エンターテインメント・ウェブマガジン
12月6日から、東京・新橋演舞場で新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」が上演される。宮崎駿作の伝説の漫画が歌舞伎舞台化されるとあって、大きな話題となっている。本作で、主人公ナウシカ役を演じる尾上菊之助に話を聞いた。
クールジャパンを代表するアニメーションの中でも、またジブリ関連作品の中でも『風の谷のナウシカ』は日本を代表する作品ですので、日本の古典芸能である歌舞伎との融合に携われることとなり、本当に興奮しました。また、ジブリの世界観をジブリファンの一人として大事にしないといけない、という責任感も同時に感じています。
宮崎監督は「『風の谷のナウシカ』というタイトルだけ変えなければ後はご自由にやっていただいて構いません」とおっしゃっていたと伺い、逆にプレッシャーを感じています(笑)。この作品が持つイメージを大事にしなければならない、という思いがさらに強くなりました。
私が初めて本作を見たのはTVでのアニメ映画の再放送のときでしたでしょうか。アニメでは原作のうち1~2巻の内容でしたが、しばらくしてから宮崎監督はその後7巻まで描き続けていたと知り、そこで全巻を読んでみましたら、アニメでは描かれていないもっと深く複雑な世界観が描かれており、その難しさに強く心引かれました。
この作品は文明が滅んで1000年後から現代を照らす物語であり、エネルギー資源問題、環境問題、核の問題や、遺伝子操作の問題などが織り込まれています。宮崎監督がこの作品を描かれた1980年代は、日本が経済的にどんどん成長をして浮き足立っている「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という時代でした。監督は「ナウシカ」を描きながら「このままでいいのか?」と思っていらしたそうです。その後バブルがはじけて、ある意味、宮崎監督が描いた世界に現実が追い付いてしまったように思います。
これはナウシカの成長物語だと思います。腐海の謎解きから始まり、やがて戦いに直面し、最後は地球という星と人間との関わりを考えるところまで成長していきます。これを、あくまでも歌舞伎の古典の手法を使って上演します。衣裳は「ナウシカだ」「クシャナだ」と、お客さまに分かるよう、原作に寄り添っていこうと思っています。歌舞伎にもキツネやイノシシなど多くの動物が登場しますので、その延長線上の表現技法で王蟲(オーム)や巨神兵も考えています。ただかなり大きなものになると思うので、はたして劇場に入るのかどうか(笑)。
これまで自分は蜷川幸雄さんとシェークスピアの「十二夜」、そしてインドの「マハーバーラタ」と、海外の作品を日本の歌舞伎と融合してきました。今までは「日本×海外」でしたが、今回は「日本×日本」の融合で海外の方にアピールしたいと思っています。2020年の東京オリンピックもあり、海外の方も日本に興味を持ち、来日されるいい機会だと思います。
インタビュー2025年11月17日
韓国文化の“今”を再構築し続けるKカルチャー。今回は、デジタル空間で物語を紡ぐウェブトゥーンの世界に焦点を当てる。平凡な会社員ユミの頭の中で繰り広げられる細胞の物語――。2015年に連載を開始した「ユミの細胞たち」は、全512話で32億ビ … 続きを読む
映画2025年11月14日
日本海沿岸の小さな漁師町を舞台に、元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太という、年の離れた孤独な2人の絆を描くヒューマンドラマ『港のひかり』が、11月14日から全国公開中だ。 主演に舘ひろしを迎え、『正体』(24)の俊英・藤井道人 … 続きを読む
2025年11月14日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈 銭湯の湯け … 続きを読む
映画2025年11月13日
40人の武装強盗団が、ニューデリー行きの特急寝台列車を襲撃! 刀を手に乗客から金品を奪う強盗団のリーダー、ファニ(ラガヴ・ジュヤル)は、大富豪タークルとその娘トゥリカ(ターニャ・マニクタラ)を人質に取り、身代金奪取をもくろむ。だがその列車 … 続きを読む
映画2025年11月11日
何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む