「明智光秀を中心に、英傑たちが台頭してくる戦国時代の始まりを描く」落合将(制作統括)【「麒麟がくる」インタビュー】

2020年1月18日 / 12:00

 1月19日、待望の大河ドラマ「麒麟がくる」がついに放送開始となる。「本能寺の変」を引き起こした明智光秀(長谷川博己)を主人公に、斎藤道三(本木雅弘)や織田信長(染谷将太)など、群雄割拠の戦国時代を駆け抜けた英傑たちの物語が、1年にわたって描かれていく。放送を前に、制作統括の落合将が、作品に込めた思いや見どころなどを語った。

「麒麟がくる」から

-大河ドラマとしては3年ぶりに戦国時代が題材となりましたが、その理由は?

 ここ数年、「西郷どん」(18)では幕末、「いだてん」(19)では近現代を扱ってきました。今年は2020年という節目の年でもあることから、大河ドラマも原点に戻り、最も人気のある戦国時代をやろうと。ただ、戦国時代というと、これまでは「真田丸」(16)のように関ケ原前後か、その少し前の武田信玄や上杉謙信が活躍した後半の時代を描くことが多かったんです。そんな状況の中、最近は「オリジン」や「ビギニング」といった物事の起源を描く物語が多い(映画『ジョーカー』など)ということもあり、斎藤道三や北条早雲、三好長慶といった英傑たちが台頭している戦国時代の始まり、揺籃期とでもいうべき時代を描いてみるのも面白いのではないかと。

-その主人公が明智光秀に決まった経緯は?

 そんな話を池端(俊策/脚本)さんにしたところ、池端さんの方では「太平記」(91)で室町幕府を開いた足利尊氏を書いたので、今度は室町の終わり、足利義昭を書きたいということでした。それが、「戦国の始まり」というこちらの希望と、ちょうど時代的に一致したわけです。さらに、その時代をどう描くか考えていく中で、信長と義昭をつないだ人物であることに加え、裏街道を歩んできた人を好む池端さんの視点や、40歳までの人生が謎に満ちており、今まであまり扱われてこなかった点などを総合的に考えて、明智光秀を選びました。池端さんも、大きな時代の転換点を一人の青年の視点で切り取ってみたい、ということでしたので。

-脚本を池端さんに依頼した理由は?

 今回は戦国時代ということで、脚本を誰に依頼しようかと考える中で、古代史三部作(「聖徳太子」(01)、「大化改新」(04)、「大仏開眼」(10))や、「夏目漱石の妻」(16)、脚本監修をお願いした「坂の上の雲」(09~11)など、NHKの歴史ドラマとなじみの深い池端さんの名前が上がってきました。さらに僕自身、池端さんの書かれた1980年代のテレビドラマを見て育ったという個人的な思いもありました。しかも、池端さんは戦国時代を書いたことがないとのことだったので、池端さんの歴史ドラマの集大成としてぜひこの機会に、とお願いしました。

-池端さんの他、前川洋一さんと岩本真耶さんが脚本家として参加されていますね。

 池端さんのサポート的に一部、「軍師官兵衛」(14)の前川さん、池端さんと一緒に「夏目漱石の妻」を書かれた岩本さんに加わってもらっています。ただ、あくまでもシリーズ構成は池端さんで、池端さんを中心に、お二人にはその世界観を共有して書いていただくという形です。

-タイトルが「麒麟がくる」に決まった経緯は?

 「麒麟」は中国の「史記」に登場する聖獣で、「穏やかな治世になると現れる」と言われています。池端さんが最初にこの話をしてくれて、僕たちも気に入ったので「タイトルに使いましょう」ということになりました。僕たちがやりたかったのは、「誰かが革新的なことを成し遂げたおかげで、今の日本が出来上がった」というドラマではなく、「その時代にどんな人間たちが、どんなことを考え、どんなふうに動いていたのか」という群像劇です。であれば、タイトルは個人の名前よりも、「麒麟を求める人たちの物語」として、その中心にいるのが明智光秀、という形がいいだろうと。そこから、「麒麟」という言葉を使った案を検討した結果、このタイトルに決まりました。

-そこに込めた思いは?

 昭和とその名残を残す平成という時代が終わり、元号が「令和」に変わった現在は、大きな時代の転換期と言えます。そういう時期に、室町という時代が終わり、同じように転換期となった戦国時代を生きた人々の物語を描くことで、視聴者に届くものがあるのでは…と考えました。閉塞した今の世の中にも「麒麟が現れてくれたら」と願う人がいるだろうと。「麒麟がくる」というタイトルには、そんな思いも込めています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

森山直太朗、「なぜ人間は歌を奏でるのか。人間の根源的なものに迫る旅になった」 ニュージーランドの先住民マオリとの出会いで得た“新たな気付き”【インタビュー】

ドラマ2024年3月16日

 「ドラマ 地球の歩き方」がテレビ大阪・BSテレ東で放送中だ。創刊45周年を迎えた“海外旅行のバイブル”「地球の歩き方」をドラマ化し、旅好き芸能人が世界各国へ記者として旅に出る姿を描く本作。三吉彩花の韓国編、森山未來のタイ編、松本まりかのサ … 続きを読む

「光る君へ」第十回「月夜の陰謀」まひろと道長が一つの結論を出した序盤のクライマックス【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年3月16日

 「一緒に遠くの国には行かない。でも私は、都であなたのことを見つめ続けます。片時も目を離さず、誰よりも愛しい道長さまが、政によってこの国を変えていく様を。死ぬまで見つめ続けます」  NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月10日に放 … 続きを読む

丸山隆平、赦すことは「人が成長する1つの方法」 三浦大輔の新作で“ろくでなし”の芸能記者役に【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月16日

 SUPER EIGHT(旧関ジャニ∞)の丸山隆平が主演する舞台、Bunkamura Production 2024「ハザカイキ」が3月31日から上演される。本作は、鋭い感性とリアルを追求した演出で、現代の若者の生態と人間の本質を描く、異才 … 続きを読む

アカデミー賞授賞式を象徴した『オッペンハイマー』キリアン・マーフィーのスピーチ【コラム】

映画2024年3月15日

 前評判の高かった『オッペンハイマー』が順当に作品賞をはじめとする7冠に輝いた今年の第96回アカデミー賞授賞式。その『オッペンハイマー』で“原爆の父”J・ロバート・オッペンハイマーを演じ、主演男優賞に輝いたキリアン・マーフィーは、受賞スピー … 続きを読む

【週末映画コラム】音と映像の迫力に圧倒されて疲れを覚えるほど『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』/劇場未公開の3作品を公開『私ときどきレッサーパンダ』ほか

映画2024年3月15日

『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』(3月15日公開)  その惑星を制する者が全宇宙を制するまでといわれる「砂の惑星デューン」で繰り広げられたアトレイデス家とハルコンネン家の戦い。ハルコンネン家の陰謀により、一族を滅ぼされたアトレイデ … 続きを読む

Willfriends

page top