31歳で“朝ドラヒロイン”挑戦の理由…「女優としてのキャリアがどうなるか知りたかった」戸田恵梨香(川原喜美子)【「スカーレット」インタビュー】

2019年9月30日 / 08:20

 戦後の滋賀・信楽を舞台に、男ばかりの陶芸の世界に飛び込み、やがて自らの窯を開き、独自の信楽焼を見いだしていく陶芸家・川原喜美子の波瀾(はらん)万丈の人生を描く「スカーレット」で主演を務める戸田恵梨香。31歳を迎えた今、戸田が“朝ドラヒロイン”に臨む理由とは? その心中を聞いた。

川原喜美子役の戸田恵梨香

-もともとは「若手・新人女優の登竜門」と言われていましたが、近年は、すでに人気や実力を備えている女優を起用する傾向にある“朝ドラ”。現在31歳で経験のある戸田さんが、本作のヒロインに挑戦しようと思った理由は何でしょうか。

 女優としてのキャリアがどうなるか知りたかったからです。11カ月を通して同じ人物を演じることはほかのドラマではほとんどないので、この経験を経て、自分がどう変化し、進化するのか確かめたいと思いました。今までの私は、場数を踏むことで役者としての実力や精神性が成長すると考えていましたが、“朝ドラ”に挑戦することで視野や世界観が広がり、大きく成長できると感じたので、やるしかないと決意しました。

-実際に挑戦している今の心境は?

 最初は“朝ドラ”が自分には合わない可能性があるとも思いましたが、今のところそれはなく、喜美子と一緒に成長していると実感しています。いろいろな踏ん切りもついて、壁のない広い精神を持った人間になれるような気がしています。

-クランクインから5カ月がたち、撮影も折り返し地点を過ぎましたが、現場の様子はいかがですか。

 共演者が多く、それぞれが流派の違うお芝居をされているので、それを見ているのは楽しいです。たくさんの愛情も頂いて、ほかのドラマの現場では味わえないぜいたくで充実した時間を過ごしています。だから5カ月はあっという間でした。「朝ドラはキャスト・スタッフ共に家族みたいになる」と言われている意味も分かりました。せりふ量が膨大で追い詰められる瞬間もありますが、みんなが支え合い、笑顔でいてくれるので頑張れます。

-幼い頃から川原家を支える働き者で、後に女性陶芸家の草分けとして歩み始める喜美子ですが、どのようなところに魅力を感じますか。

 深い愛情で周りに幸せを与えられるところや、いつも元気でニコニコしている姿、仕事や人に対して絶対に妥協しない懸命な姿が魅力的です。私も見習いたいです。撮影中、キャストだけではなく、スタッフみんなが笑顔になる瞬間がたくさんあるので、喜美子が人々を明るくて照らす存在になれると感じています。

-演じる上で、どのような準備をしましたか。

 15歳からのスタートだったので、体に丸みをつけるため、病院で体質や自分に合う体重の増やし方を調べてもらい、食生活を一気に変え、おなかがムカムカするぐらい食べました。お米は1食で1合半ぐらい食べることもありました。今後は陶芸家らしい筋肉質な体にしていこうと考えています。陶芸の稽古は約3カ月ほど行って、茶碗や花瓶、平皿など20点ほど作りました。あとは髪を伸ばしたり、前髪を切ったりしました。

-陶芸の撮影は吹き替えなしで行っているそうですね。

 女性陶芸家が少なくて、私に似た手が見つからないから『ご自身で作陶をやっていただけませんか』と言われたんです。吹き替えがあるとは思っていなかったけど、フォローぐらいはしてもらえるかなぁと淡い期待を抱いていたので度肝を抜かれました(笑)。絵付けに関しては、毎回本番前に「こんなふうにやってください」と言われてササッと練習するくらいなので、割と汗をかきます…。演出の中島さんから「あなたならいける!」と言われますが、その自信はどこから来るんですかね?(笑)でも、皆さんに見ていただけるぐらいにはなりました。

-陶芸や陶芸家に対してはどのような印象を持たれましたか。

 女性陶芸家は男性に比べて少ないと聞いたときに、なぜだろうと疑問でした。でも実際にやってみると、土を練るにも力が要るので、男性の方が有利な体力仕事だと実感しました。だから、喜美子が陶芸の道を選んだ勇気や決断力には驚きます。それから、土の練り方、指の入れ方、そのときの体調や環境、釉薬の配合などで作品の表情が変わって、同じものは二度と作れないので、奥深さを感じました。陶芸を趣味にしたらやめられないでしょうね。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

【映画コラム】実話を基に映画化した2作『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』『栄光のバックホーム』

映画2025年11月29日

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(12月5日公開)  太平洋戦争末期の昭和19年。21歳の日本兵・田丸均(声:板垣李光人)は、南国の美しい島・パラオのペリリュー島にいた。漫画家志望の田丸はその才能を買われ、亡くなった仲間の最期の雄姿を遺族 … 続きを読む

Willfriends

page top