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いよいよ1月19日から放送開始となる大河ドラマ「麒麟がくる」。大河ドラマとしては3年ぶりに戦国時代が舞台となる本作では、「本能寺の変」を引き起こした明智光秀(長谷川博己)を中心に、織田信長(染谷将太)や斎藤道三(本木雅弘)といった武将たちが、群雄割拠の戦国絵巻を繰り広げる。脚本を手掛けるのは、「太平記」(91)以来、2度目の大河ドラマ登板となる池端俊策。多忙な執筆の合間を縫って、作品に込めた思いを語ってくれた。
最初にNHKから「戦国時代の前半をやりたい」とオファーがありました。僕は「太平記」で室町幕府を開いた足利尊氏を書いたので、以前から室町の終わり、最後の将軍・足利義昭を書きたいと思っていました。そこでまず、義昭と関係が深い織田信長の名前が上がりましたが、信長はこれまで何度も大河ドラマで取り上げられています。次に、「斎藤道三はどうか」と。「国盗り物語」(73)とは違う道三を描いてみるのも面白いと思いましたが、道三は早く亡くなってしまいます。そんなやり取りの後、NHKの方から「明智光秀もありますね」という話が出て、僕は飛びつきました。義昭と信長を結び付けたのは光秀という説があり、義昭を描く上では外せない存在ですから。
光秀は僕も書いてみたいと思っていたんです。子どもの頃、松本白鸚(初代)さんが演じた光秀を主役にした映画(『敵は本能寺にあり』(60))を見て、光秀にはいい印象があったし、僕は裏街道を行く人が大好き。今までそういう人をたくさん書いてきましたが、光秀といえば、戦国時代に裏道を歩いてきた人の代表格です。当時、最大の事件である「本能寺の変」を引き起こした張本人ということで、「これは面白い」と。
「頭脳明晰(めいせき)だが、陰気な上に繊細過ぎて信長とそりが合わずに冷遇され、最後は本能寺の変を起こした」。これが今までの明智光秀像だと思いますが、僕はそういうイメージを全て白紙に戻して書いています。従来の光秀像は、信長側の視点に立った「信長公記」に書かれたもの、もしくは家康寄りから見た江戸時代の資料が基本になっています。つまり、「光秀は逆賊だった」という発想からスタートしているわけです。でも、もっと客観的な光秀がいたのではないか。それはどんな顔をしていたのか、どんな人物だったのか。想像するしかありませんが、そういうところを描いていきたいと思っています。
光秀は41歳の頃、信長と義昭を結び付けるあたりで歴史に登場してきますが、それ以前の若い頃に関しては全く分かりません。研究者たちが書いたものはありますが、それもあくまで推測です。ドラマの作り手としては、そういう研究結果を踏まえた上で、41歳まで何をしていたかを考えるところから出発しました。誰も見たことのない人物なので、ある意味、自由です。ただし、周囲の状況はある程度はっきりしており、織田信長や斎藤道三についての資料は残っている。だから、彼らとの関係の中で光秀を描いていこうと。
美濃という土地で生まれ育った光秀が、何を思って生きてきたのか。それを書くには「自分が光秀だったら…?」と考えざるを得ません。逆に言えば、非常にせんえつですが、自分がどう感じるかを書けばいいんだと。道三を見てどう思ったか、信長と出会ってどんな衝撃を受けたか…。自分が感じるその受け止め方やリアクションから、光秀像を導き出していく。そういうやり方で書き進めているところです。
道三は従来、「油売りからのし上がって、一代で地位を築いた」と言われてきましたが、最近の研究では親子2代で…という話になっています。つまり、父親が築いたものを継いで完成させた優秀な2代目です。そうすると、己の野心をかなえようとするだけでなく、守りの部分もあったのではないかと。狡猾(こうかつ)な一方で、多少は人の気持ちを読むことができ、身内に対する愛情もある。息子を後継者に育てたいと願いながらも、思うようにいかない親としての悩みもあり…と。中でも僕が面白いと思ったのは、他人に分け与えることを嫌がるケチな一面があることです(笑)。そんなふうに、野心一筋の人ではないという形で描いています。
信長は「異端児」と言われていますが、それは違うのではないかと思い、自分なりに人物像を考えてみました。信長に関しては、弟の信勝と権力を争い、敗れた信勝を殺そうとした際、母親が命乞いをしたという記録が残っています。信長が嫡男であるにも関わらず、母親は信勝をかばった。それはどういうことなのか。そこを考えてみたとき、母親に愛されなかった男の姿が浮かび上がってきました。母親に対するコンプレックスの裏返しから、異端児のように振る舞う…。つまり、不良少年ですね。だとすると、非常に繊細な人だろうと。だから、今までのような剛直で独裁者風なイメージとは、少し違うのかなと。
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