【インタビュー】ドラマ「トップリーグ」玉山鉄二 新時代の俳優に必要なものは「企画力」

2019年10月3日 / 15:59

 総理大臣や官房長官、与党幹部に食い込んだ「トップリーグ」と呼ばれる記者を主人公に、メディアと権力の裏側を描いた衝撃的政治サスペンス「連続ドラマW トップリーグ」。主演の玉山鉄二が、本作を通して改めて考えさせられたという“情報”との向き合い方や、エッジの効いた作品を制作するWOWOW同様、これからの時代、役者にも必要とされる“企画力”について語ってくれた。

ヘアメイク:TAKE▲for▲DADACuBic@3rd/スタイリスト:袴田能生(juice)

 原作は、食肉偽装問題を扱った「震える牛」、巨大企業の不適切会計問題を描いた「不発弾」など、社会の闇をえぐりだす作風で注目される相場英雄の同名小説。首相官邸を舞台に、大和新聞のトップリーグ・松岡直樹(玉山)と週刊誌のエース記者・酒井祐治(池内博之)が、日本史上最大の疑獄事件の謎に迫るとともに、官邸のタブーに鋭くメスを入れるさまが描かれる。

 「政治家と記者の癒着が描かれていて、一人の記者が一人の議員によって政治の世界に飲み込まれて自分を見失う物語」と捉えた玉山は、「新聞記者と議員という関係はニュース性やドラマ性が高くて大きな出来事に感じられますが、小さな癒着はどこの世界にでもあるから、作品としてのハードルは意外と低くて見やすいんじゃないかな」とアピール。

 普段から、政治家や政治部の記者と交流し、「気さくに政治や国会での話、理想論などを話してくれて有意義な時間を過ごしています」と語るが、その玉山でも「トップリーグ」の存在を知らなかったそうで、「政治ジャーナリストや記者が、ニュース番組などで『トップリーグと呼ばれる記者が、議員から直接情報をもらうことがある』という話をしているのを聞いたことがないですよね。なぜだろう?それってパンドラの箱なのかな」と首をかしげると、「僕たちが知っている政治の“情報”が出来上がるまでに、いろんなプロセスがあるのかもしれないですよね」と勘繰った。

 また、「日本は特にテレビの影響力は大きいですよね。世界中探しても、テレビ局と新聞社が同じ母体というのは日本だけ。そう考えるとちょっとゾッとしませんか?」と現メディア体制に危惧を覚えていることも打ち明けた。

 だからこそ、「政治ニュースに限らず、情報に対して疑ったり、斜めに見たりして、自分の中でイマジネーションを広げることが、これからの時代には必要なのかも」と考えをめぐらすと、「今までは不適格で不鮮明な情報でも『出しちゃえ!』となっていたかもしれないけど、SNSが普及した今は、その情報が間違っていたり、うそだったりしたときに炎上したり、取り返しのつかない事態になるから、情報を出す方も受ける方も変わっていかなければいけないですね」と慎重な姿勢も見せる。父親でもある玉山は、子どもにも「メディアやSNSから、たまたま情報を得るのではなく、自分からつかみにいくことの大事さ」を教えているのだとか。

 このように見る者の心と思考を刺激する作品を生み出すWOWOW。玉山は「ストーリーは重厚で社会的メッセージ性が強くて、こういうことが本当にあるんじゃないか? と思わせるリアリティーさに引き込まれます」と舌を巻くと、「コンテンツで一番大事な“企画力”が素晴らしい点がWOWOWの一番の魅力だと思います」と称賛する。

 多様性が求められる昨今、既存のコンテンツでは実現できなかったことが、オンデマンドなどでは可能になるなど、エンタメ業界も大きく変化しているが、玉山は「『できない』ではなく、『やらない』ですよね。だから、『やれる』環境を作っていく必要があると思います」と、まずは意識改革が重要であることを指摘。

 さらに、「役者仲間とも、オンデマンドで作った奇抜な作品の評判がいいと、それを地上波でもやれるといいよね…とよく話しています。日本のエンタメ業界を活性化させるためにも、奇抜なことが高く評価されたり、今まで『駄目』と言われていたことに共感性が生まれたりすることで、今の風潮が変わるといいですね」と変化を望んだ。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

 元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

Willfriends

page top