「光秀との決別のシーンでは、長谷川さんの魂の叫びが聞こえてきた」滝藤賢一(足利義昭)【「麒麟がくる」インタビュー】

2020年12月13日 / 20:53

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。12月13日放送の第三十六回「訣別(けつべつ)」では、室町幕府第15代将軍の足利義昭と、それを支えてきた明智光秀(長谷川博己)に、運命の時が訪れた。従来の「室町幕府を滅亡させた愚かな将軍」というイメージをくつがえし、僧侶出身で人間的魅力にあふれた義昭を好演する滝藤賢一が、役に込めた思いを語ってくれた。

足利義昭役の滝藤賢一

-足利義昭をどんな人物だと捉えていますか。

 義昭は室町幕府の将軍ですが、貧しい人たちのために生きていたお坊さん・覚慶(かくけい)の時代から描かれているので、その思いを大切にしながら芝居をしてきました。将軍になった義昭は、父から受け継いだ「麒麟が来る平和な世の中」を目指していましたが、れっきとした武士だった父や兄の義輝(向井理)とは違うので、自分ができることは何なのか、悩んだはずです。結局、進むべき方向性が定まらず、いろいろな人たちを権力で押さえ込むようになってしまった。そういった背景から、義昭は弱い人だとも考えられます。

-なるほど。

 それを象徴するのが第三十六回、同じ志を持つ駒(門脇麦)が、貧しい人や病気の人を助けようとして集めてきたお金を、全て鉄砲に替えてしまった場面です。義昭は、「信長を倒せば麒麟がくる」と信じ、猪突(ちょとつ)猛進に突き進もうとしますが、結局ゴールすら見失ってしまう…。義昭の気持ちの弱さを感じた場面でした。

-織田信長(染谷将太)とは徐々に対立するようになっていきましたが、その心境の変化をどんなふうに捉えていましたか。

 積もり積もったものもあったと思いますが、決定打になったのは、信長の比叡山・延暦寺への侵攻だったと思います。お坊さんも、女子どもも関係なく討ち取る非情な行動を知り、「信長に新しい世を作るのは無理だ。戦だらけの世の中になってしまう」と感じたのではないでしょうか。

-信長役の染谷将太さんと共演した印象は?

 映画『ヒミズ』など、染谷くんが出ている作品を拝見し、いつかご一緒したいと思っていました。染谷くんが信長を演じることに関しても、新しくて面白いな…と。現場では、信長という役としても、俳優としても、静かに圧力をかけてくる感じがして。それがまたいいんですよね。たまに本当に集中されていて、板場にずっと座っていたりするので、お尻が痛くならないのかな…と心配しています(笑)。

-義昭と平民の娘・駒の交流も丁寧に描かれていますが、義昭にとって駒は、どんな存在だったのでしょうか。

  同じ考えを持ち、同じ平和な世を目指した唯一の理解者で、同志だったと思います。駒だけが義昭のことを分かってくれて、心が完全に通じ合っていた。だけど、義昭がその道からだんだん外れていったんでしょうね。

-というと?

 「戦をなくしたい」が義昭の最初の思いでしたが、最終的には「信長を討たないと麒麟は来ない」と考えるようになってしまった。もともとは「大名同士仲良くし、話し合いでことを収めてほしい」と言っていましたが、戦国時代なので誰も耳を貸さない。そういう状況の中で、義昭の考えは理想でしかなかった。初めは訴え続けていたものの、いざ幕府に入ってみると、全く通用しない。義昭はいろんな人間に挟まれて、いじめられ続けますし、とても苦しかったんだろうな…と。そういう意味で、駒と義昭は時代を先取りし過ぎていたんだと思います。戦国時代に生きるには、義昭は優し過ぎましたね。きっと、覚慶のままでいる方がよかったのではないでしょうか。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

草笛光子「老女がはちゃめちゃな、摩訶不思議な映画ですから覚悟してご覧ください(笑)」『アンジーのBARで逢いましょう』【インタビュー】

映画2025年4月3日

 突然町に現れ、いわくつきの物件でバーを開店した白髪の女性と町の人々との不思議な交流を描いたファンタジー映画『アンジーのBARで逢いましょう』が4月4日から全国公開される。本作で主人公のアンジーを演じた草笛光子に話を聞いた。 -まず、出演に … 続きを読む

門脇麦、「芝居に対してすごく熱い」田中圭と夫婦役で5度目の共演 舞台「陽気な幽霊」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月2日

 田中圭を主演に迎え、若村麻由美、門脇麦、高畑淳子ら豪華共演者で贈る舞台「陽気な幽霊」が5月3日から開幕する。本作は、20世紀を代表する劇作家ノエル・カワードによるウェルメイド・コメディー。1945年にはデヴィッド・リーン監督により映画化も … 続きを読む

今田美桜「『アンパンマン』のように、幅広い世代に愛される作品に」連続テレビ小説「あんぱん」いよいよスタート!【インタビュー】

ドラマ2025年4月1日

 3月31日から放送スタートしたNHKの連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、何者でもなかった朝田のぶと柳井嵩(北村匠海)の2人が、数々の荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『 … 続きを読む

坂本昌行&増田貴久がミュージカルで初共演「笑顔になって、幸せになって帰っていただけたら」 ミュージカル「ホリデイ・イン」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月1日

 坂本昌行と増田貴久をはじめとした豪華キャストが出演するミュージカル「ホリデイ・イン」が4月1日から開幕する。本作は、1942年に公開された映画『Holiday Inn』(邦題『スウィング・ホテル』)をもとに舞台化されたミュージカル作品。「 … 続きを読む

藤原竜也が挑む「マクベス」 「1日1日、壁を突破することが目標」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月29日

 2024年5月にスタートした、吉田鋼太郎が芸術監督を務める【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】。待望の二作目となる「マクベス」が、藤原竜也を主演に迎え、5月8日から上演される。藤原に初めて挑む「マクベス」への思いや吉田とのクリエイトに … 続きを読む

Willfriends

page top