【インタビュー】ミュージカル「生きる」村井良大「さらに色濃く『生きるとは何だ』ということを提示できると思います」

2020年9月18日 / 12:00

 映画監督・黒澤明の代表作『生きる』(52)を世界で初めてミュージカル化した、「黒澤明 生誕110年記念作品『ミュージカル 生きる』」の再演が、10月9日から上演される。本作は、市村正親と鹿賀丈史がWキャストで主人公の渡辺勘治を演じ、余命半年を告げられた男の人生を通して、「人生をどう生きるか」という普遍的なテーマを問いかける物語。勘治の息子・光男を演じる村井良大に、本作の魅力や公演に懸ける意気込みを聞いた。

渡辺光男役の村井良大

-村井さんは2020年版からの新キャストとして出演しますが、出演が決まって、まずはどんな気持ちでしたか。

 ちょうどこの作品への参加が決まる前に、僕は「デスノート THE MUSICAL」という作品に出演させていただいていたんです。「デスノート 」は、東京、静岡、大阪、福岡公演を予定していたのですが、新型コロナウイルスの影響で、大阪と福岡公演が中止になってしまい、大千秋楽を迎えることなく終わってしまいました。予想もしていなかった終わり方で、僕自身、さまざまな思いがめぐっていたのですが、そのときに、「デスノート」のプロデューサーさんから、「生きる」への出演のお話を頂きました。「デスノート」ではきちんとした形で終わることができなかったけれども、そのときの思いを受け継いで、この舞台に立たせていただくことに感謝をしながら、今回はしっかりと大千秋楽を迎えたい。それができるということが、僕にとっては一番の喜びでした。

-初演はご覧になっていますか。

 はい、映像で拝見しましたが、1幕が終わるときには、完全に物語の中に引き込まれていて、心をわしづかみにされました。この作品は、2018年に初めてミュージカル化された作品ですが、長い間、上演され続けてきたようななじみ深さがあって、スッと入っていけるのが不思議でもあり、魅力でもあると感じました。まるで、みんなが知っているお話であるかのように、スムーズに観客の心をとらえて進んでいくのが素晴らしいと思います。

-「デスノート」も、本作も、日本で生まれたミュージカルです。日本らしさは感じますか。

 日本人だからこそ作ることができた作品だとは僕も感じました。日本人独特の節回しがあるんです。それは、僕たち日本人の役者にとっては、とてもやりやすいことですし、作品の面白さにもつながるものだと思います。特にこの作品は、昭和の時代の話なので、「古き良き日本」が描かれています。

-今現在、村井さんが演じる渡辺光男というキャラクターをどう捉えていますか。

 父親の勘治とはうまくコミュニケーションが取れず、それをずっと引きずっていますが、彼自身は、非常に素直に生活している人物だと思います。そして、彼の目の前には、奥さんとのこれからの未来という明るい世界が広がっています。そんなとき、勘治が死を宣告されてしまう。勘治はそれを息子に打ち明けられず、歯車が少しずつずれていってしまいます。すごく古典的で、分かりやすい物語で、観客の皆さまは歯がゆい思いをするシーンも多いかと思います。昔の演劇のようなストーリー展開で、それが僕は面白いなと感じました。

-昔の演劇という表現は分かりやすい説明ですね。音楽的にも決して古くさいわけではないのに、耳になじむので、どこか懐かしさを感じます。

 そうなんです。しかも、作曲しているのはジェイソン・ハウランドさんなんです。外国の方なのに、日本人の心を的確に捉える曲を作ってくださっています。憂いのある、心にしみる曲ばかりなので、僕も初演を見て感動し、音楽が与える感動や、感情の動きは万国共通なものなんだなと改めて感じました。ジェイソンさんなくしてこのミュージカルは完成しなかったと思います。

-主演の市村さん、鹿賀さんの印象は?

 市村さんの「生涯現役でいる」という思いや、エネルギーの強さに圧倒されています。今でも踊りのトレーニングをされていたり、稽古に入る前には入念にアップされてから入る姿を拝見していて、そのプロフェッショナル感が素晴らしいと感じています。自分を鍛錬し、ずっと第一線でいることはそうそうできることではないと思います。本当にすてきな役者さんで、尊敬しています。

 鹿賀さんはどこかミステリアスな部分をお持ちで、舞台に立ったときに、強い輝きを放つ希有な役者さんだと思います。舞台上に「鹿賀丈史」として立っていながら、「渡辺勘治」としても存在している。その共存が素晴らしいですし、どうしたら、あれほどきれいに共存できるんだろうと不思議で、僕も少しでも近づけたらと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

黒崎煌代 遠藤憲一「新しいエネルギーが花開く寸前の作品だと思います」『見はらし世代』【インタビュー】

映画2025年10月15日

 再開発が進む東京・渋谷を舞台に、母の死と残された父と息子の関係性を描いた『見はらし世代』が10月10日から全国公開された。団塚唯我のオリジナル脚本による長編デビュー作となる本作で、主人公の蓮を演じた黒崎煌代と父の初を演じた遠藤憲一に話を聞 … 続きを読む

草なぎ剛「今、僕が、皆さんにお薦めしたい、こういうドラマを見ていただきたいと思うドラマです」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」

ドラマ2025年10月14日

 草なぎ剛主演の月10・新ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時/初回15分拡大)が13日から放送スタートとなった。本作は、妻を亡くし、幼い息子を男手一つで育てるシングルファーザ … 続きを読む

川島如恵留「僕にとって一番の幸福は、メンバーといられること」 初の単独主演舞台に挑む【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月13日

 Travis Japanの川島如恵留が主演する舞台「すべての幸運を手にした男」が11月14日から東京グローブ座で上演される。世界を代表する劇作家アーサー・ミラーの初期の名作として名高い本作は、主人公デイヴィッド・ビーヴスに思いもかけない幸 … 続きを読む

妻夫木聡、佐藤浩市「この物語は馬と人の継承を描いていると感じました」日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」【インタビュー】

ドラマ2025年10月12日

 TBSでは、10月12日(日)午後9時から、妻夫木聡が主演する日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」が放送スタートする。本作は、競馬の世界を舞台に、ひたすら夢を追い続けた熱き大人たちが、家族や仲間たちとの絆で奇跡を起こしていく、人間と競走馬の … 続きを読む

中村ゆり「草なぎ剛さんは包容力があって“人の痛み”が分かる方」 ドラマ「終幕のロンド」【インタビュー】

ドラマ2025年10月10日

 草なぎ剛が主演する月10ドラマ「終幕のロンド —もう二度と、会えないあなたに—」(カンテレ・フジテレビ系)が、13日から放送がスタートする。本作は草なぎが演じるシングルファーザーで遺品整理人の鳥飼樹が、遺品整理会社の仲間と共に仕事に向き合 … 続きを読む

Willfriends

page top