「ドラマの顔は二階堂ふみちゃん」窪田正孝(古山裕一)【「エール」インタビュー】

2020年3月26日 / 08:32

 「栄冠は君に輝く」「六甲おろし」など昭和の音楽史を代表する楽曲を生み出した作曲家・古関裕而と妻で声楽家の金子をモデルに、激動の昭和の時代を音楽とともに生きた夫婦の姿を描く連続テレビ小説「エール」。主演の窪田正孝は「ドラマの顔はふみちゃん」と、朝ドラ初出演で、自身が演じる古山裕一役の妻・関内音役の二階堂ふみを立てる。窪田が、二階堂と作り上げる“同業夫婦について、また、作品に込めた思いや、撮影中のエピソードなどを語った。

古山裕一役の窪田正孝

-玉山鉄二さん主演の「マッサン」以来、6年ぶりに男性が主人公の朝ドラですが、意気込みをお聞かせください。

 僕は、このドラマの顔はふみちゃんだと思っているので、彼女が一番輝ける瞬間をたくさん作っていきたいです。なので「主役だから…」という気負いはありません。ただ、主演が決まったときは、家族や親戚が喜んでくれて、僕もワクワクしたので、家族はもちろん、視聴者の方にも楽しんでもらえるドラマを目指したいです。

-「ゲゲゲの女房」「花子とアン」に次ぐ朝ドラ出演ですが、久しぶりの現場はいかがですか。

 朝ドラは、基本的に月曜日から金曜日まではスタジオ撮影、土日は休みと決まっていて、会社員のような生活になりますが、僕としてはリズムが決まっている方が楽なので助かっています。現場は、皆さんが生き生きとして笑いが絶えず、音楽があるシーンではキャストはもちろん、カメラマンもカメラをのぞきながらリズムを取るほど一体感があります。

-裕一役にはどのようにアプローチしていきましたか。

 古関さんの関係者や知人の方に話を聞く機会がありましたが、誰も彼のことを悪く言う方はいませんでした。それが全てだと考え、役作りの肝にしました。無邪気で人を憎まず、もし怒る瞬間があっても、後に怒りを愛情に変えていく素晴らしい人格者だと思います。また、戦争を体験し、人の痛みを肌で感じとっていたからこそ、人に寄り添う音楽を作ることが古関さんにとっての一番の幸せになったのではないでしょうか。そんな音楽の力で人々を優しく包み込む姿を大切にしようと思いました。

-実在の人物がモデルの役を演じることのプレッシャーはありますか。

 古関さんの人柄や性格は大切にしていますが、あくまでもモデルなので、あまり情報を入れ過ぎないようにしています。古関さんには後ろから見守ってもらっている感覚です。

-音楽家ということで、練習はいろいろと大変だったのでは?

 9月にクランクインしましたが、その1カ月ほど前から、ハーモニカ、オルガン、指揮、楽譜の書き方などを練習しました。すごく大変で、自分がここに座っていると、各パートの先生が回転寿司のように回ってきて教えてくださる感じでした(笑)。撮影では吹き替えを使わず、自分で演奏したので緊張もしましたが、裕一の心情の変化によって音が変わるところは面白かったです。例えば、人生のどん底の中で吹くハーモニカは音が外れていたり、音になっていなかったり、苦しいときは指揮棒を振る力が強くなったりしました。監督からは「音楽として成立していないけど、気持ちが表れているからOK」と言っていただいたこともありました。

-好きなパートは何でしょうか。

 一番楽しくて好きなのは指揮です。プロの演奏家が僕の指揮に合わせて奏でてくれるから気持ちがいいです。実は、中学校の文化祭の合唱コンクールで指揮を務めたこともあるんです。じゃんけんで負けたからですが…(笑)。逆に、ハーモニカはすごく難しいです。

-窪田さんが「ドラマの顔」とおっしゃる二階堂さんや、彼女が演じる音にはどのような印象を持たれていますか。

 ふみちゃんはムード―メーカーで、現場にいると雰囲気が明るくなります。お芝居は事前に作りこみ過ぎず、そのときの感覚を大切にされているようです。それは他の共演者も同じで、ある程度の余白を持ち、相手の芝居に応じて臨機応変に動いているので、皆さん演じやすいんじゃないかな。音さんは裕一を進むべき道に導いてくれる、ものすごく強い奥さんですが、人前では一歩下がって夫を立ててくれる一面もあります。自分にうそをつけない真っすぐなところを、ふみちゃんが説得力を持って演じてくれているので、モデルとなった金子さんはこういう方だったんだろうなと素直に思えます。

-音楽の世界で共に生きる裕一と音の夫婦の形についてはどう思われますか。

 同業の夫婦は、仕事のことをいろいろ話し合ったり、理解し合えたりするところが強みだと思います。劇中、裕一が作曲中に煮詰まり、音に歌ってもらうことでヒントを得るシーンがあるのですが、同じ音楽の世界で生きているといっても、作曲家と声楽家でジャンルが違うので、お互いにないものを補い合い、2人で手をつないで、横並びに歩いている感じもすてきだと思いました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】「2025年映画ベストテン」

映画2025年12月28日

 今回は、筆者の独断と偏見による「2025年公開映画ベストテン」を発表し、今年を締めくくりたいと思う。 【外国映画】  2025年公開の外国映画を振り返った時に、今年の米アカデミー賞での受賞作は最近の映画界の傾向を象徴するようで興味深いもの … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】家族の情緒が国境を越える、俳優ムン・ソリが語る「おつかれさま」ヒットの理由

ドラマ2025年12月26日

 今年のヒットドラマ、Netflixシリーズ「おつかれさま」。子どもから親へと成長していく女性の人生とその家族を描き、幅広い世代から支持され大きな話題を呼んだ。IU(アイユー)との二人一役で主人公エスンを演じたムン・ソリに、ドラマの振り返り … 続きを読む

田中麗奈「こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います」『星と月は天の穴』【インタビュー】

映画2025年12月24日

 脚本家としても著名な荒井晴彦監督が、『花腐し』(23)に続いて綾野剛を主演に迎え、作家・吉行淳之介の同名小説を映画化した『星と月は天の穴』が12月19日から全国公開された。過去の恋愛経験から女性を愛することを恐れながらも愛されたい願望をこ … 続きを読む

天海祐希、田中哲司、小日向文世、でんでん、塚地武雅「12年の集大成を見届けてください!」大ヒットシリーズ、ついに完結! 劇場版「緊急取調室 THE FINAL」【インタビュー】

映画2025年12月23日

 2014年1月にスタートしたテレビ朝日系列の大ヒットドラマ「緊急取調室」。たたき上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った特別取調室で取り調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班(通称:キントリ)」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一 … 続きを読む

【映画コラム】時空を超えた愛の行方は『楓』『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』『星と月は天の穴』

映画2025年12月20日

『楓』(12月19日公開)  須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・ … 続きを読む

Willfriends

page top