エンターテインメント・ウェブマガジン
NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。12月13日放送の第三十六回「訣別(けつべつ)」では、室町幕府第15代将軍の足利義昭と、それを支えてきた明智光秀(長谷川博己)に、運命の時が訪れた。従来の「室町幕府を滅亡させた愚かな将軍」というイメージをくつがえし、僧侶出身で人間的魅力にあふれた義昭を好演する滝藤賢一が、役に込めた思いを語ってくれた。
義昭は室町幕府の将軍ですが、貧しい人たちのために生きていたお坊さん・覚慶(かくけい)の時代から描かれているので、その思いを大切にしながら芝居をしてきました。将軍になった義昭は、父から受け継いだ「麒麟が来る平和な世の中」を目指していましたが、れっきとした武士だった父や兄の義輝(向井理)とは違うので、自分ができることは何なのか、悩んだはずです。結局、進むべき方向性が定まらず、いろいろな人たちを権力で押さえ込むようになってしまった。そういった背景から、義昭は弱い人だとも考えられます。
それを象徴するのが第三十六回、同じ志を持つ駒(門脇麦)が、貧しい人や病気の人を助けようとして集めてきたお金を、全て鉄砲に替えてしまった場面です。義昭は、「信長を倒せば麒麟がくる」と信じ、猪突(ちょとつ)猛進に突き進もうとしますが、結局ゴールすら見失ってしまう…。義昭の気持ちの弱さを感じた場面でした。
積もり積もったものもあったと思いますが、決定打になったのは、信長の比叡山・延暦寺への侵攻だったと思います。お坊さんも、女子どもも関係なく討ち取る非情な行動を知り、「信長に新しい世を作るのは無理だ。戦だらけの世の中になってしまう」と感じたのではないでしょうか。
映画『ヒミズ』など、染谷くんが出ている作品を拝見し、いつかご一緒したいと思っていました。染谷くんが信長を演じることに関しても、新しくて面白いな…と。現場では、信長という役としても、俳優としても、静かに圧力をかけてくる感じがして。それがまたいいんですよね。たまに本当に集中されていて、板場にずっと座っていたりするので、お尻が痛くならないのかな…と心配しています(笑)。
同じ考えを持ち、同じ平和な世を目指した唯一の理解者で、同志だったと思います。駒だけが義昭のことを分かってくれて、心が完全に通じ合っていた。だけど、義昭がその道からだんだん外れていったんでしょうね。
「戦をなくしたい」が義昭の最初の思いでしたが、最終的には「信長を討たないと麒麟は来ない」と考えるようになってしまった。もともとは「大名同士仲良くし、話し合いでことを収めてほしい」と言っていましたが、戦国時代なので誰も耳を貸さない。そういう状況の中で、義昭の考えは理想でしかなかった。初めは訴え続けていたものの、いざ幕府に入ってみると、全く通用しない。義昭はいろんな人間に挟まれて、いじめられ続けますし、とても苦しかったんだろうな…と。そういう意味で、駒と義昭は時代を先取りし過ぎていたんだと思います。戦国時代に生きるには、義昭は優し過ぎましたね。きっと、覚慶のままでいる方がよかったのではないでしょうか。
映画2025年9月16日
東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む
映画2025年9月12日
ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年9月12日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む
ドラマ2025年9月12日
NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年9月11日
中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む