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大老・井伊直弼(佐野史郎)による安政の大獄が始まり、追われる身となった月照(尾上菊之助)を守って薩摩に逃れた西郷吉之助(鈴木亮平)だが、藩から月照を斬るよう命じられる。追い詰められた西郷は覚悟を決め、月照と共に海中に身を投げる…。今後の波乱を予感させる西郷と月照の入水。西郷をそこまでの行動に走らせた月照とは、果たしてどんな人物だったのか。演じた尾上菊之助が、役作りを通して学んだその実像、役に込めた思いなどを語ってくれた。
紫の衣を好み、政治的な活動にも関わり、公家と天皇家との間をつなぐパイプ役を果たしていたそうです。ドラマの登場シーンではふわっと風が吹き、西郷さんたちの前に姿を見せる途中でカタツムリを見つけて、思わず歌を詠じてしまう…。そんなみやびな面も持った人物として描かれています。京都のお寺で長く修業を積むうちに生きとし生けるもの、生命に対する思いが高まり、カタツムリのような小さな命にも尊さを感じるようになったと、あの場面から私は想像してます。人の命を尊び、国を憂う気持ちが西郷さんと同じ方向を向いていったのではないでしょうか。
亡き斉彬(渡辺謙)の思いを遂げるためには、また月照の力が必要になるかもしれないと考えて、西郷さんは京都から一緒に逃げてきた。でも結局、追い詰められて一緒に飛び込む…。それは、2人の気持ちが同じ方向を向いていなければ絶対にできないことです。だから、お互いに心が通じ合い、信頼関係があったと想像して、気持ちで演じました。そのとき、「いくら修業を積んだ身でも、未練は残る」というせりふがありましたが、そこには徳の高い月照が今まで抑えてきた生身の人間性が出ていたと思います。
斉彬が亡くなり、その遺志を果たすすべも万策尽きて、西郷さんは目標を見失っている。でも月照は、斉彬が西郷さんに思いを託していたことも十分知っていた。だから、「あなたは生きて、お殿様の遺志を継ぎなさい」と説得した。それは、月照がそれまでの西郷さんを見て、人となりが信用できると思ったからこその行動だったのでしょう。そうでなかったら止めなかったに違いありません。
私の想像ですが、心が同じ方向を向くという意味では、もしかしたら夫婦のような関係だったのかもしれません。出会った後、国を思う気持ちが、お互いの命を預けるまでの強固な関係を築き上げていった。ドラマで描かれた時間は短いけれど、そうやってお互いの心が蓄積されたからこそ、入水という行動に至ったに違いありません。本当は月照も、西郷さんと一緒に国を何とかしたかったはずです。でも、思いを遂げることはできなかった。本当に無念だったことでしょう。
存在感の大きさに加えて、心も広く、何でも受けとめる方だったのかと。鈴木亮平さん演じる若い頃の西郷さんを見ていると、体当たりでこの国を何とかしようとする熱い姿が、明治維新を経ての晩年、どのような人物になっていくのか、これからがとても楽しみです。
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