【インタビュー】朗読劇「私立探偵 濱マイク」-我が人生最悪の時- 佐藤流司「今年こそは激動の1年になる」

2021年1月29日 / 08:00

 原作、監督・林海象、永瀬正敏主演で人気を博したハードボイルド探偵シリーズの映画シリーズ第1弾『我が人生最悪の時 THE MOST TERRIBLE TIME IN MY LIFE』が、朗読劇として上演される。本作で主役の濱マイクを演じる佐藤流司に、役柄への思いや、朗読劇の魅力、公演への意気込みを聞いた。

濱マイク役の佐藤流司

-本作のオファーを受けたときの気持ちは?

 今、これからの自分の人生の指標として、多方面に攻めていこうと思っていたところなんです。人生、四半世紀が過ぎ、いろいろな方向にシフトしていって、さらに俳優・佐藤流司の幅を広げていきたいなと考えていたところに、このお話を頂き、自分自身が思う、今後やっていきたいお仕事にあまりにもぴったり合致していると感じました。なので、企画書を読んだり、キャストを聞く前に「やります」と即答したぐらい完璧でした。

-企画書を読まずに決めた、その決め手は何だったんですか。

 俺が企画書を見る前に、「やりたいです、お願いします」と言った作品で一番記憶に新しいのが、「笑ゥせぇるすまん」THE STAGEだったんですが、つまりそういうことです(笑)。見てくださる皆さんの想像の範囲を超えていきたいという思いがあって、それがこの作品だったし、「笑ゥせぇるすまん」だった。この作品は、俺が濱マイクを演じるという以前に、この作品を今、上演するという驚きもあるし、驚きがたくさんある作品というのが面白いと感じました。

-実際に台本を読んで、濱マイクという役柄についてどう感じましたか。佐藤さんとの共通点はありましたか。

 周りとのつながりを大事にするタイプだというのは、俺も、自分の中でも人生において意識してるところでもあるので、共通点だと思います。台本を読んだ段階では、得意分野の役だと感じたので、演じやすいのかなという気はしています。「HiGH&LOW」もそうでしたが、個人的には柄が悪い役柄の方が演じやすいんです(笑)。

-今現在は、どのように演じたいと考えていますか。

 (原作シリーズの)映像は、ドラマ1話だけしか見てないんですよ。見過ぎるとどうしても引っ張られてしまう気がしたので、本読みをして、自分の中で指標を決めたいと思っています。キャラを作っていくというよりは、自分が読んで想像したままに演じるのがいいのかなと今は感じています。似せにいっても本家には勝てないので、新しい世界観を作れたら、と。ただ、高尚には演じないようにしようとは考えています。例えば、語尾を投げ捨てるとか、せりふ一言一言を大事にし過ぎないことで、路地裏の世界観が出ると思うんです。あとは、単純に、見た目で分かりやすく、柄が悪い感じが出ると思うので、台本を片手で持とうかなと(笑)。

-この作品を通して、どんなことを伝えたいですか。

 作品の紹介として「普遍的な『友情』『正義感』『人への思い』」と書いてありますが、まさにそういったことだと思います。それから、今は、いわゆる中性的な、ジェンダーレスな格好よさがトレンドですが、真逆をいくこの作品で、いろいろな形の格好良さや面白さを伝えられたらと思っています。ただ、この作品に限らずですが、俺自身は、作品を見て何かを受け取ってほしいというよりは、ストレスや、日々、ためている鬱憤(うっぷん)が少しでも晴れて、楽しかったから頑張ろうと思っていただければ、それが一番だと考えています。好きに楽しんでもらって、ただ満足してもらえればそれでいいです。

-先ほど「これからは多方面に攻めていく」という話がありましたが、具体的には?

 もう文字通りです。ジャンルとして多方面にということももちろんですが、お芝居の幅という意味でも広げていきたいです。2.5次元作品に限定した話でいえば、俺は長く同じ役を演じさせていただくことが多いので、(「NARUTO-ナルト-」の)うちはサスケも(ミュージカル『刀剣乱舞』の)加州清光も、5年近くも演じさせていただいています。でも、そろそろ新しい役も見たくないですか? ということです。

-では、今後はどのような役者としての姿を目指しているのですか。

 2.5次元俳優に限らず、若い役者はアイドル的な目線でも見られることがあると思いますが、武骨だったり、ある種、アウトローだったり、とっぴな役を演じさせていただくことで、その殻を打ち破っていくようなお仕事をしていくことも重要かなと思っています。

-そうすると、仕事の選び方も変わってくるんですね。仕事は、フィーリングで選ぶことが多いのですか。

 そうですね、大体は。もちろんすごく魅力的なお仕事の話をたくさん頂けて本当ありがたい限りなんですが、俺は、例えば、料理にしても、お芝居にしても、味が濃い方が好きなんですよ(笑)。味が濃いお仕事を頂けると、すごく興味が湧きます。

-ところで、2020年はどんな1年でしたか。

 ダメダメな1年でした(笑)。昨年、「2020年は激動の1年になる」って言っていたのですが、自分が予定を立てたスケジュールとはかなり違った1年だったので、そういう意味では何もできませんでした。もちろん、その中でも新たな経験をさせていただくことも多くて、それはそれで幸せなことでしたし、ミュージカル『刀剣乱舞』~幕末天狼傳~は、中止になった公演がありながらも、20公演は上演することができました。でも、できずになくなってしまったお仕事もあり、悔しい思いもしたので、今年はそうならないようにしたいと思うからこそ、2020年は、なかなかもどかしい1年だったと振り返ることにします。

 
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