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映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の製作35周年を記念して、「バック・トゥ・ザ・フューチャー トリロジー 35th アニバーサリー・エディション 4K Ultra HD + ブルーレイ」が10月21日から発売される。今回は、マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティ・マクフライの吹き替えを担当した宮川一朗太に、マイケルへの思いや、吹き替えの裏話を聞いた。
そうですね。あれは20代前半のときです。吹き替えの仕事は初めてでしたので、果たして僕の声が本当にマイケルに合うのだろうかと、とても不安に思いながら始めました。また、当時のマイケルは超人気者でしたから、彼のファンから不評を買うのではないかと心配しましたが、実際は好評を頂きまして、ホッとしたのと同時に、「これでいいんだ。受け入れてもらえたんだ」と感じて、肩の荷が降りたことをよく覚えています。それからは自信を持ってやれるようになりました。
僕も「当然いつかはできるだろう」と思っていたのですが、それが何年たっても声が掛からない…。なので、僕は「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だけはやっていない。マーティをやりたい。やらないと死ねない。死んでも死に切れない」と言い続けてきました(笑)。ただ、そうは言っても、「夢は夢のままで終わるのかな」という諦めの気持ちもありました。ところが、6年前にBSジャパンさんからお話を頂いて、そのときは「ついに来た」と、もう震えました。そしてBSジャパンの担当者の方が、「ファミリータイズ」からずっと僕のファンでいてくださっていて、いつか僕の声でマーティをやってほしいと思いながら、ずっと働いてきたと。そして、いよいよ責任のある立場になれたので実現させた、という話を聞いて、とても感激しました。ですから、本当にいろんな方々の尽力で実現した、僕にとっては感無量の作品になりました。
三ツ矢さんと山寺さんに比べたら、僕はやっぱり下手なんです。もちろん声優としての力量はお二人の足元にも及びませんし、僕は声優にはタブーとされている、せりふの途中や語尾に息を混じらせたり、息を漏らす、ということをやっています。これは役者の発生法で声優さんはやりません。漏らさないでちゃんと有声音で止めます。でも、それが、マイケルのへたれさや情けなさ、いいかげんさにはすごく合うんです(笑)。僕のマーティは、「こういうへたれなやつ、いるよね」とか、「あいつに似ているね」というように、一番身近に感じてもらえるマーティだと思います。そういう目と耳で楽しんでいただければ、僕にとっては幸いです。
もちろんそうです。これは「ファミリータイズ」のときに無意識にやっていたのですが、3話目か4話目のときに、「マイケルの声って裏返らせるととても効果的だな」と気が付いたんです。彼は身振り手振りが大きいので、これに合わせて声に強弱や高低を付け、それに加えて、声をひっくり返らせることで、彼の適当さや、いいかげんな感じが、とてもよく出ることに気付きました。それからはずっと、いかに効果的にそれを使うかが、僕にとっては重要なチェックポイントになっています。
マイケルが主演した「スピン・シティ」(96~02)の吹き替えのときに、プロデューサーから「ちょっと子どもっぽい。もう少し青年ぽくやってくれないか」と言われました。それからは「マイケルも年を取ったので、それなりのイメージにしなければ」と思いながらやってきたのに、6年前に、この約30年前のマイケルの声を吹き替えるとなったときは、僕自身も「思い出さなきゃ」というところで悩んだ記憶はあります。それに、ずっと「やりたい」と言い続けていた作品がついに来たけど、今度は「失敗できない」というプレッシャーがのしかかってきました。「あそこまで言い続けたやつが、やってみたら大したことなかった」と言われたら最悪です(笑)。だからもう気合を入れて、この『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だけは、原盤と台本をもらって、家で自分の携帯に全部声を合わせて入れて、画面に合わせながら再生して聴いて、細かい部分をチェックして、もう一度録り直して、また聴いて…。つまり自分で一度収録したんです(笑)。1作につき、10時間ぐらい作業しました。3作だから全部で30時間ですか。それぐらい全身全霊を懸けて臨んだ作品です。
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