溝口登(伊勢谷友介)を殺害する。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、なぜか溝口も生きている。そして今日もまた、岩森は復讐(ふくしゅう)を繰り返していく。荒木伸二監 … 続きを読む

伊野尾慧、「新しいことに挑戦したい」 ミュージカル初出演で見せる新たな一面【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月20日

 バラエティーや映画やドラマといった映像作品だけでなく、朝の情報番組やトーク番組にもレギュラー出演し、多岐にわたって活躍しているHey! Say! JUMPの伊野尾慧が、4月9日から上演されるブロードウェイミュージカル「ハネムーン・イン・ベ … 続きを読む

Willfriends

page top