「西郷さんと月照は、夫婦のような関係だったのかもしれません」尾上菊之助(月照)【「西郷どん」インタビュー】

2018年5月8日 / 14:21

 大老・井伊直弼(佐野史郎)による安政の大獄が始まり、追われる身となった月照(尾上菊之助)を守って薩摩に逃れた西郷吉之助(鈴木亮平)だが、藩から月照を斬るよう命じられる。追い詰められた西郷は覚悟を決め、月照と共に海中に身を投げる…。今後の波乱を予感させる西郷と月照の入水。西郷をそこまでの行動に走らせた月照とは、果たしてどんな人物だったのか。演じた尾上菊之助が、役作りを通して学んだその実像、役に込めた思いなどを語ってくれた。

月照役の尾上菊之助

-月照とはどんな人物だったのでしょうか。

 紫の衣を好み、政治的な活動にも関わり、公家と天皇家との間をつなぐパイプ役を果たしていたそうです。ドラマの登場シーンではふわっと風が吹き、西郷さんたちの前に姿を見せる途中でカタツムリを見つけて、思わず歌を詠じてしまう…。そんなみやびな面も持った人物として描かれています。京都のお寺で長く修業を積むうちに生きとし生けるもの、生命に対する思いが高まり、カタツムリのような小さな命にも尊さを感じるようになったと、あの場面から私は想像してます。人の命を尊び、国を憂う気持ちが西郷さんと同じ方向を向いていったのではないでしょうか。

-第17回で月照は西郷と一緒に入水自殺を図るわけですが、演じた感想は?

 亡き斉彬(渡辺謙)の思いを遂げるためには、また月照の力が必要になるかもしれないと考えて、西郷さんは京都から一緒に逃げてきた。でも結局、追い詰められて一緒に飛び込む…。それは、2人の気持ちが同じ方向を向いていなければ絶対にできないことです。だから、お互いに心が通じ合い、信頼関係があったと想像して、気持ちで演じました。そのとき、「いくら修業を積んだ身でも、未練は残る」というせりふがありましたが、そこには徳の高い月照が今まで抑えてきた生身の人間性が出ていたと思います。

-その前には、斉彬の後を追って殉死しようとする西郷を止める一幕(第16回)もありました。

 斉彬が亡くなり、その遺志を果たすすべも万策尽きて、西郷さんは目標を見失っている。でも月照は、斉彬が西郷さんに思いを託していたことも十分知っていた。だから、「あなたは生きて、お殿様の遺志を継ぎなさい」と説得した。それは、月照がそれまでの西郷さんを見て、人となりが信用できると思ったからこその行動だったのでしょう。そうでなかったら止めなかったに違いありません。

-それほど強い信頼で結ばれた月照と西郷の関係とは、どんなものだったのでしょうか。

 私の想像ですが、心が同じ方向を向くという意味では、もしかしたら夫婦のような関係だったのかもしれません。出会った後、国を思う気持ちが、お互いの命を預けるまでの強固な関係を築き上げていった。ドラマで描かれた時間は短いけれど、そうやってお互いの心が蓄積されたからこそ、入水という行動に至ったに違いありません。本当は月照も、西郷さんと一緒に国を何とかしたかったはずです。でも、思いを遂げることはできなかった。本当に無念だったことでしょう。

-これまで西郷隆盛にどんなイメージを抱いていましたか。

 存在感の大きさに加えて、心も広く、何でも受けとめる方だったのかと。鈴木亮平さん演じる若い頃の西郷さんを見ていると、体当たりでこの国を何とかしようとする熱い姿が、明治維新を経ての晩年、どのような人物になっていくのか、これからがとても楽しみです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

田中麗奈「こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います」『星と月は天の穴』【インタビュー】

映画2025年12月24日

 脚本家としても著名な荒井晴彦監督が、『花腐し』(23)に続いて綾野剛を主演に迎え、作家・吉行淳之介の同名小説を映画化した『星と月は天の穴』が12月19日から全国公開された。過去の恋愛経験から女性を愛することを恐れながらも愛されたい願望をこ … 続きを読む

天海祐希、田中哲司、小日向文世、でんでん、塚地武雅「12年の集大成を見届けてください!」大ヒットシリーズ、ついに完結! 劇場版「緊急取調室 THE FINAL」【インタビュー】

映画2025年12月23日

 2014年1月にスタートしたテレビ朝日系列の大ヒットドラマ「緊急取調室」。たたき上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った特別取調室で取り調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班(通称:キントリ)」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一 … 続きを読む

【映画コラム】時空を超えた愛の行方は『楓』『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』『星と月は天の穴』

映画2025年12月20日

『楓』(12月19日公開)  須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・ … 続きを読む

北香那「ラーメンを7杯くらい食べたことも」天野はな「香那ちゃんのバレエシーンは見どころ」 「ラーメン」と「クラシック・バレエ」が題材のコメディーで共演 NHK夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」完成会見

ドラマ2025年12月19日

 12月19日、東京都内のNHKで、1月5日からスタートする夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」の完成会見が行われ、主人公・千本佳里奈(ちもと かりな)役の北香那、佳里奈の親友・二木優美(ふたぎ ゆみ)役の天野はながドラマの見どころを語ってくれた。 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(9)浅間神社で語る「厄よけの桃」

舞台・ミュージカル2025年12月18日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  前回は、玉田家再興にあたり「三つ … 続きを読む

Willfriends

page top