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第149回直木賞を受賞した、桜木紫乃の自伝的代表作を映画化した『ホテルローヤル』が11月13日から公開される。本作は、北海道・釧路湿原を背に建つラブホテルを舞台に、ホテルの一人娘とホテルを取り巻く人たちの人間模様を描いた作品。桜木自身を投影した、ホテル経営者の娘・雅代役を演じた波瑠に、役作りへの思いや、撮影中のエピソードを聞いた。
直木賞を受賞された当時に読ませていただきましたが、映画の中で内田(慈)さんと正名(僕蔵)さんが演じられていたパートが好きでした。
非日常にやってきたご夫婦の日常が垣間見られるというのが、このシーンの魅力だと私は感じました。普段、例えば、奥さんが髪を振り乱して介護をしていたり、子どもの世話をしていたり、という想像をかき立てられて、ある種の切なさを感じました。
雅代は、いつもどこか傍観者で、起こる状況の中心にはいない人だと感じました。それを自分でも自覚していて、それをコンプレックスにも思っていて、いつも所在なさげで、かわいそうにも思えるけど、悲劇のヒロインには成り切れないような曖昧さがある。その中途半端にも見えるところが、彼女の人間味になればいいなと思って演じていました。
作品全体を通してでもありますが、雅代にしろ、母親のるり子さんにしろ、「自分がいるべき場所はほかにあるんじゃないか」と、思いをはせてしまう感覚は、私だけでなく、誰にでもあるものなのではないかなと思います。もちろん、その環境にとどまり続けているのは、自分が動かないからで、自業自得ではあるんです。でも、「あれも嫌、これも嫌。何もしない自分が一番嫌だ」という思いは、私も理解できます。
思春期ってすごく多感な時期ですよね。自分の置かれている境遇に不幸を見つけようとするところもあると私は思うんです。親の気持ちも理解できないから、雅代は「勝手に産んだくせに」とか、「親がラブホテルを経営しているなんて」とか、「子どもは親を選べないのに」といった複雑な思いが絡まっていたんだと思います。
ただ、この作品は、見る視点によっても全く違った物語になります。私自身も、同世代に親になる人も増えてきて、その中で一人の命をおなかの中で育てて産むということが、どれだけ大変かが分かるようになってきました。そうすると、この作品も親の目線でも見られるようになってきて、雅代の親たちの思いも理解できるのですが、雅代にはまだそれは分かっていなかったのだと思います。
東京で生まれ育った私には、北海道の広い空を故郷に持つ人たちは憧れでもあります。けれど、美しい釧路湿原も、雅代にとっては閉塞感を感じるものにしか見えない。「そこにいて過ごした人」にしか理解できない感覚に苦しめられている女性というのを表現したいと思って演じました。
ラブホテル感が伝わってくるものだったと思います。物語の中で、(安田顕演じる)大吉さんが、「非日常の中だからいいんだ」と言っていますが、まさしくその言葉を表したお部屋だと思いました。リアルだなと思わせる説得力がありました。
そうなんです。いつ来ても非日常を味わえるように、日当りがいい部屋なのに、窓を閉めると真っ暗になるという工夫もされていて、なるほどと思いました。
映画のプロモーションで、安田さんとご一緒することも多かったのですが、現場でお会いしているときは、大吉さんとしてその場にいてくださっていたので、普段の安田さんを見ると、こんなにお若かったんだと驚きました(笑)。大吉さんは、安田さんよりも年上の設定だったので、老けメイクをされていましたし、安田さんは不自然に思わせないたたずまいをされる方だったので、信頼して撮影に臨めました。質の高い役作りをされる役者さんとご一緒できたんだなと、改めて思い返しています。
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