【大河ドラマコラム】「麒麟がくる」 第三十四回「焼討ちの代償」信長の一瞬の表情ににじむ光秀とのすれ違い

2020年11月30日 / 17:27

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。11月29日放送の第三十四回「焼討ちの代償」では、織田信長(染谷将太)の比叡山焼き討ちに反発した反信長派の摂津晴門(片岡鶴太郎)が、将軍・足利義昭(滝藤賢一)を後ろ盾にした筒井順慶(駿河太郎)と、信長に従う松永久秀(吉田鋼太郎)の代理戦争を画策。義昭と信長との間で戦が起きることを恐れた明智光秀(長谷川博己)が、和平工作に尽力する様子が描かれた。

明智光秀役の長谷川博己

 いよいよ義昭と信長の不和が表面化し、室町幕府崩壊の足音が聞こえてきた。だが、ここでもう一つ気になることがある。それは、光秀と信長の微妙なすれ違いだ。

 今回、それは冒頭で描かれた。比叡山焼き討ちを終え、「こたびの勝ちは、そなたに負うところ大じゃ」と上機嫌な信長に対して、光秀は「一人残らず殺せ」という信長の命令に反して、女、子どもを見逃したことを謝罪。(言わなきゃいいのに…とも思うが、それを言ってしまうところが、真っすぐな光秀らしい)。

 これに対して信長は「それは、聞かぬことにしておこう。他の者ならその首、はねてくれるところじゃ。(中略)以後は、みな殺せ」と告げた後、ニコッと笑って「この度の一番手柄は、そなたであることには変わりはない」と賞賛し、奪い取った土地を褒美として光秀に与えた。

 言葉だけを追うと、度量の広い信長が、命令に違反した光秀を諭しつつ、大らかに許しているようにも思える。だが、「以後は、みな殺せ」と告げる際に信長が見せた冷たい表情には、別の感情が宿っているように見えた。

 それは、「味方であっても、逆らう者には容赦しない」という厳しさだ。しかし、このとき、頭を下げていた光秀はその表情には気付かず、信長が去った後、意外な成り行きに真意を測りかねたような顔をする。

 光秀に対して信長がこのような表情を見せたのは、今回が初めてではない。第二十七回「宗久の約束」で、信長が「義昭さまのおそばに仕えるのか、それとも、わしの家臣となるか」と決断を迫った際も、光秀が「将軍のおそばに参ります」と答えると、「期待を裏切られた」といった様子で表情を一変させ、冷たく「残念だが、分かった」と言い放っている。

 いずれも、光秀が信長の意に沿わない行動を取ったときだ。画面に集中していないと、見逃してしまいそうな短い出来事だが、これがあるのとないのとでは、視聴者が受ける印象は大きく異なる。その他のシーンでは、2人は固い絆で結ばれているように描かれているからだ。

 
  • 1
  • 2

Willfriends

page top