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12月7日からPARCO 劇場オープニング・シリーズ「チョコレートドーナツ」が上演される。原作は、日本でもロングランヒットしたトラビス・ファイン監督の映画『チョコレートドーナツ』。1979 年のウェスト・ハリウッドを舞台に、ショーパブの口パク・ダンサーとして働くゲイの男性ルディが、ゲイであることを隠す検察官ポールと共に、育児放棄されたダウン症の少年マルコを育てる様子を描く。世界初舞台化となる本作では、ルディを東山紀之、ポールを谷原章介が演じ、演出を宮本亞門が務める。今回は谷原と宮本に、舞台の見どころや、東山の印象などを聞いた。
宮本 2015年にPARCOさんからお話を頂いて、京都に来ていたトラビス監督と初めてお会いしたんです。彼が舞台化を考えているということで、僕も映画版を見ていたので、「ぜひ」と答えたのがきっかけでした。お昼だったのですが、酒を飲みたいぐらい盛り上がりました(笑)。
谷原 僕だったら絶対に飲みますけど(笑)。
宮本 飲みたかったんですけど、状況が状況だったので(笑)。彼とは、映画版の製作秘話などで、いろいろと盛り上がって、「ぜひ、君に舞台版を作ってほしい」と言っていただいたんです。
谷原 現代でもセクシャル・マイノリティーというのは、僕ら、いわゆるノーマルとされているヘテロ・セクシャルな人と比べると、日々、無意識のうちに感じるストレスが多いと思うんです。それが70年代はもっと深くて、さらに、貧乏やマルコのダウン症もあって、苦しい立場の人が、さらに社会の片隅に追いやられていくというのが、実話だと知ったときにすごく考えさせられました。
宮本 一歩間違えたらマイノリティーのかわいそうなお話になりかねないんだけど、愛情の話なんです。だから、場所や差別などのジャンルに関係なく、人が愛し合ったところに真実が生まれるということを大切にしたい、と思いながら舞台版を作ろうと考えています。
宮本 映画版に対するリスペクトを大切にしつつ、「どういう人生を歩んだことで、こういう状態になったのか」という、映画では描かれていない裏側も、舞台として構築しています。それと、ルディが場末のパブで歌っていることから、音楽劇のような形にしています。マルコと出会ったことによってルディとポールが成長していくという旅路が明確になって、次に向かっていき、それが、映画の最後にルディが歌う「アイ・シャル・ビー・リリースド」の「エニー・デイ・ナウ(いつの日か)」という歌詞につながっていく。今回、東山さんが歌うことになりますが、そこにつながっていけばいいなと。だから、映画版よりも音楽をたくさん入れて、その中の感情も込めながら舞台を作りたいです。
谷原 ゲイのショーパブでは、本物の歌に合わせて口パクで歌うのが定番ですが、東山さんが、最後以外にも実際に歌われるシーンがあるそうなので、そこは楽しみです。それと、ダブルキャストでマルコを演じる高橋永さんと丹下開登さんという、本当にダウン症のあるお二人が、舞台に立つというのは強い魅力です。写真撮影でご一緒したんですけど、センシティブな分、ピュアで光輝く強さみたいなものを感じました。映画のルディとポールがマルコに寄り添っていたように、お二人に僕も寄り添っていきたいと思っています。
宮本 そこはあえて入れています。映画版は少し重い作品だと感じたので、少し切なさが残って。でも、どこか笑いもあって、というふうにしたくて。ミュージカル、とまでは言わないですけど、そういう論法を使って、楽しみながらも、心の奥に響く作品にしたいと考えています。
谷原 ルディはエネルギッシュで、物語をぐいぐいと引っ張っていくんですけど、ポールは彼を支え、マルコを支え、そして観客の皆さんとの間にもいるんです。ダンサーとして踊っているルディも、パートナーとしても、そして、この状況で戦い、マルコを助けようとするルディも大好きです。だから、ポールとしてルディの一番のファンでありたいと思っています。
宮本 「ヴィジョン!ヨコハマ」でお会いする前は、もう少しプレーボーイな方かと思っていたんです。すみません(笑)。
谷原 本当ですか? まあまあ遊んではいましたけど(笑)。
宮本 (笑)。でも、全然そうじゃなくて、スタッフの側にまで気を使ってくれる、根が優しい人で、そこからいろんな舞台も見せてもらって、この人は、いい意味で、役者の入るものと客観性、という二つをちゃんと持っている方だなと興味を持ったんです。ポールにはそういうところもあって、自分にないものをルディに求めて感化されていき、裁判で初めて感情をあらわにしていくというのが、すごく面白くて、そういう谷原さんを見てみたいです。
谷原 そういうふうに見てくださっているのはうれしいです。僕は周りのことを考えてしまうことがあるんですけど、周りの方に気を使ってあげたから、ちょっと、ここは譲ってくれないかなというエゴもあるんです。だから、常に相手に合わせているわけではないので、こっちの方がわがままかもしれません。様子を見ていて、カードをずっと持っているという感じです(笑)。
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