「王道でありながら新しさもある令和の時代にふさわしい戦国大河ドラマをお見せしたい」長谷川博己(明智光秀)【「麒麟がくる」インタビュー】

2020年1月16日 / 10:00

 2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」が、いよいよ1月19日から放送開始となる。大河ドラマとしては3年ぶりに戦国時代を舞台にした本作の主人公は、「本能寺の変」で主君・織田信長を討った武将・明智光秀。謀反人と言われる一方で、それ以外は謎の多い波乱の生涯が、400年以上のときを経てよみがえる。演じるのは、『シン・ゴジラ』(16)、連続テレビ小説「まんぷく」(18~19)など、数々の話題作に出演してきた長谷川博己。放送を前に、1年にわたって主演を務める意気込みを語ってくれた。

明智光秀役の長谷川博己

-明智光秀役に決まったときのお気持ちは?

 面白い題材を選んだな、と興奮しました。明智光秀といえば、「信長を殺した反逆者」というイメージが定着していますが、中にはそうではないという説もあり、人によって見方は異なります。それをどう演じることになるのか、とても楽しみでした。

-演じる中で感じた明智光秀の魅力は?

 光秀というのは、もしかしたら今の時代に求められている新しいヒーローなのかもしれません。上司に対してものを言うべきときはズバッと言うし、決断するときは知性を持って決めていく。そういう、知性と品性で突き進んでいく人物です。「ヒーロー」と言うと違和感を覚える人もいるかもしれませんが、少なからずそういう部分があるような気がします。僕自身、今の時代にこんな人がいてくれたら…と思っています。

-役作りはどのように?

 いろいろな資料も読みましたが、基本的にそれは現場には持ち込まず、池端(俊策/脚本家)先生の脚本の中での光秀を演じたいと思っています。池端先生からは「本能寺の変を起こした明智光秀から逆算して考えないでほしい」と言われていますが、最初はどうしても逆算してしまうところがありました。でも、それだとやっぱり違和感が出てくる。だから、読んだ資料のことはいったん忘れて、無の状態で臨んだ方がしっくりくるな…と。池端先生から「光秀は僕自身」というお話も伺っているので、今は「麒麟がくる」という作品の中での光秀像を作りたいという気持ちで臨んでいます。

-池端俊策さんの脚本の印象は?

 読んでいると、ものすごく筆が踊っている印象を受けます。きっと池端先生も乗って書いていらっしゃるんだろうな…と。ただ、表現がとても繊細なので、演じるのは一筋縄ではいきません。白黒がはっきりとした感じではなく、どちらかというと淡い色合いで、行間の受け止め方によって表現が変わってくる。例えば、劇中で光秀はさまざまな選択を強いられますが、その際、「…」と黙っていることが多いんです。(斎藤)道三(本木雅弘)に無理難題を言われて「…」、帰蝶(川口春奈)に何か言われても「…」(笑)。そこを埋めるのが、なかなか難しい。それまでの光秀を考えると「こういう選択をするはず」と思っても、歴史的な事実を見ると、必ずしもそうなっていないんです。

-そこはどのように解決したのでしょうか。

 池端先生に聞いてみたら、「五分五分。どちらの可能性もある中で、その時々で瞬発的に決めている」とのこと。そう言われて、さらに難しくなったのですが(笑)。結局、その現場、現場で対応していく感じです。例えば、道三と対面する場面では、本木さんが演じている姿を見て、「ならば、僕はこういうふうに」とか「表現をこう変えよう」とやってみるような。おかげで最近は、その難しさが面白くなってきたところです。瞬発力が要求されますが、その分、僕自身が本当に光秀になっているような手応えがあります。

-光秀を語る上では織田信長の存在が不可欠ですが、この作品における2人の関係をどんなふうに捉えていますか。

 光秀と信長は共にナイーブなところがあり、よく似ているな…と。劇中には「俺は何者なのか分からない」「まだ何者でもない」という信長のせりふがありますが、池端先生に「光秀も同じですよね?」と聞いてみたら、「その通り」と。根本的なところで似ている2人だから、シンパシーを感じるものがあったのではないでしょうか。その2人の関係が、「本能寺の変」に向けてどんなふうに変わっていくのか、楽しみにしていただければと思います。

-染谷将太さん演じる信長の印象は?

 染谷さんが持つ独特のムードが、「何かあるな」と思わせる信長らしさとうまくマッチして、とても魅力的なキャラクターに仕上がっていると思います。その一方で、家族との関係においては、どこか孤独を感じさせるものがある。そういう意味では、今までの信長とは全く違う印象です。だから、一緒にお芝居をしていても、すごく面白い。まだ序盤なので、役の関係性を考えて現場では距離を取り、僕も染谷さんも「この人は一体、何者なのか?」と互いに探り合っているような状態です。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「光る君へ」第十六回「華の影」まひろと道長の再会から窺える物語展開の緻密さ【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年4月27日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月21日に放送された第十六回「華の影」では、藤原道隆(井浦新)率いる藤原一族の隆盛と都に疫病がまん延する様子、その中での主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の再会が描かれた。  この … 続きを読む

宮藤官九郎「人間らしく生きる、それだけでいいんじゃないか」 渡辺大知「ドラマに出てくる人たち、みんなを好きになってもらえたら」 ドラマ「季節のない街」【インタビュー】

ドラマ2024年4月26日

 宮藤官九郎が企画・監督・脚本を手掛けたドラマ「季節のない街」が、毎週金曜深夜24時42分からテレ東系で放送中だ。本作は、山本周五郎の同名小説をベースに、舞台となる“街”を12年前に起きた災害を経て建てられた仮設住宅のある“街”へと置き換え … 続きを読む

【週末映画コラム】全く予測がつかない展開を見せる『悪は存在しない』/“反面教師映画”『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

映画2024年4月26日

『悪は存在しない』(4月26日公開)  自然豊かな高原に位置する長野県水挽町は、東京からもそう遠くないため移住者が増加し、緩やかに発展している。代々その地に暮らす巧(大美賀均)は、娘の花(西川玲)と共に自然のサイクルに合わせたつつましい生活 … 続きを読む

志田音々「仮面ライダーギーツ」から『THE 仮面ライダー展』埼玉スペシャルアンバサダーに「埼玉県出身者として誇りに思います」【インタビュー】

イベント2024年4月25日

 埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」内「角川武蔵野ミュージアム」3Fの EJアニメミュージアムで、半世紀を超える「仮面ライダー」の魅力と歴史を紹介する展覧会『THE 仮面ライダー展』が開催中だ。その埼玉スペシャルアンバサダーを務めるの … 続きを読む

岩田剛典 花岡の謝罪は「すべてが集約された大事なシーン」初の朝ドラで主人公・寅子の同級生・花岡悟を熱演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年4月25日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。明律大学女子部を卒業した主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、同級生たちと共に法学部へ進学。男子学生と一緒に法律を学び始めた。そんな寅子の前に現れたのが、同級生の花岡悟だ。これから寅子と関わっていく … 続きを読む

Willfriends

page top